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インスタグラムは「ショップ(Shop)」タブを廃止しようとしているが、ソーシャルアプリであるインスタグラムにとって「リール(Reels)」は最優先事項であり続けているようだ。これに対していくつかのeコマースブランドは、リール用にコンテンツを作成するのは自社のマーケティング戦略にますます大きな位置を占めていくと語る。2023年2月、インスタグラムはアプリのデザインを改め、ショップタブを完全に廃止する。しかし、同アプリのショートビデオ機能であるリールは廃止を免れた。コンテンツを作成するためのショートカットがアプリの下端に表示されるようになり、リールタブは右側に移動する。インスタグラムがオンラインショッピングと距離をおくという計画は、昨年の9月に最初に報じられたものだ。

TikTokの対抗策

インスタグラムが2020年8月に米国で開始したリールは、ユーザーがショート形式の動画を簡単に作れる機能で、ライバルのTikTokに直接狙いを付けたものだ。中国資本の競合他社であるTikTokと比べて、リールはまだメインストリームに成長していない。米モダンリテールと対談した各ブランドは、まだリールの使用とテストの早期段階だが、インスタグラムのリールコンテンツによって、より広範なリーチと、強いエンゲージメントが得られたと語っている。たとえばあるブランドは、インスタグラムのリールで「保存(Save)」指標において優れた結果を得たと報告している。また別のブランドは、自社が今年インスタグラムに投稿するコンテンツの少なくとも50%がリールになると語っている。インスタグラムはライバルのTikTokの成功にならって収益化を求めているように見えるが、ウォールストリートジャーナル(Wall Street Journal)によって明らかにされた企業の内部データによれば、インスタグラムのユーザーがリールを見るために費やす時間は、TikTokユーザーが毎日そのコンテンツを見て費やす時間より大幅に少ない。それでも、各ブランドはインスタグラムのサービスにいくつかの利点を見いだしはじめている。

リールのみでの販促

ハンドバッグブランドのダグネドーバー(Dagne Dover)は、2022年8月にリールの作成をはじめたが、チャネルをすぐにテストするのではなく、業界の反応がどうなるかを見ていたと語る。同社のマーケティング担当バイスプレジデントを務めるニコル・ウェイス氏は、同ブランドが最初に心配したのは、リールが「TikTokのコピー版」でしかないのかということだったと、米モダンリテールに語った。「正直なところ、当社にとってリールは、とりあえず成り行きを傍観していたいチャネルのひとつだった。業界がリールにどのように反応するか、ブランドがどのようにリールを活用するかを見たかった。しかし、2023年にリールが強く推されていることで意欲をかき立てられている。実際のところ、当社は2022年の後半に成功と業績が見えはじめていたからだ」と、同氏は語る。ダグネドーバーは、リールに継続的な投稿を開始してから、さらに成功するようになってきた。「当社はリールの強力な『保存』指標を見ている。インスタグラムのストーリー(Stories)と比べて、リールのほうが広いリーチがある。ホリデーシーズンを通して、もっともエンゲージメントを集めたコンテンツのいくつかはリールだった」と、ウェイス氏は語る。ダグネドーバーの「インディーバックパック(Indi Backpack)」に関するリールは、ホリデーシーズンでもっともエンゲージメントを集めた投稿のひとつで、2700を超える「いいね!」が付いたと、同氏は述べている。2023年に同社が行うインフルエンサーによる最初の大規模な販促は、同社のワークスタイルのトートバッグに関するキャンペーンで、1月と2月にリールのみで実施する。「我々がインフルエンサーに対して実際に依頼したコンテンツはリールだけだ」と、ウェイス氏は述べている。ウェイス氏は、このインフルエンサーによって投稿されたリールのコンテンツを、有料広告でテストし、可能であれば、投稿の効果をさらに拡大したいと考えている。

ミレニアル・Z世代からの支持

D2Cのアイウェア企業のアイバイダイレクト(Eyebuydirect)は、リールを早期に採用した企業のひとつで、2020年から使用しており、TikTokの人気を考えれば、インスタグラムがリールに新たに注力したのは驚くにあたらないと語る。同社のブランドディレクターを務めるジム・メルク氏は次のように述べている。「インスタグラムは少なくともこの1年間にわたってその方針を表明してきたので、驚くべきことではない。動画コンテンツのエンゲージメントはいつも非常に高い。当社のミレニアル世代やZ世代のオーディエンスはこれらのコンテンツに夢中だ。したがって、リールは、2023年に向けて、我々の活動の大きな部分を占めることになるだろう」。アイバイダイレクトは、リールを含め、同ブランドのコンテンツを作成するさまざまなインフルエンサーや、独立系の代理店と協力しているという。しかし同社は、独自のコンテンツも制作している。同ブランドは、買い物客が眼科医に行くのをためらう様子を描いたリールを投稿した。メルク氏は次のように述べている。「当社は、ソーシャルメディアプラットフォームのために、我々に可能なあらゆる方法でコンテンツを作成している。我々は常にコミュニティを成長させたいと考えている。そして、我々自身の言葉によるコンテンツのミックスを使用するのが、もっとも効果的だと考えている」。

変化に適応できる機動性

同氏は、ブランド側が、インスタグラムのようなプラットフォームが優先するどんなコンテンツ機能にも適用するよう迫られるのが、「2023年のデジタルマーケティングのやり方」だと語る。「変化を覚悟しないといけない。変化に適応できる機動性が必要だ。しかし、最終的にもっとも重要なのは、歴史的にも示されているように、ファンに愛されるような優れたコンテンツを出すことだ」と、同氏は付け加えている。各ブランドがリールで成功している一方、インスタグラムが今後、ユーザーに表示するコンテンツを決定するためのアルゴリズムを変更する可能性があることに、メルク氏は懸念を抱いている。これらのアルゴリズムが変更されると、アイバイダイレクトのようなブランドがオーガニックに多くのユーザーとリーチするために必要なことが制限される可能性があるためだ。メルク氏は、「我々は、自分たちが作り上げたコンテンツが有機的にフォロワーに表示されることを知りたいだけなのだ。それがみんなの願いだと思う」と話した。[原文:‘A huge part of what we do for 2023’: Some brands are making Reels a bigger part of their Instagram strategy] VIDHI CHOUDHARY(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)