22坪の敷地にドライブスルー式の駐車場！断熱性能もすごい都市型住宅
30代夫婦が暮らすおしゃれな狭小住宅を紹介しましょう。敷地は住宅密集地の角地で五角形で、22坪しかありません。浸水の恐れがある地域という敷地を割安で購入し、浮いた費用を「カッコよさと高性能」にかけました。ドライブスルー式の駐車場、ヨーロッパの邸宅をイメージしたインテリアも実現。防災対策のために、1階は高基礎でつくっています。
割安な土地を購入。その分「カッコよさと高性能」を追求
Mさんの家 東京都 家族構成／夫30代 妻30代
設計／Sデザインファーム
大きな開口部と吹き抜けが開放的なM邸の2階リビングダイニング。敷地形状を反映したユニークな台形の空間は奥行きも感じられ、洗練されたインテリアはヨーロッパの邸宅をイメージしたもの。こだわりの家具や照明器具が美しく映えています。
「普通の四角い家には興味がなかった」という夫が見つけた五角形の敷地は、ハザードマップの浸水の恐れがある地域にあるため割安だったそう。そのぶん家の気密や断熱などにもお金をかけ、「カッコよさと高性能」を追求することに。
断熱性能については、断熱材をすき間なく充填したうえに気密シートを施すなど、気密対策も徹底。「冬でも朝、床暖房をつけるだけで十分。エアコンは使いません」（妻）という暖かさを実現しました。
エコな家づくりのためにこだわった7つのポイント
極力窓を減らし、断熱材の施工にもこだわることで気密性・断熱性を高めたM邸。冷暖房効率を下げない工夫や省エネ性の高い機器の導入、IoTの活用などで気になるランニングコストも環境負荷も抑えています。
1.窓を極力少なくして気密性を高める
熱が出入りしやすい窓を減らすことで、気密・断熱性能をアップすることが可能に。「窓があると掃除も大変だし、窓自体が高価なのでコストダウンにも」と夫。
外観・内観とも壁面がすっきりしているのも魅力です。
2.断熱性の高いトリプルガラスの窓
2階リビングダイニングの大開口に用いられているのは、トリプルガラスのサッシ。断熱性能が担保されたメーカーの既製品で、長持ちするものを選択。窓の周りにも断熱材を注入して空気の出入りをなくすことで、結露も抑えられるそうです。
3.省エネ性の高い給湯器を床暖房に活用
給湯器には省エネ性の高い「エコワン」を採用。2階リビングダイニングは床暖房を導入していますが、家の断熱性が高いため真冬でも朝しか使わないこともあり、「ガス代は、高い月でも4000円台。以前よりずいぶん下がりました」（妻）。
4.冷暖房効率を下げないダクトレス換気を採用
換気の際に外の冷気が侵入するのを防ぐため、ヴェントサン（ドイツ製）のダクトレス換気システムを採用。「機械で給気と排気をコントロールして熱交換を少なくし、温度が下がるのを防ぎます」と語るのは、この家の設計を担当した渡辺裕貴さん。
5.ポストに内窓を設けて冷気の侵入を防止
「最初はいらないと思ったけど、つけてよかった」（夫）と効果を実感しているのが、ポストの内窓。
おもにリノベーションで断熱性を高めるために用いられる内窓ですが、「ポストからは、意外と風が入ってくるんです」と渡辺さん。
6.電気自動車の充電スペースを設置
仕事で日常的にクルマを使用する夫は、電気自動車の充電設備を設置。
「エコだし、ガソリンより断然安い。音が静かなので、朝早くても夜遅くてもご近所に気兼ねがいらない。もう元のクルマには戻れないです」（夫）。
7.スマート家電でこまめな節電が可能
IoTを活用したスマート家電を採用しているM邸。家電のほか照明や空調も音声やスマホのアプリで操作できるため、スイッチもリモコンもコードも不要。室内がすっきりするうえ、こまめな節電も可能となります。
間取り図と外観、周囲の環境について
●間取り図
五角形の敷地の1階には、水害対策にもなるドライブスルー式の駐車場を設置。メインとなる2階は外壁でプライバシーを守りつつテラスから光と風を取り込む台形のLDを中心に、キッチン、パントリー、ウォークンクローゼット、寝室を回遊できるようになっています。
