無添加の表示を見て購入していた消費者も多いと言えます。写真はイメージ(maroke / PIXTA)

「食品を選ぶときには、無添加のものや、保存料不使用のものを選んでいる」という方は多いのではないでしょうか?しかし、2022年4月からそれらの言葉が食品から消えることになります。

「令和版 食べるなら、どっち!?」の著者で科学ジャーナリストの渡辺雄二さんが、その理由や注意点を解説します。

食品から「無添加」や「保存料不使用」表示が消える?

スーパーやコンビニなどで売られている食品の中には「無添加」あるいは「保存料不使用」「人工甘味料不使用」などといった表示がありますが、今後は徐々に減っていくことになるでしょう。消費者庁が「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」を策定し、これらの表示を規制していくことを決めたからです。

ガイドラインは今年4月から適用され、移行期間は2年間のため、再来年の4月からはこうした表示はなくなることになります。

「添加物をとりたくない」「添加物の安全性は不確か」という人の中には、「無添加」「○○不使用」などの表示を見て製品を選択していた人もいると思いますが、それができなくなります。どうしてこんなことになったのでしょうか?

こうした表示には確かに問題がありました。「無添加」との表示を見て、「添加物は使っていないんだ」と思って買って見ると、「無添加」という文字の下に小さく「合成着色料、合成保存料」などと書かれていることが珍しくありません。つまり、それらの添加物は使っていないが、ほかの添加物は使っているということであり、決して無添加ではないのです。

またインスタントラーメンやカップラーメンで、「保存料不使用」といった表示もありましたが、これらは乾燥させてあり保存が効くので、本来保存料は必要ないのです。本来必要ないのにこのように表示するのは、優れた製品のように見せかけるものです。いずれも消費者を欺いていると言えるでしょう。

こうした問題はずっとくすぶっていたのですが、これが社会的な問題になった事件があります。それはイーストフードと乳化剤の「不使用表示」の是非をめぐって、大手製パン会社の間で繰り広げられた激しいバトルです。

このバトルは新聞でも取り上げられて問題となり、消費者庁は2021年3月に「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン検討会」を設置し、「無添加」や「○○不使用」などについて、議論が行われました。そして今年の3月30日付けで「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」が公表されたのです。

「添加物は健康を損なうおそれがない」は本当!?

同ガイドラインでは、食品表示法の禁止事項に該当する恐れがある表示として、「何を添加していないか不明確な、単なる『無添加』の表示」や「無添加あるいは不使用を健康や安全の用語と関連付ける表示」、「無添加あるいは不使用の文字などが過度に強調されている表示」など10類型を提示しました。

注目すべきは、「無添加あるいは不使用を健康や安全の用語と関連付ける表示」です。これが禁止事項に該当する恐れがある理由として、「食品添加物は、安全性について評価を受け、人の健康を損なうおそれのない場合に限って国において使用を認めていることから、事業者が独自に健康及び安全について科学的な検証を行い、それらの用語と関連付けることは困難であり、実際のものより優良又は有利であると誤認させるおそれがある」とあります。

つまり、「優良又は有利であると誤認させるおそれがある」ため、「無添加」や「○○不使用」という表示はしてはならないということです。しかし、「人の健康を損なうおそれのない場合に限って国において使用を認めている」というのは本当なのでしょうか?

現在、指定添加物が全部で472品目、既存添加物は357品目あり、それらの使用が認められています。しかし、その安全性はすべてネズミやイヌなどの動物によって調べられているだけです。つまり、人間で安全性が確認されてはるわけではないのであり、人間が食べて本当に安全かどうかは分かっていないのです。

しかも動物実験で一定の毒性が認められたにもかかわらず、添加物として使用が認められているものが少なくないのです。たとえば赤色2号(赤2)という合成着色料は、アメリカでは動物実験の結果、「発がん性の疑いが強い」という理由で使用が禁止されました。ところが日本では今も使用が認められています。

「人の健康を損なうおそれのない」とは言い切れない

また動物実験で分かるのは、がんができるか、腎臓や肝臓などの臓器に障害が出るかなど、かなりはっきりと分かる症状です。人間が添加物を摂取した際の微妙な影響、すなわち舌や歯茎、口内粘膜への刺激感、あるいは胃が張ったり、痛んだり、もたれたりなどの胃部不快感、さらに下腹の鈍痛、アレルギーなど、自分で訴えないと他人には伝わらない症状は動物では確かめようがないのです。したがって、指定添加物や既存添加物が、「人の健康を損なうおそれのない」とは言い切れないのです。

しかも人間が受けるそうした微妙な影響は、添加物が複数使われていた時に現れやすいと考えられます。しかし、動物実験では複数の添加物をあたえるという実験は行なわれていません。市販の加工食品には、いくつもの添加物が使われていますが、それら複数の添加物を摂取した場合の影響は調べられていないのです。

添加物にはこうした問題があるので、「無添加」と表示された製品を買い求める消費者が少なくないのです。また特に危険性が指摘されている保存料、合成着色料、発色剤、人工甘味料などが「不使用」と表示された製品を買い求める傾向にあります。

ところが、そうした表示を認めないというのは、現状を無視した、また消費者の立場や心理を考えない決定と言えます。今後、消費者としてはどのようにすればよいのでしょうか?

市販の食品にはいろいろな表示がありますが、最も重要なのは原材料名です。そこにどんな食材や添加物で製造されているか、表示されているからです。


原材料名には、まず小麦粉や米、野菜、果物、砂糖、醤油、塩などの食品原料が使用量の多い順に書かれています。そして「/」以降が添加物で、やはり使用量多い順に書かれています。ですからその部分を見ればどんな添加物が使われているのかわかります。

食品原料から始まって「/」がなくて終わっている場合は、添加物は使われていないということです。つまり「無添加」ということです。ですから「無添加」という表示がなくなっても、原材料名を見れば無添加かどうか簡単に見分けられるのです。

添加物は原則として物質名を表示することになっています。物質名とは、亜硝酸Na、ビタミンC、赤色102号(赤102)など、添加物の具体的な名称です。一方、発色剤、甘味料、防カビ剤、着色料などというのは用途名です。

物質名はあまり表示されない

原材料名には、「発色剤(亜硝酸Na)」「着色料(赤102)」のように用途名と物質名の両方が書かれている場合があります。これを用途名併記といいます。用途名併記が義務付けられている添加物は、発色剤、保存料、着色料、甘味料、酸化防止剤、防カビ剤、漂白剤、糊料(増粘剤、ゲル化剤、安定剤)の8種類です。これらは危険性の高いものが多いので注意が必要です。ただし、酸化防止剤のビタミンCやビタミンEのように一部安全性の高いものもあります。

実際には物質名はあまり表示されていません。一括名表示という抜け穴があるからです。一括名とは、用途名とほぼ同じです。一括名表示の添加物にはどんなものがあるのか、また特に避けるべき危険性の高い添加物はどれか、それは具体的にどんな食品に含まれているかについては、『令和版 食べるなら、どっち!?』を参考にしてください。

(渡辺 雄二 : 科学ジャーナリスト)