「ジャンボジェット」VIP機まだまだ健在? 最新747-8の韓国大統領専用機が初来日 実は新造じゃない!
2022年に運用が開始されたばかりの新たな韓国大統領専用機が羽田空港に初飛来しました。大統領を含む政府首脳らを専門に運ぶ要人輸送機は各国が持っていますが、韓国の機体は“レア”ものです。
アメリカ空軍より一足先に最新ジャンボの運用スタート
韓国大統領専用機のボーイング747-8(機体記号:22001)が2023年3月16日午前11時30分ごろ、同国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領を乗せて羽田空港に到着しました。
韓国大統領の訪日はおよそ4年ぶり。ボーイング747-8の韓国大統領専用機が羽田空港へ飛来するのは初めてです。ユン大統領は岸田文雄首相と5年ぶりとなる日韓首脳会談などを行った後、17日に帰国します。
2023年3月16日、羽田空港に初飛来した韓国の大統領専用機「空軍1号機」(深水千翔撮影)。
今回飛来したボーイング747-8は、韓国空軍の第257特別飛行隊が運用している機体で「空軍1号機」と呼ばれています。2022年1月に文在寅(ムン・ジェイン)大統領(当時)の中東歴訪でデビューして以降、大統領が長距離の移動をする際に使われており、尹大統領も2022年6月にスペイン・マドリードで開催されたNATO(北大西洋条約機構)首脳会合に出席する際に搭乗しました。なお、大統領が搭乗していることを表すコールサインは「KAF001」、通称は「コードワン(Code-1)」です。
ただ、この韓国大統領専用機ですが、日本の政府専用機などとは異なり中古です。元々、大韓航空で使用していたボーイング747-8を、韓国国防部がリースして導入した経緯があります。
ゆえに、以前は定期便として運用されており、成田空港や関西国際空港にも飛来していました。ちなみに、先代の「空軍1号機」であるボーイング747-400も大韓航空からのリース機で、2代続けて旅客型の「ジャンボジェット」を改造した機体となっています。4発エンジン機そのものが珍しくなりつつあるなか、日韓関係の改善に伴って羽田空港への飛来が増えるであろうと期待されます。
ちなみにアメリカも、コールサイン「エアフォースワン」で知られる大統領専用機を、新型「ジャンボ」で置き換えようとしています。
2023年3月現在、「エアフォースワン」として用いられているのはボーイング747-200Bをベースにした「VC-25A」ですが、これを747-8ベースの新型「VC-25B」で更新する予定です。VC-25Bの納入予定は1機目が2027年、2機目が2028年なので、「ジャンボジェット」のVIP機はまだまだ見ることができそうです。
更新予定のVIP機はほかにも
世界的に、政府要人の外遊では関係者だけが搭乗する特別な飛行機が使われることが多いです。日本は航空自衛隊が、アメリカ、ドイツ、インドなどは各国空軍が運用しており、一目でその国の特別機とわかるデザインをしていることから、運航される際は大きな話題になります。
一方で、オーストラリア空軍のKC-30A空中給油・輸送機や、中国国際航空のボーイング747-8は、内部こそVIP仕様になっているものの、専用の塗装は施されておらず、外観からは要人輸送に用いられる特別機かどうか区別がつきにくくなっています。
また、カタールのボーイング747-8のように政府が所有・運営する航空会社が運航していることもあれば、インドネシアのように、ガルーダインドネシア航空のボーイング777-300ERに政府専用機として特別な塗装を施しつつ、普段は定期便に投入されているという例もあります。
2021年12月まで使用されていたボーイング747-400(機体記号HL7465)ベースの韓国空軍1号機(画像:アメリカ国防総省)。
韓国の「空軍1号機」の場合、自国の旅客機をVIP仕様に改造し、空軍が運用しているものの、あくまでもリース機材という位置づけです。
ボーイング747-8の契約期間は2021年から2026年までの5年間で、リース料は3003億ウォン(約307億円)だとか。それ以降に関しては、大韓航空とのリース契約を継続するのか、政府として機材を購入するのか、さらに4発機から経済的な双発機に切り替えるのかは現状、不明です。
なお、韓国空軍にはほかにも要人専用機として、「空軍2号機」のボーイング737-300(機体記号85101)と、「空軍3号機」のVCN-235(機体記号02050)などがありますが、いずれも短距離の移動がメインとなっています。
近年のエピソードとしては、2020年に船内で集団感染が発生したクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」から韓国人乗客を帰国させるため、「空軍3号機」であるVCN-235が羽田空港へ飛来した例もあります。
ちなみに、ボーイング737-300に関しては1985年の導入から40年近く経っていることもあり、代替機材の検討が進められています。現行機材より大型の機体を導入すると見られており、新しい韓国のVIP機がどのモデルをベースにするのか、その動向にも筆者(深水千翔:海事ライター)は注目しています。
※誤字を修正しました(3月17日0時25分)