本来は梅雨の時期が、まるで灼熱地獄のような暑さに

写真拡大

日本が内憂外患に襲われている。内憂は、異常気象による電力消費量ならびに熱中症の急増と、下火になったはずの新型コロナウイルス感染者数の増加だ。外患はロシアによる「サハリン2」の譲渡命令。いずれも国民生活に直結しているだけに、これからどうなるのか、心配が尽きない。

オミクロン株「BA.5」が増える

東京都心では2022年7月3日現在まで9日連続の猛暑日となり、過去最長の記録を更新した。熱中症による救急搬送は6月27〜30日に計929件。東京消防庁によると、6月全体では計1517件。前年同月の約6倍だ。

総務省消防庁によると、6月20〜26日の1週間に熱中症で救急搬送された人は、全国で4551人。前週の3.4倍に急増した。6月にもかかわらず、最高気温が40度を超えた日もあるという異常気象の結果だ。

エアコンの消費も急増し、電力消費量が増えて供給限界に近付いている。猛暑は今週、いったん落ち着くとされているが、温暖化の基調は変わらないため先々不安が募る。

もうひとつ心配なのがコロナ感染者数の増加だ。

国内の感染者数は6月21日から再び増え始めた。朝日新聞によると、同月末時点で、西日本の8県が前週の1.5倍以上。東京、大阪が1.4倍台。

特に注目されるのは、感染が拡大しやすいとされているオミクロン株の一つ「BA.5」が増えていること。これまで主流だった「BA.2」から置き換わりつつある。同紙は「7月後半には半数を占める」という専門家の予想を紹介している。

とりわけ東京都の感染者急増が目立つ。5日は新たに5302人の感染が確認された。前の週の同じ曜日から2倍以上になった。感染者が 5000人を超えるのは、4月28日以来だ。一部では「第7波」を心配する声も出始めている。

電力不安は一段と深刻に

外患は、ロシアによる「サハリン2」の譲渡命令だ。プーチン大統領は6月30日、突然運営を、新たに設立するロシア企業に譲渡するよう命令する大統領令に署名した。

「サハリン2」は、ロシア極東の液化天然ガス(LNG)、石油開発事業。出資比率はロシアが約50%、英のシェルが約27.5%、三井物産が12.5%、三菱商事が10%。すでにシェルはロシアのウクライナ侵攻後に撤退を決めているため、今回の大統領令で甚大な影響を受ける可能性があるのは日本だ。

「サハリン2」は日本のLNG輸入量の約1割を占める。権益を失えば、「電力の供給不安は一段と深刻になる」(日経新聞)。

とりわけ日本の電力・ガス会社への打撃が大きい。原油高、円安などで値上げされてきた電気代、諸物価などがさらに上がることも予想されている。そうなると、関連企業や産業活動全般、国民生活にも影響が広がる。

また、日本が30%を出資する「サハリン1」の動向も気になる。

日本は欧米と協調して多くのロシア制裁に踏み切っている。しかし、これまで「サハリン1」「サハリン2」については、「自国で権益を有し、長期かつ安価なエネルギーの安定供給源として保有しており、国民生活や事業活動にとって重要であることから、今後もその権益を保有していく方針です」(萩生田光一経産相)と言明してきた。それほど、日本にとって重要な権益だった。

しかし、ロシア側は今回、岸田文雄首相がG7などで、ロシアに対し極めて厳しい姿勢を表明していたことに反発。報復として、大統領令の署名に踏み切り、日本に揺さぶりをかけていると見られている。

「7月上旬開始」遅れる可能性

急激な熱中症の増加と、コロナの再拡大は、医療ひっ迫にもつながりかねない。コロナ予防にはマスクが重要だが、熱中症になりやすくなる可能性もある。小池百合子都知事は1日の定例会見で、「熱中症に十分注意し、場面に応じた正しいマスク着用をお願いしたい」と訴えた。

コロナ再拡大のあおりを受けるかもしれないのが、「全国旅行支援」だ。政府は、コロナの感染状況が落ち着けば新たな観光需要喚起策「全国旅行支援」を7月前半にスタートさせるとしていた。

しかし、時事通信によると、木原誠二官房副長官は7月1日の記者会見で、全国旅行支援に関し、「もう少し感染状況を見守りたい。特に期限は区切っていない」と述べ、「7月上旬開始」が遅れる可能性も示唆した。