相場展望6月22日 米国: 米国株は「息切れか?」 日本: 日本株買い主力筋に変化、証券自己が売り転換
■I.米国株式市場
●1.NYダウの推移
1)6/19、祝日「奴隷解放記念日」で休場【前回は】相場展望6月19日 米国: FRBの今後の利上げは「2回ではなく⇒8回」を予想 日本: 株高が招く「年金基金・機関投資家の資産配分見直し」で6月最終週〜7月初旬に売り圧力か?
2)6/20、NYダウ▲245ドル安、34,053ドル(日経新聞より抜粋) ・6/20の米株式市場でNYダウは続落、週内に米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が上下両院で議会証言に臨むのを控え、金融引締めの長期化に対する警戒感が意識された。 ・中国景気の先行き不安を背景に関連銘柄への売りが目立ち、NYダウの下げ幅は一時▲380ドルに達した。 ・パウエルFRB議長は6/21に下院で、6/22は上院で証言する。政策金利を据え置いた前週の米連邦公開市場委員会(FOMC)後で初めての公の場で発言する機会となる。FOMCでは政策金利見通しが年内2回の利上げを見込む水準に引上げられた。パウエル議長が金融引締めに積極的なタカ派的な姿勢を示すとの懸念があり、売りが優勢となった。 ・6/20には中国人民銀行(中央銀行)が政策金利の引下げを決めた。中国の景況感が落ち込む中で、利下げが想定されていたものの、小幅な利下げにとどまった。景気下支えには物足りないとの見方で、米株相場を押し下げた。 ・半導体のインテル、スポーツ用品のナイキ、航空機のボーイング、工業製品・事務用品のスリーエムといった消費関連・景気敏感株への売りも目立った。ネット検索のアルファベットも下げた。半面、医療保険のユナイテッドヘルス、製薬のメルクなどディフェンシブ株の一角が買われた。電気自動車のテスラが大幅に上昇し、相場を支えた。
3)6/21、NYダウ▲102ドル安、33,951ドル(日経新聞より抜粋) ・米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長の議会証言を受け、利上げ継続観測が改めて広がった。NYダウは3日続落した。高PER(株価収益率)のハイテク株を中心に売りが優勢となった。 ・パウエル議長は6/21の米下院金融サービス委員会で、米国の物価上昇率は「目標の2%にはまだかなり遠く、2%に戻すために注力している」と述べた。年内には+0.25%の利上げ2回を示唆した米連邦公開市場委員会(FOMC)参加者の金融政策見通しは「かなり良い予想だ」と話し、追加利上げが適切になるとの見方を示した。市場では「前週FOMC後の記者会見よりタカ派的だった」との意見が聞かれた。 ・これまで米株式相場の上昇を牽引してきた主力ハイテク株には目先の利益を確定する売りが出やすかった。顧客情報管理のセールスフォースが▲3%下げ、ソフトウェアのマイクロソフトやスマホのアップルも安かった。金融のゴールドマンサックスや映画・娯楽のディズニーなど景気敏感株や消費関連株の一角も売られた。ディフェンシブ株には資金が流入し、医療保険のユナイテッドヘルスや日用品のP&G、製薬のメルクが高い。米原油先物価格の上昇を受け、石油のシェブロンも買われた。
●2.米国株:米国株は息切れか?
