陸上界のレジェンド・朝原宣治と球界のレジェンド・谷繁元信が異種対談!五輪銀メダリストの半生に迫る
球界のレジェンドにして2つのギネス世界記録を持つ谷繁元信氏のYouTube「谷繁ベースボールチャンネル」より、スポーツの垣根を越えた対談、陸上界のレジェンド・朝原宣治氏を迎え、これまでの経歴や現役選手へのコーチングなどについて語る。
この記事はYouTube配信「【異種競技対談】五輪で銀メダル!日本記録3回更新!陸上界のレジェンドが高みに至るまでの半生に迫る..!!」から、ライブドア社の自動書き起こしツールによって生成されています。
はじまり
谷繁: 皆さんおはようございます。今、収録してるのは朝なんで。谷繁ベースボールチャンネル。
朝原: お願いします。
谷繁: 初対面で(笑)。
朝原: そうなんですよ(笑)。場所だけ告げられて来たっていう。
谷繁: ありがとうございます、ホントに。僕はずっとテレビで見てたんで。まさか、僕より年下とは思っていなかったんですけど。歴からすると、もうめちゃくちゃ長いじゃないですか?
朝原: まぁ長かったですけどね。
谷繁: 現役は何歳までやられてたんですか?
朝原: 36歳までやってました。
谷繁: でも、陸上で36歳ってなかなかないんじゃないですか?
朝原: はい。長いですね。特に、短距離で36歳でオリンピックに行くってあんまりない。海外ではいるんですけれど。
谷繁: 4大会ですよね? オリンピック。
朝原: そうですね、4大会に出てますね。
朝原氏が陸上競技を始めるまで
谷繁: そういうところからですね。まず、子供の頃からちょっと僕、聞きたいんですよ。子供の頃からやっぱり速かったですか?
朝原: 運動会では速かったですね。
谷繁: もう、つねに?
朝原: 同学年ではつねにトップみたいな。
谷繁: 僕なんてね、運動会の徒競走でそんなに速くなかったから、何かめっちゃドキドキしていたんですけど、いつもスタート前。してました?
朝原: あぁまあね。それなりに僕の場合は結構、1年生から同学年で速かったんで、何か勝手にプレッシャーというか「勝たないと」みたいな(笑)
谷繁: でも、いつ頃からですか?自分が他の子どもよりも「速いなぁ」と思ったのは。
朝原: 小学校入ってからですね。
谷繁: 「これ。周りと俺、全然速いかもしれない」みたいな。
朝原: 速いかもしれないと思って、徐々に高学年になるにつれて「勝たねば」っていう(笑)。
谷繁: ははは!(笑)
朝原: 「負けたらどうしよう」っていう(笑)。
谷繁: その時は運動会とか小学校の中のそういう競技だけだったんですか?
朝原: そうですね。競技はやってなくて、小学校時代は少年団の野球とかもやってなかったんですよ。だから、何にも所属していない。
スイミングもやってないくらいだったんで、ほぼ遊びでドッジボールとかやってて、「走りの競争」ってなったら、もう運動会しか見せ場がないっていう。
谷繁: いつから陸上というところに?
朝原: 高校時代からなんですよ、陸上は。小学校の時、足は速かったですけど陸上というよりは、何か球技がやりたかったんで。本当はサッカーがしたかったんですけど。
谷繁: 足が速いからね(笑)。
朝原: それもありますし(笑)、何かサッカーがカッコよかったんで。でも、周りが部活動以外やるとこないんですけど、たまたま僕が進学した公立の普通の中学校なんですけど、サッカー部がなかったんですよ。
その代わりに、それとに似ているかどうか分かんないですけど、ハンドボールがあったので。
谷繁: 珍しいですね。中学校でサッカーがなくてハンドボールがあるって(笑)。
朝原: ちっちゃいゴールがあったんで「サッカーかな?」と思っていたら、ハンドボールだったんです(笑)。
谷繁: 珍しいな〜それ。僕らの世代でね。
朝原: そうなんですよ、珍しいです。
谷繁: 中学、ハンドボール?
