「収納をたくさんつくれば、部屋が片づくというものではありません」。そう語るのは、一級建築士のしかまのりこさん。『狭い部屋でも快適に暮らすための家具配置のルール』(彩図社刊)の著書もあるしかまさんが、確実に機能する収納スペースをつくるための、4つのポイントを解説。3Dの間取りを使ってわかりやすく説明します。

おしゃれで片づけやすい収納にするポイントは4つ!

散らからない部屋にしたい。おしゃれに見える収納を実現したい。そう思っている人に知ってほしい「収納」のポイントがあります。

それは以下の4つ。これをチェックし実践すれば、多少狭い部屋でもスッキリと暮らすことができます。

1.部屋の空間ごとに「収納」はあるか?
2.動線上に設置されているか?
3.「収納」の数はたりているか?
4.扉つきとなしの割合は適切か?

では、それぞれについて詳しく見ていきましょう。

 

1.部屋の空間ごとに「収納」はあるか?

部屋ごと「収納」を、にざっくりと設置する方が多いと思います。筆者がおすすめしたいのは、部屋ごとという考え方ではなく、部屋の「空間」ごとに「収納」をつくる方法です。

たとえばLDKの場合、「くつろぐ空間」のそばには、ゲーム機やDVDなどの「収納」を、そして食事や作業をする「食事・作業空間」のそばにはカトラリーや書類の「収納」というように、「空間」ごとに「収納」をつくります。

「空間」ごとに「収納」をつくることで、ものが入り混じりにくく、散らかりにくく、片づけやすい部屋になります。

 

2.動線上に設置されているか?

動線とは人が動く軌跡や、経路のことです。この動線が短いと、歩く距離が減るので、家事などの作業がラクになります。

同じように、ラクに部屋を片づけたい場合は、この動線に沿って「収納」を配置します。

たとえばこちらの間取りですが、廊下、洗面所、キッチン、リビングなど、生活のために家の中を行き来する経路、つまり矢印の動線に沿って「収納」が設置されています。そのため、ムダな動作が減り、ものの片づけ作業がスムーズにできるのです。

 

3.「収納」の数はたりているか?

物理的に「収納」がたりない場合も、ものが片づかなくなります。では、どのくらい「収納」があればよいのでしょうか?

「収納」がたりているかそうでないかは、一般的に「収納率」で判断します。

 

「収納率」とは住宅の延床面積に対する「収納部分」の面積の比率のことです。この「収納部分」とは、押入れやクローゼットなど、床から天井までが「収納」空間のことで、洗面台やカップボードなど高さの限られた収納スペースは除きます。

理想的な「収納率」の目安は戸建ての場合12〜15%程度、マンションの場合8%以上といわれています。

現在の住まい、または計画中の住まいの「収納率」を、一度計算してみてください。この数値より低い場合は、収納家具を増やすなどの対策が必要になります。

 

2階建ての戸建て住宅を例に説明します。こちらは1階間取り。延床面積(1階と2階を合わせた床面積)に対して10.54%分の収納があります。

 

そしてこちらは2階の間取り。延床面積に対して12.26%分の収納があります。

ですから建物全体の「収納率」は、この2つを合算した22.80%になります。バランスよく、かなりたっぷりの「収納」が設置されていることがわかると思います。

実際には、さらにカップボードやつり戸棚もありますので、ほぼ収納に困ることはない間取りです。

4.扉つきとなしの割合は適切か?

「収納」のタイプは、大きく分けて2種類あることをご存じでしょうか。

ひとつは扉や引き出しがついた「隠す収納」、そしてもうひとつは扉や引き出しがない「見せる収納」です。

扉がついた「隠す収納」は、視覚的雑多感をなくすことができる一方で、「開けてから取り出す」「開けてからしまう」など、ものの出し入れが2つのアクションになるので、少し不便になりがちです。

 

扉がなく、「見せる収納」は、「取り出す」「しまう」など、ものの出し入れが1つのアクションで完了するので、とても便利な一方で、視覚的雑多感が出てしまいがちです。

そこで、この2つの「収納タイプ」の割合が、住まいを計画するうえで重要になってきます。

 

 

一般的に、インテリア性を重視して、スッキリした空間にするには「持ち物の80%を隠し、20%は見せる」ようにします。つまり「収納」の8割は扉つきの「隠す収納」を、残りの2割の「収納」は扉のない「見せる収納」にします。

このように「収納タイプ」の割合を調節することで、視覚的な雑多感を減らしながらも取り出しやすい「収納計画」が実現します。

「収納」は住まいを計画するうえで、もっとも難しいもののひとつです。しっかり計画する、または収納スペースの見直しなどをして、片づきやすい住まいを実現してください。