1)米国株は息切れも ・要因 ・企業の売上・利益の上方修正が少ない。 ・高金利の長期化のもと、米国のリセッション(景気後退)が迫りつつある。 ・投資家が慎重な姿勢を示す。 ・NYダウのチャートからも、さらなる上昇の「ためらい」をうかがわせる。 ・FRBの政策金利引上げは「2023年内で2回」とされ、最終的には+0.25%換算で8回の引上げ、つまり政策金利はさらに+2.00%引上げられ、最終的に7%程度になると予想している。 ・したがって、米国のリセッションは避けられず、その深さに注目している。 ・現在のNYダウは歴史的にみても高水準であり、銘柄の流れが「成長株⇒ディフェンシブ株・割安株」にシフトする動きも見受けられるため、大きな転換点が近い可能性があると思われる。●3.パウエルFRB議長の議会証言(フィスコ)
1)タカ派姿勢を維持、追加引締めの必要性を再表明。2)インフレを2%に戻すには「長い道のり」。
3)FRBは銀行の脆弱性に対処することを公約。
●4.5月米住宅着工は163.1万戸(年率換算)、前月比+21.7%増、7年ぶり伸び率(日経新聞)
1)背景には、(1)足元の中国景気減速にとどまらず、(2)中国の中長期的な成長鈍化懸念がある。2)市場予想139万戸を大きく上回った。前年同月比は+5.7%増。
●5.ブラックロックのフィンクCEO、海外勢「中国から日本株にシフト」(日経新聞)
●6.欧州株は6/19、6月に入り最大の下げを記録した(ブルームバーグ)
1)広く期待されていた中国の景気刺激策が発表されず、世界的なリセッション(景気後退)が発生し得るとの懸念が強まった。●7.インフレは「貪欲な獣」、断固とした長期な戦いが必要=独連銀総裁(ロイター)
■II.中国株式市場
●1.上海総合指数の推移
1)6/19、上海総合▲17安、3,255(亜州リサーチより抜粋) ・中国の国内景気の先行き不安がくすぶり、不動産と金融が売られ3日ぶりに反落。 ・5月の経済指標が総じて弱い内容となる中、証券ブローカー各社が中国の2023年経済見通しを揃って引下げた。売り圧力も意識された。上海総合指数は先週、5/22以来、約1か月ぶりの高値水準を切り上げていた。 ・他方、中国国務院は6/16の常務会議で、経済の持続的な回復に向け、より有効な措置を講じる方針を確認した。 ・経済対策に対する期待感は高まるものの、具体的な内容を見極めたいとするムードが広がった。 ・業種別では、不動産の下げが目立ち、金融も冴えず、素材・エネルギーも下落。半面、ハイテクは急伸、公益・自動車・軍事関連が買われた。2)6/20、上海総合▲15安、3,240(亜州リサーチより抜粋) ・投資家の慎重スタンスが強まる流れとなった。 ・中国景気の先行き不安、人民元安の再進行などを不安視した。 ・中国人民銀行(中央銀行)は6/20朝方、人民元レートの対米ドル基準値を4日ぶりに元安設定した。上海外国市場では人民元安・米ドル高が急速に進み、昨年11月以来の水準で推移した。 ・資金流出も警戒された。 ・金融緩和期待もやや後退した。中国人民銀行は朝方、中国の最優遇貸出金利について、5年物を4.30⇒4.20%、1年物を3.65⇒3.55%に引下げると発表したが、市場では不動産ローンなど中長期融資の基準となる5年物が4.15%まで低下するとの観測が流れていた。 ・もっとも下値は限定的。「中国当局は景気刺激策の拡大に舵を切った」との見方は根強く、財政政策などに対する期待は依然続いている。 ・業種別では、不動産の下げが目立ち、保険・銀行が冴えない、素材などが下落。半面、軍事関連が物色され、自動車・ソフトウェアが買われた。
