53歳の漫画家・古泉智浩さん。古泉さん夫婦と母(おばあちゃん)、里子から養子縁組した小2の長男・うーちゃん、同じく養子になった4歳の長女・ぽん子ちゃんという家族5人で暮らしています。今回は、夏休みの宿題を終わらせないうーちゃんの新学期についてのお話です。

宿題を放置した挙げ句、部屋に籠城したうーちゃん<古泉智浩の養子縁組やってみた98>

小2の養子の男の子、うーちゃんの夏休みが終わりました。どれほど口を酸っぱくして「宿題やらないの?」と聞いても一向に手を動かさず、終わらせないままとうとう9月1日を迎えました。
一度痛い目を見た方が身に染みてわかるのではないかと静観していたところ、学校を休むと言い出しました。

「そんなのはダメ。やらないのを選んだのは自分なんだから、宿題やらない子がどんな目に合うのか味わっておいで」
「うわーーーーーん!」

玄関で泣き出して自室に駆け込むと、ドアの前にキャビネットを置いてドアが開かないようにしました。こんなことには知恵が回る。僕が言うと強くしかりつけてしまうので、ママにまかせることにしました。

「いつまでも閉じこもっていられないでしょ。出ておいで」
優しく声をかけるママでしたが、まったく出てこようとしないうーちゃんに
「早く出てきなさい!」
ドンドンとドアを叩きます。これでは僕がやってもあまり変わりません。

 

●天の岩戸が開いた!その機にうーちゃんを連れ出します

天の岩戸のような状況で、これ以上強く言ってもなんの効果もないと判断して、リビングに引き上げて放置することにしました。4歳の養子のぽん子ちゃんの登園の支度もあります。そうしてほかの作業をしていると、ドアが開きました。

うーちゃんは学校に行きたくないと言いますが、ここで休んだら翌日はもっと行くのが困難になってそのまま不登校などになったら最悪です。ここは鬼になってでも無理矢理行かせるしかありません。
宿題以外の持ちものを全部用意してランドセルにつめて、うーちゃんに無理矢理靴下を履かせると、履かせた先から脱ぎます。

脅したりすかしたししながら靴下を履かせると、次は靴を履くのを嫌がったので、体を抱きかかえて荷物と靴はママに持ってもらって車に乗せました。
僕はうーちゃんを抱きかかえたままで、ママに運転をしてもらいました。車の中で発狂してドアをあけて降りたりしたら大変です。

車の中で小学校から電話がありました。担任の先生です。もうすぐ全校朝会が始まるけれど、現れないので心配して連絡をくださいました。
「今、車で向かっているところです」

●なんとか学校にたどり着いたうーちゃん

学校に到着すると、まだ生徒の玄関は開いていました。車から抱きかかえたまま玄関に運ぶと、奥に先生が待っていてくださいました。
先生の前にうーちゃんを下ろすと、キョトンとした無の表情でした。状況を処理しきれないのでしょうか。

上履きを持っていくのを忘れてしまい、スリッパを履かせてもらって先生に連れられて行きました。
上履きはもう小さくなっていたので新しいのを買う必要があったことを忘れていました。僕はぽん子ちゃんを保育園に連れて行って、その帰りに町の靴屋さんで1cm大きなサイズのものを買いました。名前を書いてママが車で学校に持って行きました。

朝から猛烈に疲れました。うーちゃんの自室は散らかしてゴミためのようにするのと、立てこもることにしか役立っていません。夜は自室ではなくおばあちゃんの部屋で寝ています。

●なにがなんでも宿題を終わらせなきゃ!やらない言い訳をするうーちゃんは…?

学校は行ってしまえばなんてこともなかったようで、ほかにも宿題をしていないお友達がいたそうです。その日の夜、夕食後、もうなにがなんでも宿題をやらせることにしました。
と言ってもいちばん大変なワークはもうほとんど終わっています。ワークは一回丸つけをして、間違っていたところを直していないのと、夏休みの終わりに夏休みを振り返る部分が残っているだけです。

「絶対になにがなんでも終わらすよ。なんかごちゃごちゃ言い訳したり屁理屈を言っているといつまでも終わらなくてパパにずっとやれやれ言われるよ。どうすんの終わらすの? 終わらせないの?」
「終わらす」
うーちゃんが渋々言いました。
「はい、じゃあここやって、おばあちゃんテレビつけないで、うーちゃんが宿題しているから」
うーちゃんはテレビがついているとテレビに見入ってすべての行動が停止します。

ワークが終わると、オクラの観察日記です。日記と言ってもオクラの成長ぶりを文章と絵で1枚描くだけです。
「もう夜だからできない」
うーちゃんが早速言い訳しました。
「持って来るからできるよ」

外にあるオクラの鉢をリビングに持ち込んでiPadで写真を撮ってそれを見て絵を描きました。色が鮮やかでとても上手でした。すぐ終わりました。
これをしないせいで8月の後半はずっと、やれやれ言われ続けていたのです。

●うーちゃんにかわいそうなことをした。古泉さんの後悔

最後は自由課題です。自由と言っても学校で指定されたキットを買っていました。石鹸を溶かして型に入れて、固めて削って水晶みたいなものをつくります。色もつけられます。
結局ほとんど僕がしましたが、うーちゃんは溶かした石鹸に色をつけたり、固まったものを削ったりしました。

冷蔵庫で冷やして固めるまで15分かかるので、その間にうーちゃんは1行日記のやってないところを書いて、僕とぽん子ちゃんはお風呂に入りました。そうして何本かできた水晶みたいなのを、台座に立てて最終的に固めます。
もう22時を過ぎていたので、翌朝まで放置することにしました。

まだ小2の子に自発的にやることを期待するのが間違っていたのだろうか、もっと無理矢理やらせておけばパニックを招かずにすんだのだろうか、かわいそうな結果を招いてしまったと後悔しました。

 

●自由研究を終えてやっとすべての宿題がそろった!

翌朝冷蔵庫で固めた台座を型から取り出すのをうーちゃんにやってごらんと言いました。
「パパがやって」
最後の最後くらいは自分でやった方がいいと強く勧めました。

恐る恐るうーちゃんが型から取り出すと、台座に4本の色違いの水晶のようなものが立っていて、なかなかの出来栄えでした。

9月2日は宿題を全部持って集団登校にも間に合いました。僕自身は自慢みたいで恐縮ですが、宿題は7月中に終わらすタイプで、今もフリーランスで締切を守る方です。だけど学校は大嫌いです。