香港国際空港には、世界最大の旅客機A380がくぐり抜けられる巨大連絡通路「スカイブリッジ」があります。床の一部はガラス張りなので、絶好の航空スポットですが、そもそもなぜ連絡通路が建設されたのでしょうか。

移動時間が30分→8分に短縮

 香港国際空港(HKIA)には、第1ターミナル(T1)と、その北西部にT1ノースサテライト・コンコースというターミナルがあります。建屋間の距離は270mほどですが、以前、この2つを移動するにはシャトルバスの利用が必須でした。HKIAはアジア屈指のハブ空港ということもあり、世界の航空会社の旅客機が発着します。新型コロナ前はT1サテライトだけで1日最大110便が発着し、バスも4分に1回の頻度で運行していました。


スカイブリッジの外観(写真提供:HKIA)。

 移動時間は10分ほど。ただ、長い時は30分かかることもありました。そのため「連絡通路を建設したほうがよい」という声も多く、2022年11月、2拠点を結ぶ「スカイブリッジ」が完成したのです。時間短縮効果は大きく、所要時間は歩いて8分となりました。

A380が橋の下をくぐり抜けられる!

 総事業費は9億香港ドル(約161億円)で、高さは28m、長さは200mあり、世界最大の旅客機として知られるA380がくぐり抜けられる巨大さです。

 ちなみに、イギリスのガトウィック空港にも似たような連絡通路があります。こちらは1億1000万ポンド(約192億円)を投資して建設され、高さは22m、長さは197mあります。A380はくぐり抜けられませんが、超大型旅客機ボーイング747-400であれば可能です。それは、通路が完成した2005(平成17)年の時点でA380はまだ就航しておらず、ボーイング747を念頭に設計されたためです。

これ以上の連絡通路は生まれない可能性が高い?

 観光都市・香港にあるスカイブリッジですから、この施設がどうすれば話題にのぼり人気スポットになるのかは心得ているのでしょう。スカイブリッジは、通路の壁全体がガラス張りで空港全体を見渡せるようにしているほか、床の一部もガラス張りにして、飛行機が橋の下を通過していくのを楽しめるようにデザインされています。また北側の末端を「スカイデッキ」として小さな展望台兼休憩所が設置されているほか、空港の概要を説明するボードが掲げられています。


ガラス張りで開放的な内部(2023年4月、武田信晃撮影)。

 さて、筆者(武田信晃)が利用した時、偶然にもシンガポール航空のA380が通路の下を通過するところでした。離陸直前の光景です。飛行機を真上から見る機会はほとんどないと思うので、非常に貴重な機会でしたが、案の定ほかの乗客も足を止め、スマートフォンでその様子を撮影していました。素人でさえこうですから、航空ファンにはたまらない施設であることは間違いないでしょう。

 ところでA380は、機体が大きすぎて採算がとりにくいことや、4発エンジンという燃料効率の点などから受注が低迷し、すでに生産を終了しています。双発機の性能向上などから、A380を超える大きさの飛行機は開発されない公算が高いので、自ずとスカイブリッジを超える巨大連絡通路が生まれる確率も低いでしょう。その点でも、スカイブリッジは貴重な存在になると筆者は思います。