代表合宿で会話するダルビッシュ有(左)と宇田川優希【写真:Getty Images】

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侍ジャパンが3度目世界一

 野球のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)は21日(日本時間22日)、米マイアミのローンデポ・パークで決勝が行われ、日本が前回王者・米国を3-2で下し、14年ぶり3度目の優勝を果たした。侍ジャパンのムードメーカーになった一人が、宇田川優希投手。2月17日から始まった宮崎強化合宿で馴染めず困っていたところを、ダルビッシュ有投手を始めとするメンバーに救われた。34日間の代表の日々を振り返り「今は凄く寂しい気持ちが強い」と心境を明かした。

 2月の代表合宿に集まったメンバーは、ダルビッシュ、佐々木朗希、村上宗隆ら錚々たる実力者たち。1年前はオリックスの育成選手として3桁の背番号をつけていた宇田川は「皆がみんな、テレビの中の人だと思った」と恐縮。自分から話しかけられなかった。

「どうしようかなと困っていた」という剛腕を最初に救ったのは、気さくに声をかけたダルビッシュだった。2月20日に行われた投手会の名称は、開催後に“宇田川会”に変更。宇田川を中心に撮影した記念写真も話題になるなど、いつの間にかチームに溶け込めていた。

 3月の京セラドームの強化試合期間にも、愛ある“いじり”があった。オリックスでのユニホーム型「宇田川キーホルダー」をダルビッシュが多数購入。選手が自由に持っていけるよう、ロッカーに置いたという。最年少の高橋宏斗も「もらったっす」と嬉しそうにリュックにつけていた。

「無事に終わって」→「寂しい気持ちが強い」 気持ちが変化

 そんなダルビッシュの温かい人間性に、宇田川は尊敬の念を抱く。

 練習後の挨拶をすると、宇田川に限らず「今日はどうだった?」「あれは何の練習?」と興味を持って聞いてくれた。

「普通は『お疲れ様』とかで終わると思うけれど、ダルビッシュさんは一人一人の選手をすごく見ている。凄いなと思った」。雲の上のメジャーリーガーだった男とも、いつの間にか距離が縮まっていた。

 取材に正直に答えてくれた宇田川は、侍ジャパンの活動が始まった頃「無事に代表活動が終わってほしい」との思いがあったと明かす。宮崎合宿初日から34日が経過し、「今は凄く寂しい気持ちが強い。寂しい気持ちになれたし、馴染めてからすごく楽しい期間でした」と気持ちの変化を表現した。

 WBCでは2試合に登板。1回1/3を無安打3奪三振、防御率0.00だったが、準決勝と決勝では出番がなかった。「見ていて投げたかった。優勝できて嬉しいけれど、投げる機会がなく個人的には悔しい気持ちもある。そこをシーズン開幕からぶつけていければいい」。世界一というかけがえのない経験を、NPBでも活かす。

(THE ANSWER編集部・宮内 宏哉 / Hiroya Miyauchi)