朝原: ハンドボールは3年間やってました。
谷繁: それがまた、どうして高校入って?
朝原: いやーまぁ、ハンドボールも良かったんですけど、全国大会行ったんですよ。
谷繁: ハンドボールで?
朝原: はい。結構、練習しまして。全国大会に行ったは良かったんですけど「ちょっと、もういいかな」ってなったんですよ、僕の中でハンドボールは。
それで、高校でずっと思ってたサッカー部に1度、仮入部して「サッカーやろうかな?」と思ったんですけど、ちょっと何か顧問の先生が悪かったとは言わないんですけど、何か雰囲気がダメで(笑)。
朝原: 「え? こんなんですか?」ってなって「どうしようかな?」って思っていたら、一番初めに友達になったクラスメイトが誘ってくれて「陸上、一緒にやろう」って言って。
あと、顧問の先生が「陸上競技もやらないか?」ってなって、それで陸上を始めました。
谷繁: 陸上を始めたのは遅いですね。
朝原: 遅いんですよ。
谷繁: そうですよね。今、速く走っている選手たちって、もうホント「子供の頃から何かもう陸上部」みたいな。
朝原: 何かしら関わっている人もいますし、中学校時代から始めた子もいますけど、高校は少ないは少ないですね。
谷繁: そうですよね。長距離は全然ダメだったんですか?
朝原: 全然ダメです(笑)。校内マラソン大会とかも途中で歩いたり、ワープしたり、そんな類いな人でした。
谷繁: 短距離と言っても…あれ? 短距離って何mまでなんですか? 僕の中では…。
朝原: どういうことですか?(笑)あっ、400mです。「短距離」っていうのは400mです。800mなると「中距離」。1500mも「中距離」で、そこから先は「長距離」になります。
谷繁: 僕の意識からすると100m超えたら長距離みたいな(笑)。まぁ…ギリ200mまでかな。
朝原: まぁ長いっすね。400mは僕ももうできないので。
谷繁: 400mを全力疾走なんか無理みたいな。
朝原: 無理です。地獄ですから。
谷繁: そこにはもう一切。「自分はちょっと無理だな」っていう。
朝原: 無理ですね。特性もないですね。やっぱ、400mになるとちょっと違います、やっぱり。
谷繁: 最初から100m?
朝原: いや、初めは「幅跳び」やってたんですよ。
谷繁: あっ、そうですよね? それでも出てるんですよね?
朝原: そうです。幅跳びでまず…ハンドボールをやっていたというのもあってジャンプ力があったので、幅跳びと100mというか、走るのは一緒にやってたんですけど、元々ずっと幅跳びの選手として大学ぐらいまでは、そっちがメインでやってました。
谷繁: それが日本人初10秒1?
朝原: 1台ですね。
谷繁: ですよね。
朝原: 10秒19がいちばん初めの日本記録です。
谷繁: いちばん遅いタイムってどれくらいなんですか?
朝原: いちばん遅い?(笑)
谷繁: いちばん遅いっていう言い方はあれですけど10秒台ですか?それでも?
朝原: いやいや、初めの段階で10秒台は絶対出ないです、出ないです。11秒台で走っても、めちゃくちゃ速いんで。
谷繁: まだ当時は?
朝原: 当時はね。初めて走ったら多分そんなんじゃないですね。高校で走っても多分13秒とか14秒とか、そんなんじゃないですか?いちばん初めね。そこから徐々にって感じだと思います。
谷繁: それがどれくらいのスパンというか期間で、タイムが縮まっていくものなんですか?