3)6/21、上海総合▲42安、3,197(亜州リサーチより抜粋) ・前日までの軟調な地合いを継ぐ流れとなった。 ・中国景気の先行き不安が改めて意識された。中国人民銀行(中央銀行)は6/20、実質的な政策金利となる「ローンプライムレート(LPR)」を引下げたが、市場から「景気を押し上げるには物足りない」との声が聞かれた。 ・証券ブローカー各社が中国の経済成長見通しを相次いで引下げていることもあり、景気の持ち直しには時間がかかるとの不安が広がっている。 ・人民元安の進行も懸念材料。足元の外国為替市場で、人民元の対米ドル相場が軟調に推移し、6/21はオフショア相場で一時1ドル=7.2人民元台に乗せた。これは昨年11/29以来、7か月ぶりの元安水準。 ・中国からの資金流出が警戒されている。 ・本土市場が端午節の祝日で、明日6/22〜23は休場となることも買い手控え要因となった。 ・業種別では、メディア・エンターテイメント関連の下げが目立つ。電子・情報も冴えず、電子部品も安く、造船・ホテル観光・医療器械・家具なども売られた。半面、電力関連が物色された。
2.中国5月の精製燃料が国内需要低迷で、輸出が急増 (ロイター) 1)ガソリンは前年比67%増の136万トン。精製燃料の輸出総計は前年比49.8%増の 488万トン。
■III.日本株式市場
●1.日経平均の推移
1)6/19、日経平均▲335円安、33,370円(日経新聞より抜粋) ・午後に入り、株式指数先物にまとまった売り注文が出たことをきっかけに下げ幅は一時▲400円を超えた。高値警戒感や外国為替市場で円安・ドル高が一服したことが重荷となった。 ・前週末の6/16米株式市場で主要株価指数が揃って下落した。日経平均は33年ぶりの高値圏で推移しているとあって、利益確定などの売りが出やすかった。今日は米国の全市場が休場とあって、市場では「先週まで積極的に買っていた海外投資家の参加が少なく、高値警戒感による国内勢の売りが優勢になる構図だった」との見方が出ていた。 ・日銀は6/16まで開いた金融政策決定会合で大規模緩和の維持を決めたことを受け朝方は海外短期筋による先物買いが先行した。日本株の根強い先高観から下値での押し目買い意欲も根強く、午前の日経平均は6/16に付けた年初来高値を上回って推移する場面もあった。 ・日経平均への寄与度が高いファストリ、半導体の東エレク・アドテスト、トヨタ・ソニーが安い。一方、三菱商・三菱UFJ・ニデックが買われた。2)6/20、日経平均+18円高、33,388円(日経新聞より抜粋) ・米著名投資家バフェット氏による買増しが明らかとなった5大商社株が軒並み上昇し、相場を押し上げた。日本株の先高観は根強く、4月からの上昇局面で買い遅れた投資家の押し目買いも入った。取引終了にかけて買いの勢いが強まり、日経平均は上昇して終えた。 ・5大商社株は朝方から買い優勢で、三菱商・三井物・住友商・伊藤忠・丸紅は揃って上場来高値を更新した。バフェット氏が率いる投資会社バークシャー・ハザウェイの子会社、ナショナルインデムニティが5大商社の株式を買増し、平均8.5%以上保有したことが、6/19の取引終了後に明らかとなった。 ・アドテストなどの半導体、ソフトバンクG・ファストリなど主力の値嵩株の上昇も目立ち、日経平均は+100円高まで買われる場面があった。 ・日経平均はマイナス圏で推移する時間帯が長かった。前日の欧州株安や米株価指数先物の下落が重荷となり、売りが出た。午前に中国人民銀行(中央銀行)は事実上の政策金利を10カ月ぶりに引下げた。引下げ発表直後は機械的な買いが入ったものの、買い一巡後は「利下げをしなければいけないほど中国景気は悪いのではないか」との受け止めがあり、中国の景気懸念から鉄鋼や機械株に売りが膨らみ、日経平均は一時▲280円超下落した。 ・東京海上など保険株、KDDI・リクルートが売られた。半面、ソフトバンクGは連日で年初来高値を更新、中外薬・キッコーマンも高い。 3)6/21、日経平均+186円高、33,575円(日経新聞より抜粋) ・日銀の金融緩和姿勢やバフェット氏の総合商社株への投資などの好材料を背景に海外投資家とみられる日本株への買いが続いた。日経平均は朝方、前日の米株安に連れて▲200円超下げる場面もあったが、上昇して終えた。 ・業種別では、空運株や鉄道株の上昇が目立った。