JALには、ひとりのパイロットがボーイング777と787のふたつの型式を、同時期に乗務できるパイロットが16人います。ふたつの型式をどのように乗りわけ、それをどう受け止めているのでしょうか。

最近でも「MFF」のメリットフル発揮!

 JAL(日本航空)は2019年、ひとりのパイロットがボーイング777と787の2型式を同時期に乗務できる制度「MFF(Mixed Fleet Flying)」を、国内で先んじて導入しました。取材時点では同社で「MFF」を担当できるパイロットは16人。彼らはどのように2つの型式を“乗り分け”しているのでしょうか。


JALのボーイング787と777(松 稔生撮影)。

 通常、旅客機のパイロットは手順やシステム、操縦感覚の差異を排除するべく、同時期に複数の型式をまたいで乗務することはできません。ただし777と787は操縦操作や手順の共通化が図られており、そのルックスこそ異なれど、“極めて類似した型式”として国から認可を取得。これに準拠する形で、2型式のMFF制度が国内で実用化されることになりました。

 今回取材に応じてくれたJALの古川大心機長は、旅客機の型式ごとの共通性の研究をしたのち、JALのMFF導入にも携わり、2021年から実際にMFF制度で2機種に自ら乗務しています。この制度の導入により「パイロットの配置を柔軟に割り当てられる」(古川機長)といったメリットがあるとのことです。

 この柔軟性が活かされたのは、古川機長の取材時の乗務スケジュールでした。

「JALでMFFを担当するパイロットは777と787を1か月ごとに乗り換えます。実は私も、今月787を担当するはずだったのですが、事業計画の都合上、今月も引き続き777に乗ることになりました。使いやすい制度だと思います」

「1か月おきに違う型式へ」は実際どうなのか

 ただ古川機長によると、社内の規定や通達のうえでは、実のところ毎日のように乗り換えができるとも。

「1勤務において1機種という決まりなので、休みを取れば(もう一つの型式に)乗り換えられるんです。たとえばロンドンへ777に乗務し、帰りは787に乗務するというのも、通達上は可能です(長距離国際線では到着後休みを挟むため)」

 そして、MFFを担当するパイロットにとって、777と787の“1か月乗り換え”はどのような感覚なのでしょうか。古川機長は「ちょっと意外だと思うんですが……」と前置きの上、次のように話します。


JALの古川大心機長(松 稔生撮影)。

「自分を含めてですが、混乗している同僚から話を聞いても、できるだけ頻繁に乗り換えたいというのが、いまのところ多くあがっている感想です。常に触っているものは、半年とか1年ごとに使うものよりも、使い心地がいいですよね。スマートフォンとiPadみたいなもので、ちょっとした差はありますけれど、より慣れます。そんなイメージが近いのではないかと思います」(古川機長)

 JALでも「パイロットのなかでも、やりたいと希望する人は多いのではないでしょうか」というMFF制度。担当するには、両型式の資格を維持するための訓練を実施するほか、どちらかの型式で審査不合格となった場合は両型式を乗務不可とするなど、より高いレベルを求めています。

「MFFを担当するまで、787で10年弱乗務してきました。787は長年、国際線定期便がメインだったのですが、MFF制度で777を担当できるようになったとき、久しぶりに羽田〜伊丹線、新千歳線といった国内線に乗務しました。ある意味とても新鮮だったことを覚えています」。古川機長は、MFF乗員ならではともいえるエピソードを話します。