自由が丘駅西口で再開発が計画されています。対象区域は昭和以来の古いビルも残る地区で、狭隘な道路も是正が図られます。

いわゆる「自由が丘」とは少し違う駅前

 東京都目黒区の自由が丘。東急東横線と大井町線の駅があり、「おしゃれでハイソな街」のイメージを持たれることが多い街です。しかし自由が丘駅の改札を一歩出ると、周辺はそのイメージとは異なり、狭い路地に居酒屋がひしめき合い、古い雑居ビルが立ち並ぶ、昭和の香りが漂う雑然とした賑わいがあります。


再開発が行われる自由が丘駅西口(乗りものニュース編集部撮影)。

 その昭和感を色濃く残すのが、駅西口北側の「自由が丘一丁目29番地区」です。この区画がいよいよ再開発の時を迎え、まったく新しい街に変化しようとしています。

「29番地区」はバスロータリーから北側の、女神通り・すずかけ通り・カトレア通りに囲まれた区画。

 西口からすぐ北に伸びる「女神通り」沿いには、宝石店「一誠堂」の雑居ビルをはじめ、昭和の街並みそのままのビルが長屋のように並んでいます。一誠堂はすでに閉店が決定し、「売り尽くしセール」の看板を掲げていました。

 29番地区の内部には十字に狭い路地があり、居酒屋の軒とビル裏のダクトや室外機が並ぶ、雑然とした空間があります。駅からその路地を覗き込むと、古びた鳥居が門のように立っています。脇にあった小さな祠「豊川稲荷大明神」は1934(昭和9)年、赤坂から分祀され、発展しつつあるこの街で、月3回の縁日の中心となっていたそうです。

「女神通り」の東横線側には商業ビル「自由が丘デパート」が伸びています。こちらも戦後すぐの1953(昭和28)年に開業し、鉄筋コンクリートのビルの所々には時代の年季が感じられます。

 この「自由が丘デパート」は再開発の対象区域からは外れており、昭和の生き証人のひとつとして、すずかけ通りを挟んでさらに北側にある「ひかり街」ともども、まだ生き続けることとなります。

「29番地区」再開発で街はどんな姿に?

「29番地区」の最終形態は、区画いっぱいを占める地上14階、地下3階の複合ビルです。

 ビルの完成予定は2025年度。5階までは商業施設、6階にはオフィス、その上階は住宅が入居することとなっています。

 街に訪れる変化として、歩行者専用通路の形成が挙げられます。自由が丘駅へ到達する道路はほぼすべてが狭隘で、路線バスもカトレア通りの道路幅員いっぱいを使って、そろそろと抜けていきます。歩行者とバス、タクシー、一般車、トラックが入り乱れるのが、自由が丘駅周辺ならではの風景でした。


カトレア通りを抜けて自由が丘駅へ向かう東急バス(乗りものニュース編集部撮影)。

 そこで28番地区にビルが建ち、敷地内の周辺空間が幅員2.6mの歩行者空間となることで、周囲の女神通り・すずかけ通り・カトレア通りでは歩車分離が図られ、互いに安心して移動できる空間となるのです。計画図ではビル1階の空間も「貫通通路」として、歩行者の動線を提供する役割を果たしています。

 さらに発展的計画として「自由が丘駅前西及び北地区地区計画」が都市計画決定されており、学園通りや東急大井町線までの区画が再開発の対象となっています。

 同様にカトレア通り・すずかけ通りは都市計画道路として計画決定されており、とくにカトレア通りは都の優先整備路線「補助127号線」として、目黒通りに直結する計画です。実現すれば、自由が丘駅への自動車アクセスは飛躍的に向上し、バスが人混みを避けながら延々と隘路を抜けていく状況も、改善が図られそうです。