【辛酸なめ子の東京アラカルト#69】八重洲にお米への意識が高まる新施設がオープン
米は日本の心......そんな思いを再認識できる複合施設「YANMAR TOKYO」が東京・八重洲にオープンしました。
美容好きとしてはつい美顔器のヤーマンと混同してしまいそうになりますが、ヤンマーはディーゼルエンジンや農業機械のリーディングカンパニーです。
そのヤンマー東京ビルをリニューアルし、商業施設を併設。最近八重洲には「バスターミナル東京八重洲」がオープンしたり活気づいています。
ブランド米はボトルに入れられて販売
ヤエチカを通って「YANMAR TOKYO」のビルに入ると、ヤンマーが支援しているスポーツについての展示コーナーが。マリンスポーツからサッカーまで多岐にわたる協賛活動をしているのを知りました。選手はお米を食べてスポーツに励んでいるのでしょうか。
(吹き抜けの「HANASAKA SQUARE」は、この近辺のオフィスの人にとって貴重な休憩スポットになりそうです。写真は休日の風景です)
その横には「HANASAKA SQUARE」という椅子やテーブルが置かれた吹き抜けのスペースがあり、休憩できるようになっていました。
最近できたばかりの施設なのに、お弁当など食べてくつろいでいる人々が。まるで昔からここに通っているようなリラックスムードでした。
お米に関する施設なので、自然に食欲が活性化するのかもしれません。
地下には海苔弁のテイクアウトのお店「海苔弁 八重八」が入っています。羽釜で炊かれたお米や発酵にこだわった副菜など、1300円〜1500円という価格も納得のクオリティを感じさせます。
2階には小山薫堂氏監修のお米を楽しむイタリアンレストラン「ASTERISCO」もあり、米のポジティブスパイラルが。高級なお米を瓶詰めしてワインのように販売する「KOME-SHIN」の「RICE TERROIR」は、ありそうでなかったコンセプトです。
(瓶詰めの高給なお米が販売されている「KOME-SHIN」。おにぎりもさり気なく販売)
コシヒカリやヒノヒカリ、あきたこまちなどのブランド米がボトルに入れられて販売。一瓶1600円以上なので、特別な日のごはん用でしょうか......。
(酒粕アイスは二種類で350円。ノンアルコールと、アルコール入りにわかれています)
一階の路面店「SAKEICE Tokyo Shop」では日本酒入りのアイスが楽しめます。会社帰りに一杯のかわりに、日本酒アイスを食べるのもおしゃれです。
農家さんへの感謝と食欲が湧き上がる学びのコンテンツ
(「ヤンマー米ギャラリー」にはトラクターが展示。展示空間の内装には稲藁が使用されています)
この施設で意外に混んでいて人気だったのが「ヤンマー米ギャラリー」。米作りの歴史や手法について学べる施設です。
農家出身の創業者山岡孫吉が、農家さんの負担を軽くするため大正時代に開発した「動力籾すり機」がヤンマー技術発展のもとになったそうです。
(軽い衝撃を受けた未来の「スマートファーミング」のイメージ。自動運転で機械が作業してくれるようです)
そんな稲作の進化についての映像コーナーでは、耕運機やコンバインなどが登場し便利さを極めた先に、未来の「スマートファーミング」のイメージが。農家の人が座ってダブレットを操作し、快適に農作業していました。そんな時代が来たら、農家を志す人も増えて食料自給率も上がりそうです。
(問題に対して、解決策のサイコロを近付けると正解か不正解か判定されるコンテンツ。制限時間がハードです)
農家さんを悩ませる問題に対し解決策を時間内に答える「お米作りの知恵」クイズのコンテンツもありました。
例えば「害獣」に対しては「電気柵」、「日照り」に対しては「貯水池」など。あまりにもスピーディにゲームが進むので解決策の説明部分を読む時間がなく、また通って挑戦したくなるという、リピーターを生む仕掛けが。
「お米の料理MAP」というコンテンツでは、世界の珍しいお米料理の作り方が学べます。
(ブラジルのお米料理「フェジョアーダ」についての解説。肉がふんだんに煮込まれれています)
「フェジュアーダ」「グオパー」「カオニスオ マムアン」「ガルプチィ」など名称だけでは全く想像もつかない世界の米料理。日本人は自国の米に集中するあまり、他国の米事情についてあまり関心がなかったかもしれません。気付いたら閉館時間になってもたくさんの人がいて、米の訴求力を実感。
今回の「YANMAR TOKYO」もそうですが、最近、丸の内に負けない勢いで八重洲が洗練されていっているようです。しかも、八重洲にはただの商業施設ではない重要なテーマや実用性を持った施設が多い印象です。
アパレルや雑貨で散財しないかわりに知識が得られるストイックな施設、「YANMAR TOKYO」で心身が満たされました。
(子どもたちが描いた未来の米作りについての夢あふれる作品。「いねかりをするかかし」「未来は動物たちが稲をうえる」など癒されます)
辛酸なめ子
東京都生まれ、埼玉県育ち。漫画家、コラムニスト。武蔵野美術大学短期大学部デザイン科グラフィックデザイン専攻卒業。近著に、『ヌルラン』(太田出版)、『タピオカミルクティーで死にかけた土曜日の午後』(PHP研究所)『スピリチュアル系のトリセツ』(平凡社)『愛すべき音大生の生態』(PHP研究所)などがある。