(写真:jessie/PIXTA)

ロシアによるウクライナ侵攻、アメリカの景気減速予想など世界では同時不況がくるのでは?などとささやかれ、日本国内に目を向けても、コロナ禍からくる経済打撃、また止まることのない値上げラッシュなど、常にお金の心配はつきまといます。そのような状況下で、将来が不安だと考える人も多いはず。

登録者数27万人のYouTubeチャンネル「ハック大学」を通じて、キャリアやマネーなどの情報を発信しているハック大学 ぺそ氏の著書『会社員のまま経済的自由を手に入れる ハック大学式 超現実的で超具体的なお金の増やし方』では、そんな将来不安を払拭すべく「自身の資産を洗い出し」「投資のスタートとゴールを決め」「ポートフォリオに従って投資をする」という3Stepで、会社員のみなさんが現実的に、具体的に資産を築く方法を紹介しています。

今回は同書の中から、実際に「年収350万円のBさん」をケースに、投資資金捻出の考え方を見ていくことにしましょう。

社会人4年目で資産形成まで余裕がないと考えるBさんの場合


・余裕がなくてもDC、iDeCoだけははじめる

Bさんは26歳の独身。年収は350万円で賃貸住宅に住んでいます。Bさんのお金の状況を書き出したバランスシートを見てみましょう。


Bさんは20代として平均的な年収水準となります。年収350万円だと手取り金額は280万円、月に使えるお金は23万〜24万円くらいになるでしょうか。家賃は8万〜9万円と考えると、残りは15万円くらい。資産形成のために十分なお金を捻出するのは、少し難しいかもしれません。

それでも資産形成をはじめたいと考えるなら、Bさんにはすぐにでもはじめてほしいことがあります。それは確定拠出年金(DC)です。勤めている会社が確定拠出年金制度を導入しているなら、会社が拠出する掛金に加えて加入者本人が掛金を上乗せして拠出するマッチング拠出を、導入していないなら個人型確定拠出年金(iDeCo)をはじめましょう。

なぜなら、DCのマッチング拠出額やiDeCoへの拠出額は全額、課税対象所得から差し引かれるからです。その分、年間の所得税を減らす、つまり手取り金額を増やすことができるのです。

DC、iDeCoは原則的に60歳まで資金を引き出すことができません。つまり、26歳のBさんなら、30年を超える長期にわたって積み立てを続ける仕組みだということです。

例えば、月5000円を拠出したとします。26歳から60歳まで34年間複利運用すると、年利3%なら資産は300万円を超えます。Bさんの年収でも、月5000円の拠出なら可能だと思いませんか?


DC、iDeCoは、国が推奨している資産形成のための制度です。リスクを抑えつつお金を増やせる制度を国がせっかくバックアップしてくれるのですから、本気で資産形成をしたいなら積極的に活用しましょう。

お金がある、ないはバランスシートで判断

DCにしても、iDeCoにしても、はじめると毎月拠出金が給与から天引きされるか、銀行口座から引き落とされることになります。引き落とされるとすぐに使えるお金ではなくなりますが、バランスシート上は消えているわけではありません。投資した株式、投資信託の欄の金額が増えることになります。資産として書き出す項目が変わっただけで、資産が減るわけではないのです。

仮に拠出したお金を毎月使ってしまっていたとしたら(それは“投資”ではなく“消費”です)いつまでも資産は増えませんが、DC、iDeCoをはじめると、拠出した分だけ資産が増えていくことになります。

経済的にゆとりがないと、銀行口座から現金が出ていくことをついネガティブにとらえがちですが、あなたのお金がなくなるわけではありません。
それどころか、長く続けることでお金も貯まるし、節税効果と運用益を得ることもできます。

現金がないとお金がないという感覚がある人は、おそらく、DC、iDeCoの節税効果をよく理解していない人が多いのではないでしょうか。

例えばBさんが、DCまたはiDeCoに毎月5000円拠出したとします。Bさんの年収から換算すると、1年間の節税効果は約9000円になります。60歳まで運用したとすると、34年間で30万6000円の節税です。

どうして節税になるのかというと、拠出した金額が課税対象所得から差し引かれるからです。1年間で拠出した総額6万円を、仮にメガバンクの定期預金に1年間預けたとします。利息はわずかに、1.2円(税引き前)です。節税9000円(+投資利益)と利息1.2円。どちらを選ぶかは明らかだと思います。

さらに、DC、iDeCoの運用益は税金の対象にならないため、まるまる利益として受け取ることができます。ちなみに、通常の運用益には20.315%(2022年12月末時点)の税金がかかります。

将来的に日々の資金繰りにすら困る自分の姿しか想像できないようなよほどの理由がない限り、活用してほしいというのが本音です。

無知ほどもったいないことはない

もう1つ加えていうのならば、DC、iDeCoにお金を拠出したからといって、必ずしも株式や債券などのリスク資産を選んで運用する必要はない、ということです。


もちろん拙著では、みなさんにリスク資産を活用した資産形成を推奨しているので、可能であれば株式や債券の投資信託で運用をしてもらいたいと考えています。

しかし、DC、iDeCoにお金を拠出しながら定期預金のような元本保証型の商品にお金を置いておくこともできるという点は、知っておいてください。つまり、可能な限りリスクを抑えて、節税メリットだけを享受することができる、ということなのです。

お金のことがよくわからない。そんな理由で、資産形成をはじめたくてもはじめられない 人がいるとしたら、そんなもったいない話はありません。私は、制度の無知は本当に残念なことだと考えています。

資産形成は、まずは確実性の高い投資からはじめるべき。会社員であるならDC、iDeCoだけはやることをおすすめします。

(ハック大学 ぺそ : ビジネス系YouTuber)