近年、100席以上を配することのできるリージョナル・ジェットが相次いで誕生しています。その機種がエアバス「A220」とエンブラエル「E195-E2」です。これらにはどのような差があるのでしょうか。

新参「エアバス」vs老舗「エンブラエル」

 地方空港などを結ぶリージョナル・ジェットは、これまで大まかにいえば「100席程度までの小型のジェット旅客機」を指していました。しかし近年、この定義よりも大きなリージョナル・ジェットが次々誕生しています。100席以上を配することができる、エアバスA220とエンブラエルE195-E2が登場したのです。ライバルとなる2機種の競争は、世界2大旅客機メーカーとして対比される「エアバス対ボーイング」とは異なる、2つの見どころがあります。


エンブラエルE195-E2「プロフィットハンター」(画像:エンブラエル)。

 ひとつ目は、開発する機体の規模が異なるフィールドでセールスを繰り広げてきた2社が、ライバル関係となったことです。

 1990年代に認知されるようになったリージョナル・ジェットの乗客数は、大雑把に言って、「50人以上100人以下」とされてきました。

 これまでのエアバスは100席以上のサイズの旅客機を主力商品としており、リージョナル・ジェットを開発したことはありませんでした。そのようななか2018年に初めて打ち出されたのが、A220。ただ、同モデルは、純粋なエアバス機とは異なる開発背景を持ちます。

 この機はもともと、エンブラエルのかつてのライバル、ボンバルディアが設計したCシリーズというモデルでしたが、エアバスが提携したことでA220と名称が変わった機体なのです。

 一方のエンブラエルは、今のE2シリーズにつながるERJシリーズを長年主力商品として手掛けてきた、いわば、生粋のリージョナル機メーカーでもあります。ここに、エアバスが参入してきたことで、元来開発する機体の規模が異なっていたふたつの航空機メーカーが、ライバル関係になったのです。

 2つ目は、客席数がそれぞれのメーカーにとって、「最小機」と「最大機」となることです。

「最小機」と「最大機」がセールスにどう関係?

 航空会社は、胴体の長さを変えた客席数の異なる機体をいくつか使い分けをする傾向にあります。これは、ネットワークを維持しつつ、極力空席が少なくなるようにするための工夫のひとつです。ただし、全く違う機種を導入するよりも、操縦室の仕様などは同じにして、機種移行訓練などの費用を減らしたいという思惑もあります。

 これに基づいて見ると、A220は小さいサイズのサブタイプ220-100が100人から120人乗り。大きなサブタイプの220-200は120人から150人乗りになります。エアバスにとってはA220より客席数の少ない機種はなく、「最小のモデル」になります。対するE195-E2は120人乗りから146人乗りで、この客席数はエンブラエルにとって「最大のモデル」の機体になります。

 航空会社が使う機種を決める際は、いくつもの路線で運ぶ旅客数を考えなければなりません。A220とE195-E2より客席数が上の路線が多ければA220がマッチし、下の路線が多数なら、エンブラエルの兄弟機E190-E2(106〜114席)をはじめとする、より小さなバリエーションを持つ、E195-E2の使い勝手が良くなります。


エアバスA220(画像:エアバス)。

 A220とE195-E2のレースは、どのように展開されるでしょう。

 リージョナル機市場の“新規参入者”であるエアバスは、航空会社が事業規模の拡大を目論むなら、エアバスのブランド力を持ちながら、A319(110〜140席級)やA320(160〜180席級)よりは路線展開上有利になるとアピールするでしょう。一方、“老舗”のエンブラエルは、これまで培ってきたリージョナル航空会社とのコネクションを一層活用するでしょう。

一回り小さいコミューター路線のリージョナル化を推し進め、それにはE190-E2が最適とアピールする可能性もあり得ます。A220もE195-E2も、エンジンは同じ燃費に優れたPW1000Gシリーズを使うだけに、自社の製品レパートリーも絡めた拡張性を打ち出していくと見られます。

 A220対E195-E2は、かつてのエアバスA380対ボーイング747の超大型機対決より地味かもしれませんが、リージョナル機市場の将来を占う意味で、見逃せないライバル関係といえそうです。