入園・入学のシーズン。子どもが早生まれゆえに、「周りについていけるかな?」と不安を募らせている方もなかにはいらっしゃるのではないでしょうか。日本ではデメリットが多いとされがちな早生まれですが、海外ではどうなっているのでしょうか? アメリカ・シアトルに住んで20年、子育てに奮闘するライターのNorikoさんに、「アメリカの早生まれ事情」について教えてもらいました。

わが子も日本の「早生まれ」の洗礼…これはなかなか手ごわい?

アメリカでも州や地域によって異なりますが、ほぼ9月からが新学年と考えてよいかと思います。私の住むシアトルを例に説明すると、9月生まれから8月生まれまでの子どもが同じ学年となるシステム。幼稚園年長に当たる5歳から、小学校に組み込まれている「キンダーガーテン」(幼稚園年長)に通うことができます。

アメリカも1学年の差は大きかった!

日本と同じように、アメリカにも生まれ月にこだわって計画的に産む人はいます。日本で学年始まりの「4月生まれ(4月2日以降)」が得と思う人が多いように、シアトルでも学年始まりの「9月生まれ」が人気のようです。

なぜなら、これは諸説ありますが、アメリカの最新研究では、学校生活の中で秋生まれの「Oldest(年上)」か、夏生まれの「Youngest(年下)」かでは、成績や素行への影響が大学入学時まで続くとされ、生涯賃金にも差が出ると言われているからです。

私自身はまったく考えていなかったのですが、わが子は日本で言う早生まれに当たります。初めて早生まれの子の現実に直面したのが、現地の日本人の子どもたちが土曜日に通う小学校の1年生クラスです。

日本式に学年が4月始まりでしたので、現地校では1学年上となる体格の大きい春夏生まれの男の子や、口が達者で精神年齢も上の女の子と比べると、なにもかもが幼く見える、おっとりマイペースの息子。案の定、なかなか周りについていくことができず、まったく実りのない1年間を終えました…。

もし、息子が本来小学2年生になるタイミングで、現地校で同じ学年となる小学1年生のお友だちと一緒に学べていたらと思うと、1学年の差は大きいと改めて実感した次第です。

●9月始まりの現地校では立場逆転

9月始まりの現地校で早生まれとなるのは、6〜8月生まれの子どもたちです。現地校では、早生まれどころか、「遅生まれ」に近い立ち位置となる息子。現地校の担任の先生方との面談では「成績は常にトップ圏内。いち早く課題が終わるので、みんなを待つ間に読書をしてもらうこともありますよ」と、ほぼ真逆の評価でした(笑)。なるほど、同じ子どもでも、早生まれの呪いがあるとないとではここまで違うのか…と心底ビックリ。

もちろん、子どもができないことよりできることにフォーカスし、なんでもほめてもち上げてくれるアメリカの学校ということもありますが、こんなにも評価や扱いに差が出るのであれば、前述の研究結果にも納得です。

現地校に通う夏生まれの子どもの親も、やはり体格や学力の差を気にしているようです。夏生まれの子は冬生まれの子と違って、気候のいい時期に屋外で誕生パーティができていいなぁとか、子どもが小さいうちはうらやましく思うこともありましたが…。1〜3月か、6〜8月か、生まれ月の違いはあれ、日本でもアメリカでも早生まれの子どもをもつ親は同じように悩みを抱えているのではないでしょうか。

なかにはもともと発達の早い子や、逆境をバネに成長できるたくましい子もいるとは思いますが、世の中、そんな天才やアスリートばかりではないですよね。小学校低学年と言えば、「自信」や「自己肯定感」を育みたい大切な時期。そう思うと正直、メリットよりもデメリットを多く感じてしまいます。

乳幼児期には月齢に配慮して保育してもらえるようなのに、小学校入学と同時にまったく月齢関係なく一緒くたにされるのは、どうしてなんでしょうね?

●もし、子どもの発達に合わせて学年や開始月を選べたら?

アメリカでは日本と違い、入園・入学は自己申告制で、子どもの発達や家庭の事情に合わせて時期を決められます。夏生まれの子どもの場合、発達具合を考慮し、1年遅らせて翌年9月に入園・入学させることも可能。

ただし、1年先の入園・入学を選択すると、アメリカのバカ高い保育料がさらに1年分かかってしまうことになります。公立校なら幼稚園年長から高校まで無料となるため、その出費は結構イタい…。

お金持ち家庭は教育にも熱心ですし、いくら保育料やナニー代がかかっても子どもの成長を待てる余裕があるでしょう。ということで、実際に入園・入学を1年遅らせているのは高所得層に限られるようです。シアトルのあるワシントン州では8歳からが義務教育なので、学校に行かずに自宅で勉強するホームスクーリングを実践する家庭も少なくありません。
アメリカでは現在、公立校でも成績優秀者へのギフテッド教育、飛び級、アドバンスプログラムなどを無償で提供しています。成績優秀者はより学力アップできるシステムが整っているため、春夏生まれで勉強が遅れていると、どんどん学力の差が開いていきます。それが大学進学率や名門大学出の割合の差となって、数字にも表れています。アメリカは日本よりも学歴社会。当然、生涯賃金に大きく影響が出るというわけです。

また、コロナ禍で社会的コミュニケーションの機会が奪われた子にとって、就学前の保育延長は有益とする説も。さらなる1年間の保育料を子どもの成長と将来への投資と捉えるか、それとも目先の生活や節約が優先か、親は難しい判断を迫られます。

そもそも、一般的に学年を選べる環境にない日本ではどうでしょうか。子どもによって状況は異なるとは思いますが、もし早生まれで勉強に苦労している子どもが、少し遅れて9月始まりのインターナショナルスクールや随時入学が可能なモンテッソーリの学校に行ってみたら…? 公立でない分、やっぱりお金はかかりそうですが、もともと私立校のお受験を考えている家庭であれば、検討の余地はあるかもしれませんね。