家づくりで外観や外壁材をどうするか。参考になる、異なる2つの事例を紹介します。ひとつ目は住宅街に立つ、素材感を重視した端正なフォルムの家。もうひとつは自然に囲まれた場所に立つ、庭の植栽にほどよくなじむ外観と仕上げ材を選んだ家です。どちらも帰りを待ってくれているかのようなたたずまいです。

CASE1.素材感を重視したこだわりの外観デザイン

●Tさんの家 岐阜県 設計/GA設計事務所 撮影/中村風詩人

大きな切妻屋根を載せた、端正なフォルムが印象的なTさんの住まい。道路に面したファサードは、中央に配した吹き抜けのあるリビングダイニングの大きな窓を中心に、左官仕上げと板張りの外壁に振り分けたデザインが特徴です。

外壁や窓を屋根のラインに沿って仕上げることで、縦ラインや建物のアウトラインが強調され、スッキリとした印象に。異なる素材を組み合わせて意匠を凝らしたファサードに対し、隣家の迫るサイドは、ガルバリウム鋼板でクールな雰囲気をまとわせています。

厳選素材と意匠によって個性の光るデザインとなり、「キレイな見た目にこだわった自慢の外観です」と、夫妻は胸を張ります。

 

建物のサイドはガルバリウム鋼板角波張りを採用。凹凸に折り上げられたラインがシャープな印象をたたえます。耐久性があり、メンテナンスがラクなのもポイント。コンクリート塀にもこだわって、杉板本実型枠で制作して表面に杉の木目をつけています。

 

玄関回りの外壁は、レッドシダー縁甲板張りでナチュラルに。玄関ドアも樹種をそろえ、外壁との一体感を高めています。

CASE2.庭の緑と建物がほどよく溶け合う

●高木さんの家 神奈川県 設計/トトモニ 撮影/滝浦 哲

自然に囲まれた5mの擁壁の上に建つのは、建築家の高木さんの家。「周囲に圧迫感を与えないよう、住まいは森の中にたたずむイメージを心掛けました」と高木さん。

 

そこで外観は、地面に近くなるように軒を深く取り、2階建てながら玄関は平屋のようなたたずまいに。外壁は、素材感や自然界の色を大切にして、人の手による素朴な質感がやさしいリシン掻き落としを採用して、アースカラーのベージュを選択。

 

「植栽も環境に合う植物が育ち、鳥や虫によって新しい種類が増えます。そして虫の巣や卵が外壁に自然とついていく。『それもよし』と思う大らかさによって、建物は環境の一部になります」(高木さん)。

 

2階ルーフバルコニーから眺めた外観。外壁は、左官職人がコテで塗り、乾く前にブラシなどでこすって表面に表情をつけたリシン掻き落とし。屋根は耐久性とコストパフォーマンスに加え、トップライトとの納まりを考えてガルバリウム鋼板を採用。

 

「温かく人を迎え入れる色」として選んだベージュ色の外壁が、周囲の自然や雑木林のような庭になじみます。