Amazonはクラウドコンピューティングサービスの「Amazon Web Services(AWS)」で多大な利益を得ていると報じられている他、2021年にはAmazonプライムの加入者が2億円を突破して依然急速な成長を続けていると明らかにされている一方で、さらなる主要な収益源としてAmazonの広告ビジネスが400億ドル(約5兆5000億円)近い規模まで拡大しています。その実情と広告ビジネスが急上昇するメカニズムについて、アナリスト兼コンサルタントのベネディクト・エヴァンス氏が分析しています。

Retail, search and Amazon’s $40bn ‘advertising’ business — Benedict Evans

https://www.ben-evans.com/benedictevans/2023/3/6/ways-to-think-about-amazon-advertising





アメリカの有名なベンチャーキャピタルから独立してアナリスト・コンサルタントとして活動するエヴァンズ氏は、自身の個人メディアでビジネスやテクノロジー関連のテーマを取り上げ、情報分析を行っています。2021年には、Amazonが前年に発表した売上高の12%を占めるAWSよりも「収益性の高い隠れた収益源」として、Amazonの広告ビジネスに注目しています。

Amazonには収益性の高さで知られるAWSを超える収益源があるという指摘 - GIGAZINE



by Jeffrey

2020年までAmazonは決算報告において広告ビジネスの収益を「その他」に分類していましたが、Amazonは2021年に決算の分割を開始し、2022年の決算では「広告収入」として約380億ドル(約5兆2000億円)の売上が報告されています。この額は、従来のどのメディアによる広告収益よりも多く、世界の新聞業界全体よりも大きいものであるとエヴァンズ氏は述べています。



広告ビジネスはAmazonの2022年の純収益の約7%とわずかな割合ではありますが、2021年の記事でエヴァンズ氏が指摘したように、広告ビジネスには50%を超える営業利益率があると考えられています。また、2022年の380億ドルという広告分野の収益報告は、同年のAmazonプライム収益として報告された額よりも高くなっています。



Amazonにおける広告ビジネスの強みについて、エヴァンズ氏はいくつかの分析を述べています。まず、メディアを主目的としたサイトではなくても、訪問者の多いウェブサイトやアプリは広告在庫として活用することができるため、Amazonのサイト全体に適用することが可能になっています。加えて、一般的な広告が参照するようなCookieやサードパーティデータと比較して、購入者の属性やショッピングの傾向などの情報が相対的な価値を持つと考えられます。実際、海外メディアのRecodeによると、Amazonの検索結果で広告された商品は、他の商品と比べて非常に大きくなっているとのことで、効果的な点が報告されています。

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Google広告のようなメディア広告は、「広告なのか、マーケティングなのか」という定義に関する見方があります。製品やサービスで利用可能な収益機会を参照するために用いられる「獲得可能な最大市場規模(TAM)」という指標において、広告を出稿する小売店にとって検索広告が広告なのかマーケティングなのか、あるいは検索結果に商品を表示してもらう「家賃」としての支払いなのか、などという点は、小売店の選択を左右します。Amazonはメディアではなく一つの市場として、小売店に対する利益率を変更したり、送料や返品条件などを好条件にしたり、割引きや価格差別などのマーケティングを行ったりと、さまざまなアプローチが可能です。Amazonは今や世界最大の広告主となっており、どのようにして消費者にリーチするのかを検討する中で、Amazonが重要な選択肢になっているとエヴァンズ氏は指摘しています。