朝原: 速かったんです、それが(笑)。
谷繁: だから、なんですね。じゃなきゃ、日本代表になってない。
朝原: 走り幅跳びで、初め意味が分からなくて飛んでたんですけど、だんだん分かってきて、1年生の最後ぐらいに6m99かな? 何かそんな記録で跳んだんですよ。
朝原: それって県で3番とか、そんな感じで跳べたんで、その辺ぐらいから何か覚醒したというか(笑)。だから、1年ぐらいですね。
谷繁: それには何か理由があったんですか?自分の中で。
朝原: 何か…夏休みの合宿ですかね。夏休みの合宿で先輩とかにも教えてもらったりして、徐々に「あっ。こうやってやれば良いのかな」というのが分かってきた。
谷繁: そこから、100mと走り幅跳び両方でオリンピック行かれましたよね?最初。
朝原: はい。初めはそうですね。リレーでも選ばれて。
谷繁: 4×100mですね。まぁ…でもね。その100mを10秒台で、そのタイムがだんだんだんだん縮まっていった時に、最終的に10秒1台ですか?
朝原: 0台ですね。02です。
朝原氏が自己ベストを出した試合
谷繁: 走っている時に景色違うんですか?
朝原: 景色はちょっと分からないですけど、感覚的には違いますね、やっぱりね。ただ、僕の10秒02という自己ベストは海外の試合なんですよ。
海外の試合で、しかもめちゃくちゃ速いトップスプリンターと一緒に走ってたんで、4位でゴールしているんですよ。4位でトップが9秒8いくらの10秒02なんで、すごい差があって10秒02だから、僕の中では気持ち良くないんですよ。
これが、日本選手権の優勝で先頭を走っていたりしたら「よーし!」ってもう爽快感で。そんなんなんですけど、だから10秒02でも感覚的には結構苦しかったんですよね。「これいった!」っていうよりは、「前とあんな離れてるのに…」っていう。
谷繁: 9秒8いくつでしょう?前が。コンマ2じゃないですか? 何mぐらいなんですか?
朝原: コンマ2で2mですね。
谷繁: 相当、前の感じですか?
朝原: いや、2m空いたらもう…。
谷繁: 2mってそこですよ?(笑)
朝原: そこですけど、100mでこんな空いてたら、もう完全に負けですから(笑)。
谷繁: その苦しい中での自己新?
朝原: そうですね。
谷繁: そこが違うんですね。そこに対しての自分の練習量というか、そういうのはやっぱり増やしたんですか?
朝原: そうですね、かなり。高校・大学・社会人となっていて、社会人になってドイツに留学しているんですけど、そこからはめちゃくちゃ練習しています。これまでのやっぱり練習の2.5倍か…。
谷繁: 倍じゃなくて?
朝原: 2倍以上はやってますね。
2人が思う正しい努力の仕方
谷繁: その辺をやっぱり僕、いろんな競技でも聞いていきたいんですけど。今、時代が、言葉に語弊があるかもしれないんですけれども、楽をして良い成績を出そうという…。
まぁ楽じゃないんですけど、昔みたいに「とにかく打てるようになるためには、もうとにかく振るしかない」とか、「体力をつけるには、走るしかない」とか、ピッチャーだったら「スタミナつけるんだったら、投げてスタミナをつける」っていう。
そこからちょっとシフトが変わって、いろんなトレーニング方法であったり、そういうのがものすごく今、多いじゃないですか?
朝原: はい。
谷繁: そこをどう感じられているのかな?っていう。
朝原: 確かに、なんか「効率性」っていうやつですよね。
谷繁: そうです、そうです。
朝原: 効率性は上がっていると思います。それはやっぱりいろんなデータが今使えるじゃないですか? だから、それをチェックしながら練習できるので、何か質を確保した練習ができているというのは確かだと思うんですよ。
朝原: でも、それって僕らの時ってあんまりそういうのがなくて、感覚でやってたじゃないですか? 結果、何か「自分の感覚はこれだ」って思うまで繰り返しやって。
結果、練習が膨らむというのは、僕はありだと思うんです。ただ、始めから数が決まってて、これを消化するために「これだけの練習量をやる」っていうのは、それはちょっと違うかな?というふうに思います。
野球の不効率な練習って、代表例として何があるんですか?
