この記事をまとめると

■車検はいらないのではないかという声をよく聞く

■理由として挙げられるのは、クルマの技術進化や海外には車検のない地域もある等

■そこで車検をなくすことや数を減らすことは現実的かどうかを考えた

車検でのチェック項目には意味がないように思えるものも

 以前、無車検車について紹介した際、「そもそも車検なんていらないのではないか。海外ではない国もいっぱいある」という趣旨のコメントをいただいた。さらに昨今では自動車の重税感が話題になることも多く、車検もそのひとつとして上げられることも増えてきた。確かに重量税はけっこうな額になるし、導入の理由は重いと道路が傷みやすいので、車両重量が大きなクルマは高いという、時代遅れな感じだったりする。

 そうなると、車検がいらないという意見が出てくるのもうなずける部分があるし、自動車の質という点では以前に比べれば飛躍的によくなっているので、定期的に車検を受ける必要性はないという意見すらも出てくる。廃止は極端にしても、現状の2年毎を3年毎に延長してもいいというのは現実的な意見のようにも思える。

 そもそも車検でのチェック項目は、ユーザー車検をやったことがある人ならわかるだろうが、かなり少なく、混んでいなければライン自体は10分ぐらいで通せてしまうほど。正直、あまり意味を感じない内容も多かったりする。

 ただし、修理工場などを取材して思うのが、お金がない人も多いので「なにもしない人がかなりいる」ということ。お金がない以前に点検整備が必要という意識がない人も多い。これも修理工場のフロントに聞いたのだが、「ここまで走ってこれたのだから問題ない」という人はけっこういるという。AT全盛でイージードライブ化が進んで、アクセルを踏むだけで走るというのが当たり前になって、気分的にも壊れるということが身近でなくなっているのではないかというのが、修理工場の分析だった。

車検をなくすのは現実的ではない

 最新のクルマでもメンテナンスポイントはいくつかあって、完全メンテフリー化は無理なのだが、今でも残っているということはそれだけ重要な箇所だということ。たとえば油脂類で、劣化は絶対に避けられないし、定期交換も必須だ。タイヤもしかりだろう。以前、修理工場に貼ってあったのが某メーカーからのお願いには「とにかくオイル交換をしない人が多いので、汚れているのを発見したら半ば強制でもいいので交換するようにしてほしい」という内容が書かれていた。しかも「メーカーを問わず」と他メーカーにも触れるほど深刻な感じだった。

 とにかく、お金がないという言葉をよく聞く昨今。なにも義務がなくなってしまったとして、全員が自発的に点検整備を受けるとは到底思えない。ほったらかしが多発だろう。壊れて自分だけが困るのはまだいいが、他人や他車にも危害が及ぶ可能性がある。

 このような事例を見ていくと、車検をなくすのは無理と思えてくる。ただ油脂類の交換については車検での実際のチェック項目ではないのもまた事実。定期点検に含まれるもので、正確には車検はなくてもいいので、定期点検を義務化したほうがいいかもしれない。もちろん税金などはなしで、点検費用だけだ。

 ただ、ディーラーや修理工場レベルで全国統一の基準を設けて点検を義務化するのは実際には無理だろうし、やっても昨今話題になるように書類だけイジってOKにする例が増えるのは確実だ。そう考えると、税金、自賠責も含めて、車検内容を見直して費用を軽減するほうがいいだろう。もちろん受検条件として定期点検と整備は義務とするべきだ。結局、昔ながらの「クルマは贅沢品なので税金が高くてもOK」という意識を変えることが大切と言っていい。

 最後に海外では車検がないほうが多いという意見についてだが、実際にはある国のほうが多く、アメリカでは州によるものの存在はするし、整備しているようには思えないイタリアにも車検は昔からある。ただ、どの国も費用は安いし、整備工場での点検だったり、車検場で行うにしても直接走りにつながる部分のみというシンプルなものだったりする。