「Stable Diffusion」などの画像生成AIを手軽に使える環境が急速に整いつつありますが、インターネット上では「画像生成AIがアーティストの仕事を奪ってしまうのではないか」という議論も起きています。そんな中、アーティストのヴィタリー・S・アレクシウス氏が「画像生成AIがいかにアーティストの表現活動に役立つか」を解説しています。

How to make money as an artist with a personal Stable Diffusion AI - a tutorial from a pro! : StableDiffusion

https://www.reddit.com/r/StableDiffusion/comments/yhjovv/

2022年8月に画像生成AI「Stable Diffusion」が一般公開されて以降、有志によってStable Diffusionを手軽に扱う方法が確立されつつあります。しかし、アレクシウス氏と交友関係にあるアーティストの中には「画像生成AIに仕事を奪われてしまうのではないか」と考えている人もいるとのこと。アレクシウス氏は「画像生成AIがどれだけ発展しても、それを使いこなすには熟練した技術が必要です。画像生成AIはアーティストに取って代わるものではありません。それどころか、アーティストは、画像生成AIを活用することで新たな領域に到達できます」と述べ、画像生成AIに関する誤解について1つ1つ反論しています。

誤解その1:

画像生成AIはアーティストの画風を盗み、アーティストを超える

反論:

人気を得る優れた作品とは、人々に何かを感じさせるものであり、その背後には燃えるようなアイデアがあります。「アイデア」が無ければ作品は空っぽの殻に過ぎません。例えば、世の中には膨大な数の漫画作品が存在しますが、成功している漫画は読者の心の琴線に触れるものであり、漫画とは似ても似つかぬものではありません。

誤解その2:

あなた(アレクシウス氏)の人気はすでに確立されているから、(AIを活用した作品でも)簡単に人気を獲得できるのだ

反論:

私の作品は、ファンの後押しを必要としません。実際に、画像生成AIを用いて制作した作品(以下の埋め込み)をRedditに投稿した結果、私のRedditにおけるフォロワーは10人ほどしかいなかったにもかかわらず6万回以上の閲覧回数と2万件以上の高評価を獲得しました。既存のファンコミュニティを活用せずにこれだけの人気を得た理由は、私が他のアーティストと違って画像生成AIを恐れておらず、AIの創造性を私のイラストレーターとしての技術を拡大するものとして受け入れていることにあります。

誤解その3:

(画像生成AIが普及すると)アーティストは作画を諦め、AIへのプロンプト入力や編集にのみ力を注ぐようになる

反論

「デッサン」「骨格」「パース」「ライティング」「AI関連知識」に精通することが勝利への道筋です。Stable Diffusionは(求める画像を生成するように)誘導された場合に最も良く機能します。漠然とプロンプトを入力するだけではランダムな画像ばかりが生成され、継続的なストーリーを伝えることやアイデアを表現するためにはまったく役立ちません。熟練したアーティストである私は、「スケッチを描画→プロンプトを入力して画像生成→img2img→修正→img2img」というプロセスを実行することで、ランダムなイラストを1000回生成するよりも圧倒的に素早く目的の画像を生成できます。技術の変化に伴って、最適な道筋も変化するのです。

誤解その4:

画像生成AIが普及すると、アーティストが収入を得にくくなる

反論:

人間には可能で、画像生成AIには不可能な「フリーランスで稼ぐためのコツ」があります。

・クライアントとのコネクションを築く

有名な作家やミュージシャン、プロデューサーなどと関係を築き、作品が必要かどうか尋ねるとことで、カバーアートや漫画を描くことができます。

・ファンとのコネクションを築く

一日中画面を見つめて座っていてはダメです。世界はチャンスで満ちており、素晴らしい人々があなたを待っています。「オリジナルシリーズを描く」「イラストを描く」「ファンベースを構築する」「サイン入りの作品をオンラインで販売する」「ファンとコミュニケーションを取る」「ファンと協力してプロジェクトを実行する」といった活動を実行しましょう。

・活動をインターネットに限定しない

アートギャラリーやショップ、即売会、漫画屋、展覧会、個展など、オーナーが作品展示を許可している場所ならどこでも作品を販売できます。もしあなたの作品に観客を楽しませるようなアイデアが含まれるのならば、その作品はどんな場所でも売れるでしょう。私はこれまでに数多くの国で作品を販売してきました。その中には、私のことを一切知らない人も含まれていました。

・最新技術を駆使して作品を素早く制作する

時間は常にアーティストの敵ですが、技術の進歩によって私はそれを克服しました。20年前にPhotoshopが登場した際は多くのアーティストがPhotoshopを敬遠していましたが、私はPhotoshopの使い方を学んで多くの仕事を得ました。また、2016年当時は3次元フラクタルに目を向ける人はほとんどいませんでしたが、私は3次元フラクタルについて学び、終末的な風景を数分で生成できるようになりました。そして、今はAIの時代です。画像生成AIについて学び、それを使って新たなプロジェクトを生み出したり、ストーリーを物語ったり、アニメーションを制作したりすることが唯一の合理的な選択です。



アレクシウス氏は上記のように語った上で「前に進むしかありません!」と述べ、時代の変化に直面しているアーティストたちを激励しています。