ANAとJALは揃って年初来高値を更新した。新型コロナ禍から国内景気の本格的な回復とインバウンド(訪日外国人)需要の戻りが期待されている。Jフロントなど百貨店株の上げ幅も大きかった。 ・前日の米株式市場では主要3指数がいずれも下落し、売り優勢だった。今日はアジアの主要株価指数も下げが目立ったが、日本株は固有の好材料を支えに堅調さを保った。生成型の人工知能(AI)の活用期待もあり、ソフトバンクG・東エレクなどの半導体関連株も上昇。日経平均の上げ幅は+270円に迫る場面もあった。 ・今夜はパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の議会証言が予定されている。米金融政策の先行き不透明感は強く、内容を見極めたいとの見方もある。日経平均は大引けにかけて上げ幅をやや縮小して終えた。 ・サイバー・神戸鋼・第一生命が上昇、リコー・ソニー・リクルートが下落。
●2.日本株:
買い主力筋が減少し、海外投資家の現物株買い勢力の一手買いになる 今まで買い筋の「国内証券自己部門」は売り転換し、買いから脱す1)日本株の買い主力筋に変化 ・外国人の年初来の買残高は、6月第1週(〜6/9)で+7兆8,949億円と膨大。アベノミクス以来の外国人の買い残高の大きさ。 ・外国人の株式先物の買いは軟調、外国人の現物株買いの勢い次第の展開は変わらず。 ・加えて、今まで外国人とともに買い上がってきた「証券会社の自己部門」は6月1週(6/5〜9)に売り転換した。証券会社の年初来買い残高は、5月5週末で+2兆6,592億円。それが、6月1週に▲3,544億円の売りに転換。 ・国内企業による自己株式買いは株主総会を来週に控え、今週で買い一巡。
2)売り増加要因 ・6/26の週〜7月上旬は、運用資産配分見直しで売られる。 ・外国人投資家も6月末が中間評価と中間配当金支払いのため、今後の利益確定売りが出やすい。
3)相場の流れに変化? ・6/19は日経平均が大幅安の中で、中小型株が急伸。 ⇒ 循環物色が濃くなり、材料探しで徘徊 ⇒ いよいよ相場の終盤か ・1株当たり利益は1,650円と横ばいで推移する中、PER上昇で日経平均は上昇。 PER(株価収益率)は6/16に20.42倍、6/21に20.34倍と急伸し、高値圏。 ・NYダウと日経平均の乖離は、縮小 6/16 NYダウ 34,299 日経平均 23,706 差593 6/21 33,951 33,576 376 NYダウと日経平均の差は「6,000〜4,000」が通常だったが、今回は「6/21に 376」まで接近したことに注目した。果たして、そこまで日本株の魅力は高まっているのだろうか。
4)日経平均は、まだまだ力強さが残っている。 ・新高値銘柄数が依然として多く、新安値数が少ない 6/16 6/19 6/20 6/21 新高値銘柄数 217 306 142 270 新安値銘柄数 16 12 10 6 日経平均 +220円高 ▲335円安 +18円高 +186円高
5)相場の流れに注目 ・PER(株価収益率)の上昇で日経平均は支えられている。 NYダウ 6/16 22.84倍 日経平均 6/21 20.34倍 ・日経平均上昇は、外国人による日経平均225銘柄を中心にした買いとなっている。この流れがいつまで継続するのか、要注目。 ・外国人が売り始めたら、「とことん売り」に徹することも併せて留意したい。
●3.米バークシャー、5大商社株の持ち株比率高める、平均8.5%超に(ブルームバーグ)
■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)
・1911 住友林業 米国住宅市場の回復 ・3099 三越伊勢丹 インバウンド銘柄 ・5726 大阪チタニウム 航空機需要増に期待執筆者プロフィール
中島義之 (なかしま よしゆき)
1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou