旅館・ホテル業界 調査時点別業況

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「旅館・ホテル業界」 動向調査(2022年度業績見通し)

 コロナ禍で長く我慢を強いられてきた旅館・ホテル業界で、業績回復への期待感が高まっている。過去1年間に帝国データバンクが調査した全国の旅館・ホテル業のうち、直近の業況が判明した約800社を集計した結果、4割超の企業では前年同期に比べ「増収基調」であることが分かった。コロナ禍で訪日客も含めた旅行需要が消失した2020〜21年度に比べ、増収割合は大幅に増加した。このうち、ホテル業態での増収は46%、旅館業態では40%と、ホテル業態での増収が目立った。

 このほか、「横ばい」は49%と最も高いものの前年同期からは縮小、「減収」はコロナ禍前の2019年度以来3年ぶりに1割を下回った。旅館・ホテル業界は総じて、業況悪化が底打ちし回復基調に転じている。

 コロナの感染状況に業績が左右され続けてきた旅館・ホテル業界では、2020年4月時点では増収見通しが13%、21年同時点は5%にとどまるなど、各企業で非常に厳しい見通しを強いられてきた。しかし、今年度に入り県民割やブロック割など、自治体主導の宿泊支援がスタートしたことで「宿泊稼働は前期より改善されている」など、観光需要が持ち直しつつある企業が多くみられた。こうしたなかで、「Go To トラベル」以来およそ1年10カ月ぶりとなる全国規模の「旅行支援」がスタート、10月には新型コロナウイルスの水際対策が大幅に緩和されたことも重なって、今年度以降の業況は「増収」など先行き好転を見込む企業が急増したとみられる。

 この結果、10月時点までの各社業績推移を基にした2022年度通期の旅館・ホテル市場(事業者売上高ベース)は、前年度比1割増の3.1兆円前後が予想される。21年度の2兆8509億円(0.5%増)に続き、2年連続で前年度を上回る見通しとなる。前年度比40%超減と過去に前例のない落ち込みを記録した20年度(2兆8360億円)をボトムに、市場も回復傾向へと向かっている。

雇用面を含めた受け入れ体制の整備など、需要取り込みへの取り組み急務

 水際対策大幅緩和によるインバウンド(訪日旅行客)増加を受け、期待感が先行するものの業績面では明るい兆しが見えている。特に国内観光では、全国旅行支援などキャンペーン利用客が多いことから「宿泊プランを割引することなく集客できる」といった声もあがっている。

 一方で、本命の中国人観光客は現在も強い水際対策の影響で少数にとどまるなど、インバウンド数はコロナ禍前を下回るほか、「割引終了後を考えると喜んでばかりはいられない」など、来年以降の需要獲得に向けた課題が残る。また、今年9月時点で旅館・ホテル業界の6割超が正社員・非正規社員ともに「不足している」と回答、人材派遣会社からは「引き合いは旺盛だが、派遣人材の獲得競争は熾烈」といった声もあがり、人手不足問題が顕在化している。雇用面を含めた受け入れ体制の整備など、持続的な需要回復に向けた取り組みが引き続き求められる。