プロの囲碁棋士にも勝利した囲碁AIのAlphaGoを開発したことで知られるGoogle傘下のAI開発企業・DeepMindの共同創設者であるムスタファ・スレイマン氏が、政策立案者はAIに仕事を奪われる人々への対策を進めるべきと警告しています。

AI will create ‘a serious number of losers’, warns DeepMind co-founder | Financial Times

https://www.ft.com/content/0c105d93-e017-470d-8653-a2a30fd720b2



DeepMind cofounder Mustafa Suleyman calls for universal basic income to cushion A.I. job loss | Fortune

https://fortune.com/2023/05/10/artificial-intelligence-deepmind-co-founder-mustafa-suleyman-ubi-governments-seriously-need-to-find-solution-for-people-that-lose-their-jobs/

DeepMind cofounder warns governments seriously need to find solutions for people who lose their jobs to A.I.

https://finance.yahoo.com/news/deepmind-co-founder-warns-governments-155849706.html

ロンドンに本拠地を置くAI研究機関・DeepMindの共同創業者であるスレイマン氏は、2023年5月9日にアメリカ・サンフランシスコで開催されたGIC's Bridge Forumに参加し、「政府はAIの出現により仕事を奪われてしまった頭脳労働者に対する解決策を見つける必要がある」と警告しました。具体的には、ベーシックインカムの導入などを政府が検討すべきと主張しています。

Financial Timesの報道によると、スレイマン氏はフォーラムの中で「(AIに仕事を奪われてしまった人には)重大な補償が必要です。これは政治的、経済的措置であり、我々は真剣に議論を行う必要があります」と語り、進化するAIへの対策を政治的・経済的に進めていく必要があるとしました。

大手金融サービスのゴールドマン・サックスは、2023年3月にMidjourneyやChatGPTなどの人間とほとんど見分けがつかないレベルのコンテンツを作成できるジェネレーティブAIにより、アメリカとヨーロッパで3億人ものフルタイム労働者が職を失う可能性があるという調査レポートを発表しています。

「ChatGPT」などの自動生成AIは世界のGDPを7%増加させると同時に3億人の雇用に影響を与えるという調査報告、日本は世界で3番目に大きな影響を受けるとの指摘も - GIGAZINE



スレイマン氏も「間違いなくホワイトカラーの仕事の多くが、今後5年から10年で大きく変わっていくことになるでしょう」と語り、頭脳労働の多くがAIに取って代わる可能性を指摘しています。

なお、スレイマン氏はDeepMindをGoogleに売却したのち、ビジネスSNSのLinkedInを設立したリード・ホフマン氏の援助のもと、Inflectionという新しいAIスタートアップを立ち上げました。

Inflection

https://inflection.ai/



AIが人間の仕事を奪うことへの対策を進めるべきと進言したのはスレイマン氏が最初ではありません。2023年3月には、イーロン・マスク氏やスティーブ・ウォズニアック氏といったテクノロジー業界の大物たちが、急速な発展を遂げるAIが「社会と人類への深刻なリスクになり得る」として、GPT-4などのAIを「少なくとも6カ月間にわたり即時開発停止すべき」と主張する公開書簡に署名しました。

「コントロールの喪失」の恐れがあるとしてGPT-4を超えるAIの即時開発停止を全技術者に対して6カ月間求める公開書簡、イーロン・マスクやスティーブ・ウォズニアックなど1300人以上が署名 - GIGAZINE



実際、DeepMindの本拠地であるイギリスおよび、DeepMindの親会社であるGoogleが本拠を置くアメリカでは、AIの進化による影響が爆発的な問題を起こす可能性があると、Fortuneは指摘。AIによる影響を和らげるための策がないまま進めば、「非常に多くの労働者が不幸に陥り、大きな動揺を引き起こすこととなるでしょう」とスレイマン氏は警告しています。