●外観
3方向を道路に囲まれた五角形の敷地に建つM邸。外壁には窓がほとんどないのが特徴で、1階には通り抜けられる駐車場を設けることで、近くの川が氾濫した際でも水を受け流せるようになっています。
シュロチクが植えられた坪庭は、2階テラスとつながっています。
2階は裏動線が充実。開放的なLDとのメリハリも
開放的なリビングダイニングとは対照的に、キッチンは天井の高さを抑えた、落ち着いた空間。グレーの面材と赤いタイルの組み合わせが個性的です。「小窓があるので、抜けが感じられます」（妻）。
リビングダイニングからパントリーやウォークインクローゼットが配された裏動線と、ロフトを見たところ。裏動線は、引き戸を閉めれば隠せます。
ダイニングから奥の寝室につながるリビングを見たところ。壁にはフレキシブルボード、天井には吸音効果のあるケヤキの木毛セメント板を採用。コストを抑えつつ、個性的な雰囲気も生み出しています。
南東側の窓から朝日が入る寝室。コンパクトながら、天井高が4m近くあるため広がりが感じられます。伊東豊雄デザインの照明器具「マユハナ」が空間に浮かんでいるよう。
キッチンから寝室へとつながる裏動線。手前側はパントリー、奥はウォークインクローゼットで、収納量も豊富です。ブルーの床はエコ素材のマーモリウム（天然リノリウム）。
収納スペースとして活用しているロフト。「ものは多いほうですが、収納が充実しているのですっきり暮らせます」（夫）。
ロフトから見たリビングダイニング。床は同じ長さのフローリング材をそろえて張る「すだれ張り」で、部屋が台形のため斜め張りになっています。
照明を兼ねた手すりがおしゃれな階段。床には足触りがやわらかなカーペットを採用することで、上り下りの負担を軽減し、疲れにくくしています。
1階は間接照明が映える落ち着いた空間
ガラスで仕切られた浴室とトイレ、洗面、ラインドリーを一体化。夫妻はともにシャワー派のため、浴槽は掘り込み式として空間の広がりを確保し、手前にゆったりとしたシャワースペースを設けています。
右手には洗濯機と衣類乾燥機、下着などの収納スペースを確保。洗ってからしまうまでを1か所ですますことができ、家事効率がぐんとアップ。
バスルーム側から見た1階廊下。右手前にシューズクローゼットがあり、玄関とつながっています。
階段下を利用した、広いシューズクローゼット。ポストの内窓もここに設置されています。
夫の趣味のシューズコレクションや漫画などを収納している納戸。静かで集中できるので、妻がリモートワークの際に使用することもあるそう。
足元を照らす間接照明のやわらかな光が、落ち着いた印象を与える玄関。
「どちらからも入れることができ、バックする必要がないので、すごくラクです」（夫）という通り抜けられる駐車場。
たまに近所の人が通り抜けていくことがあるそうで、町の一部としても機能しているよう。水害時の対策として、壁面の色の濃い部分を高基礎としています。
この家のデータ＆使われている素材と設備
敷地面積／73.92�屐�22.40坪）
延床面積／81.73�屐�24.77坪）
1階／30.65�屐�9.29坪）
2階／51.08�屐�15.48坪）
用途地域／第1種住居地域
建ぺい率／70％
容積率／200％
構造／木造軸組工法
素材
［外部仕上げ］
屋根／ガルバリウム鋼板縦平葺き
外壁／ガルバリウム長尺平葺き
［内部仕上げ］
1階 床／塗装、カーペット 壁／塗装 天井／塗装、ケイカル板＋塗装
2階 床／床暖房対応フローリング、タイル、リノリウム、織物床タイル 壁／フレキシブルボード、タイル、塗装 天井／木毛セメント板＋塗装
ロフト 床／フローリング 壁／フレキシブルボード 天井／木毛セメント板＋塗装
設備
厨房機器／キッチンハウス
衛生機器／DURAVIT、TOTO
窓・サッシ／LIXIL
設計／渡辺裕貴、鹿内 健（Sデザインファーム）
