時刻表を眺め、「特に用はないけど旅がしたい」という動機から、首都圏の有料特急乗り継ぎを思いつきました。1日でどのくらいの列車に乗れるのか、千葉駅を午前6時台に出発し検証してみました。

ルールを3つ設定

 首都圏ではJR、私鉄で多くの有料特急列車が運行されています。1日でなるべく多くの特急に乗ろうとすると、どのような行程が考えられるでしょうか。以下のルールのもと、2023年5月に「特急乗り継ぎ旅」を実行しました(乗車時間が短いこともあり、写真は別の機会に撮影したイメージ)。

・同じ車両にはできるだけ乗らない
・なるべく多くの特急列車(新幹線・有料座席サービスを含む)に乗る
・車両を楽しむ観点から、最低でも10分は乗りたい


トップランナー「あずさ3号」と同じE353系電車(安藤昌季撮影)。

 JR東日本の企画乗車券「休日おでかけパス」を使い、早朝の千葉駅発で旅行開始です。

 最初のランナーは千葉6時38分発の「あずさ3号」。中央東線用の特急用車両E353系で運行される列車で、松本まで3時間47分も走る長距離特急です。今回は新宿駅までとはいえ52分間乗車するので、グリーン車を利用しました。

 7時30分新宿着。駅構内の駅弁屋「頂」で朝食を購入し、小田急電鉄の新宿駅へ向かいます。

 第2ランナーは、新宿8時ちょうど発の「はこね53号」。小田急の最新ロマンスカーである70000形電車「GSE」を使用した列車で、展望席が備わります。先頭からの眺めを堪能していると、あっという間に町田駅に到着。8時28分でした。なるべく多くの特急に乗るため、ここで乗り換えます。

 第3ランナーは、東京方面へ戻る町田8時44分発「メトロモーニングウェイ30号」。東京メトロ千代田線に直通するため、60000形電車「MSE」が使われています。10号車の14番AB席を予約しているので、運転台越しの前面展望が楽しみつつ再び都心方面へ。代々木上原駅に運転停車すると乗務員が交替し、いよいよ地下鉄へ入ります。

 運転席のカーテンはたいてい降ろされますが、この席は前が見えるつくりなので、リクライニングシートに座りながら地下鉄のトンネルを観察できます。9時46分北千住着。乗り換え時間が7分しかないので、急いで東武鉄道の北千住駅に移動しました。

東武特急 またもとんぼ返り

 第4ランナーは北千住9時53分発の「りょうもう7号」です。200系電車はリニューアル時期によって座席が違うので、座席鉄にはたまらない列車。今回は背面テーブルが背もたれにある、新しい座席でした。フットレスト付きなど、色々なタイプがあります。

 10時19分東武動物公園着。上りホームに移動し、10時27分発の準急で春日部駅へ折り返しました。第5ランナーは、豪華さが売りの100系電車スペーシア。「きぬ114号」で浅草駅まで戻ります。同行者がいるので4人用個室を予約しておきました。浅草着は11時15分でした。


第6ランナー「スカイライナー18号」と同じ新AE形(安藤昌季撮影)。

 都営浅草線の浅草駅は少し離れているので、速足で移動します。11時28分発の快速で京成電鉄の青砥駅へ。11時38分倒着です。

 第6ランナーは京成電鉄「スカイライナー18号」です。スタイリッシュな新AE形に乗車するも、残念ながら在来線最速の160km/h運転は体験できません。次の新鎌ヶ谷駅で下車するからです。スカイライナーで最も短い距離だけに、特急料金はわずか300円。新鎌ヶ谷着は12時5分でした。

 東武アーバンパークラインの新鎌ケ谷駅に移動し、12時23分発の急行で船橋12時32分着。ここも速足で移動し、12時40分発のJR総武快速線で東京駅に移動します。

 第7ランナーは、東京13時15分発の「ときわ66号」。ここだけはルールから逸脱し7分しか乗れず、向かった先は品川駅です。

 JR東海の新幹線ホームに移動し、第8ランナー「こだま729号」に乗車。N700Sで伊豆エリアを目指します。14時10分熱海着。

昼食は車内で 「令和の食堂車」!?

 第9ランナーは、熱海14時22分発の「踊り子15号」。国鉄型車両が引退し、E257系電車2000番台が使われています。乗り換えばかりで昼飯をとる暇はなく、さすがに空腹ですが、次の列車まで我慢します。14時43分伊東駅に倒着です。


第10ランナーは「サフィール踊り子2号」と同じE261系電車。車内で食事をとった(安藤昌季撮影)。

 第10ランナーは、伊東15時10分発の「サフィール踊り子2号」。JR東日本が誇る豪華特急電車E261系であり、カフェテリアも連結されていて美味しい予約制料理も楽しめます。「伊豆産フレッシュトマトのスパゲティ」と「HONDAプレミアムカレー」を注文しました。再び都心方面を目指し、16時27分横浜着です。

 横浜駅からは第11ランナー、17時2分発の東急東横線「S-TRAIN 3号」に乗車します。ロングシートとクロスシートを変換できる西武40000系電車で運行されており、有料列車なのでクロスシートモードです。10号車8番CD席を予約したのは、「パートナーゾーン」と呼ばれるフリースペースがあるから。4号車にはトイレも備わります。東京メトロ副都心線を経由し、17時44分池袋着。

 第12ランナーは池袋18時ちょうど発の、西武池袋線「むさし27号」です。001系電車「ラビュー」の大きな窓から、宵のうちの街並みを眺めます。疲れもたまってきた18時22分、所沢駅に到着です。

 第13ランナーは所沢18時46分発の西武新宿線「小江戸40号」。10000系電車で運行される列車です。こちらも窓が大きくシートピッチも広いので快適でした。西武新宿駅には19時17分に到着です。ここでの乗り換え時間は22分ありますが、JR新宿駅へは遠いので、疲れた体に鞭を入れて速足で歩きました。

ところでかかった経費は…?

 第14ランナーは新宿19時39分発の「成田エクスプレス53号」。この時間帯から出発する特急は、都心へ戻って来にくい長距離列車や通勤特急、空港特急になるので、そろそろ旅程の選択肢が少なくなる頃合いです。

 東京20時3分着。7分で第15ランナーの「しおさい11号」に乗り換えます。引退も噂される255系電車、そして本日3度目の総武線です。4号車5番Dと6番Dを予約し、同行者と向かい合わせにします。コロナ禍を経験し、本来は座席を向かい合わせにすべきではないのですが、ここはかつての禁煙席と喫煙席を隔てる透明パーテーションがあるので、問題ないでしょう。


最終ランナーは新幹線「なすの277号」。写真はイメージ(安藤昌季撮影)。

 千葉20時45分着。20時51分発の快速に乗車して、蘇我駅に20時57分に到着です。千葉を出発した今朝が遠い昔のように感じられます。

 第16ランナーは、蘇我21時7分発の「わかしお24号」。E257系電車500番台は普通席のみですが、座席の出来栄えがよく、疲れた体には助かります。21時40分東京着。21時50分発の寝台特急「サンライズ瀬戸・出雲」に間に合う時刻ですが、別のホームを目指します。

 さて最終ランナーは、東京22時ちょうど発の東北新幹線「なすの277号」。E5系電車に腰を下ろしたと思ったらもう到着、22時5分の上野駅です。

 これにて全行程が終了です。ちなみに必要経費は、全席グリーン車である「サフィール踊り子」以外でグリーン車を使わなければ、16時間で2万3000円ほど。なお指定席特急券は繁忙期など時期により変化します。