谷繁: 例えば、「3時間打っておけ」とかね。
朝原: ははは!そう…時間…。そういうやつです(笑)。「3時間」って意味ないじゃないですか?別に。
谷繁: 言っているように、その3時間打っている間に「これだ!」というのを自分で見つけるっていうその必要性もありはありかな?っていう。
じゃあ、何が一番正しい形で、それを早めに教えてあげて、それを正しい形で1時間。それは、絶対こっちの方が効率が良いので、それは僕は良いと思うんですよ。
でも、無駄な努力っていうか、これいろいろなところで言ってるんですけど、やっぱりやってみないと分からない。
朝原: うん、そうですね。
谷繁: そうなんです。そこもあるんじゃないかなって思うんですよ。
朝原: それはありますね。僕らも、人によって効く練習と効かない練習があるし。よく高校生とか中学生とかに聞かれるんですけど「効率よくタイムを上げるトレーニングを教えてください」とか何かあるんですけども。
それはないというか、自分でいろいろやらないと分からないですし。
谷繁: そうなんですよ。僕なんて「なんでこんな長くできたんですか?」「ひとつ教えてください」。いや、ひとつはないって言うんですよ(笑)。
朝原: いろんな要素があるんで。
谷繁: そうなんですよ。一番いい方法というのは、僕もいろんな方に聞いて考えていきたいなと思ってるところなんですよ。
朝原: ホントはもう、それ自分が何か興味を持ってやるしかないですよね。それを「これです」って何か教えてもらうってのは、多分無理だと思うんですよね。
谷繁: 最終的っていうことかもしれないんですけど、やはり自分で探すのが一番いいと思うんですよ。
朝原: はい、そうですね。
谷繁: それが一番身に付くと思うんですね。自分で探すと興味も出てくるでしょうし、「続けよう」という気持ちも出てくると思うんですよ、その中から。
それを「はい、これやれ」と言われたまんまにやるというのは、やっぱり良くないんじゃないかなと思うし。
野球選手はどこで成長を実感する?
朝原: 僕らは数字が全部出るじゃないですか? だから、トレーニングにしてもタイムが出るので、今どんな状況かってすぐ分かるんですけど。
野球って結構、相手があったりするので、その辺の自分の評価というか、調子がいいかどうかとか、成長しているかどうかって、何を基準に見ているんですか?
谷繁: バッターであれば、そうですね…。やっぱり、バッティングのスイングの形であったり、捉え方であったり、そういうところもそうですね。結局、野球も数字に出てくるじゃないですか。
朝原: そうですね。
谷繁: 「率」というのがあるんで、そこを追い求めていかなきゃいけない。
朝原: そうです。それは試合では出ますけど、練習で冬のキャンプでやってて、「よし。いける!」って本人は思ってたとしても、シーズンに入ってダメなことってあるんですか?
谷繁: あります。
朝原: 陸上も一緒なんですけど、そこをいけているかどうかって、キャンプ中ってあんま分からないってことですか?
谷繁: 自分はあんまり分からないと思います。なぜかというと、自分ではいい感じで気持ちよくバッティング練習はしてるんですけど、それは結局、練習のボールなんですよ。
朝原: ですよね。
谷繁: それが今度、生きた球になった時に、同じスイングで打ちに行った時に「あれ?違う」「あれ?前飛ばない…」「あれ?捉えられない…」。だから、どんどんどんどんまた変わってくるんですよ。
谷繁: そこの繰り返しなんですよね。それを今キャンプやってますから、そのキャンプでやったことを実戦に入った時にちゃんとできるかどうかっていうのは、これからなんですよ。
そこにできた時に「あっ、キャンプでやってきたことが正しかったんだ」っていうふうになっていくんですよ。
朝原: じゃあ、でも…そこで対戦して…。
谷繁: そうです。
朝原: じゃあ、それは一緒か。
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