【安田記念 みどころ】GI馬10頭が集結!新緑の府中を彩るGI馬たちの豪華競演

写真拡大 (全6枚)


2022ヴィクトリアマイル ソダシが優勝 写真:スポニチ/アフロ

これほど盛り上がりを見せる安田記念も久しぶりではないだろうか?

フルゲート18頭中、GI馬は10頭。これは2020年にならび歴代最多タイの記録となったが、10頭中7頭が芝マイルGIを制しているなど、まさにマイル王者決定戦の色合いが強い一戦となった。

東京競馬場で5週連続GⅠ開催の最終戦となって以来、荒れることが多かった安田記念だが、久しぶりにマイル王を決める頂上対決が見られそうだ。

単なるスピード勝負だけでは通用しない府中のマイル戦。総合力が問われる一戦だけにGIを複数回勝利している馬が俄然有利になるかと思われる。そうなると今年の場合2頭の牝馬に注目が集まるのは間違いない。


写真:日刊スポーツ/アフロ

その1頭がソダシだ。

2歳の夏に純白のアイドルホースとしてデビューして早3年。2歳女王決定戦の阪神JFで白毛の馬として初のGIホースに輝くと、翌春の桜花賞でもライバルたちを力でねじ伏せて無敗のまま桜の女王に。

真っ白な馬体にピンク色のレイが掛けられる姿は本当に美しく、真のアイドルとなった。

その勢いは古馬になっても衰えず、昨年のヴィクトリアマイルも直線で早めに抜け出して勝利してGI3勝目を軽々と記録。

牡馬と対戦すると分が悪いことが多かった牝馬ではあるが、3歳時には札幌記念で古馬たちを粉砕し、4歳秋にはマイルCSで差のない3着に入るなど実力のあるところを見せてくれた。

5歳になって緒戦となったヴィクトリアマイルは2着に敗れたが、直線で早めに抜け出すという勝ちに行く競馬をしてのもの。

叩き2戦目となる今回は前走以上の状態となりそうで、得意のマイル戦とあればもう負けられない。定年のため、このレースを最後にソダシの担当から離れることになった厩務員の今浪隆利のためにも是非とも勝ちたい一戦だ。


2023ヴィクトリアマイルをソングラインが優勝 写真:東京スポーツ/アフロ

そんなソダシの前に立ちはだかるであろう最大のライバルはソングラインか。

3歳時は桜花賞で大敗するなど、ソダシの前に手も足も出なかった馬だが、NHKマイルCで差のない2着に食い込んでから本格化。

ヴィクトリアマイルで5着に敗れた後に臨んだ昨年の安田記念では中団から鋭い脚を見せてシュネルマイスターを差し切り念願のGⅠ初制覇。得意の東京マイルでならば牡馬にも引けを取らないことを示してみせた。

その後はアクシデントもアリ、セントウルS5着、1351ターフスプリント10着と結果が出せずに歯がゆい思いをしたが、前走のヴィクトリアマイルでは先に抜け出したソダシを内から差して快勝。

3度目の挑戦でついにソダシに先着を果たし、GI2勝目をマークした。

勝ったレースはいずれも東京の芝マイル戦で、末脚の切れ味はメンバー随一と言ってもいいだけに直線勝負に持ち込んで連覇を果たしたい。


2023大阪杯 ジャックドールがG1初制覇 写真:日刊スポーツ/アフロ

牝馬ばかりに注目が集まりがちだが、牡馬にも楽しみな馬はいる。これ初のマイル戦出走となるジャックドールこそ、牡馬勢の筆頭格だろう。

デビュー以来、一貫して2000m戦にこだわってきた中距離の雄は3歳9月に2勝目を挙げるなど、やや遅咲きだったがそこから怒涛の5連勝で金鯱賞を制覇。

スタートからスッと前に付けていける素軽さは伝説の逃げ馬、サイレンススズカを思わせるほどのスピードでオールドファンに多くの夢を抱かせた。

その逃げ脚はGI初挑戦の大阪杯となった大阪杯で5着に終わったのをはじめ、不発に終わることも多かったが昨年暮れに香港Cで武豊と出会ってから馬が替わったのか、明け5歳緒戦となった大阪杯でスターズオンアースを相手に逃げ切り、念願のGI初制覇。

異次元のスピードで逃げ切ったその姿に四半世紀前にターフを駆けていたあの馬を思い出した方も少なくないだろう。

そんな彼が次に選んだのはこの安田記念。初のマイル戦をGIでというのは一見、無謀に感じられるがこの馬のスケールを考えればこなしても何ら不思議がないように思える。

父モーリスが8年前に突き抜けたこの舞台で息子が勝ち名乗りを挙げ、マイル界の王座も制圧するだろうか。


2021NHKマイルC シュネルマイスターがソングラインをハナ差捕らえ優勝 写真:日刊スポーツ/アフロ

今年の安田記念は勢いに乗る馬ばかりが目立つが、ここに復活を懸ける馬も当然いる。3年連続でこのレースに挑むシュネルマイスターはそうした復活を懸けた1頭だ。

「スピードの達人」と名付けられた通り、3歳時はその圧倒的なスピードを武器にデビュー4戦目にしてNHKマイルCを制覇。

久しぶりに外国産馬から大物が現れたと大きな期待を寄せられた。返す刀で臨んだ安田記念は勝ち馬ダノンキングリーに0.1秒差に迫っての3着と、3歳馬らしからぬ走りは近い将来、マイルの王座に就くと誰もがそう信じていた。

ところが、シュネルマイスターはそこから伸び悩む。秋緒戦の毎日王冠を制したのを最後に勝ち星から遠ざかり、昨年の安田記念で2着に入った後は4戦連続で馬券圏外に散るなどらしくないレースが続いていた。

しかし、復活を期して臨んだマイラーズCでは後方から末脚一気に賭け、上がり3ハロン32秒9という自信最速タイの切れ味を見せて久々の勝利をマーク。自らの走りでリニューアルしたばかりの京都競馬場に花を添えてみせた。

思えば、東京競馬場でのレースでは馬券圏内を一度も外したことがないというほどの巧者で安田記念は2年連続で馬券圏内入り。

いずれも勝ち馬から0.1秒差以内という接戦で流れひとつで勝っていてもおかしくなかったほど。3度目の挑戦で悲願の安田記念制覇を果たし、約束された地であるマイル王の座に就くだろうか。

春の東京GI開催を締めくくることになる安田記念。マイル王を目指すGI馬たちの夢の競演に注目したい。


■文/福嶌弘