原発マネーを受け取った連中の「死んだもの勝ち」10万年残る核廃棄物の責任を取れ - 毒蝮三太夫
※この記事は2021年03月26日にBLOGOSで公開されたものです
この3月は福島第一原発の現状を見たり知ったりする機会が多かったな。あの汚染水のタンク、所狭しと並べられてものすごい量になってたけど、上空から見るとさ、まるで対局が終わった囲碁の碁盤みたいだよ。
いったいあのタンク幾つあるんだい？ 1061基か、大変なもんだな。なに、全部で約137万トンで、現在までに124万トンが埋まってると。ほぼ9割だな。来年2022年秋には満杯の見通しで、それ以上タンクを増やす敷地は無しか。いやはや、これが囲碁だったら「白、東京電力、1061手で投了です」ってもんだな（苦笑）。
メルトダウンで溶け落ちた核燃料を冷やすのに、まだまだ汚染水が出続けるんだろ。その汚染水を処理するシステムも計画通りになかなか進んでないってな。あの汚染水、どう決着をつけるんだろうね？
菅さんはこの問題に関して、「いつまでも決定せず、先送りはすべきではない。適切な時期に処分方針を決定したい」って話だ。それって、薄めて海に流すってことなんだろ。
もちろん、あの碁石みたいなタンクだって何年も経てば老朽化してくるだろうし、今だって汚染水漏れのトラブルが起きてるって話だ。無期限で延々と管理するのは大変だし、気の遠くなる話だけど、それも含めて原発なんだよな。
あと、福島は除染で出た汚染土を黒い袋に詰めて、あちこちに積み上げて殺風景な景色が増えちゃったけど、あれはどうするんだろうね？ 再利用できるのかね？
初めからシステムが破綻している原発
さんざん言われているけど、原発っていうのは初めからシステムが破綻してるんだよ。事故を起こさなくても核廃棄物が出て、その行き場がどこにもないんだから。放射性物質が消えるまで10万年かかるんだろ。そんなエネルギーにクリーンだとか安全だとか温暖化対策だとか、耳心地いい言葉を並べたって、10万年かかる「負の遺物」をホイホイと生み出していいわけないよ。今のコロナを見てわかるように人間なんて1年先のことだって誰もわからないんだから。
使った核燃料をリサイクルするプルサーマル計画も絵に描いたように頓挫したな。だけどいまだに多額の税金が投入されている。青森の六ヶ所村も核廃棄物の再処理工場があるけど、いつ何がどうなるか安全の保障なんかどこにもないよ。
歴史を辿ればさ、裏ではアメリカの都合もあったんだろうけど、日本で原発推進を進めたのは中曽根康弘さんだ。1950年代だな。そこから国がどんどん後押しして、利権とマネーに無数の人が群がって今に至ってるという構図だ。
これでどうにも歯がゆいのは、核分裂を発見した科学者も、原爆に関わったアインシュタインもオッペンハイマーも、原子力発電を開発した技術者も、それを日本に導入した中曽根さんも、すべてのキッカケを作ってきた人たちが、今じゃみんなあの世行き。
「夢のエネルギー」なんて言って原発マネーがバラまかれて、バラまきのバラ色でいい思いをした政治家、地方議員、町長村長、電力会社、建設会社、地元住民、みんな年老いて順々に死んでいく。
人の一生長くて100年、されど核廃棄物は10万年。あとは生きてるみんなで何とかしてくれ・・・って、そんな虫のいい話あるかい？ 死んだら責任負わなくていいの？ 無責任にも程があるよな。夢のエネルギーどころか悪夢のエネルギーだろ・・・。
チェルノブイリの事故を見ても変わらなかった日本
1986年、チェルノブイリの原発事故が起きた時、日本じゅうが震え上がったよ。
だけど、その意識は時の経過で次第にうやむやになっていった。反原発も増えたけど、日本に根を張った原発を引きはがすには至らなかった。結局さ、みんな金で黙らされたんだよな。
チェルノブイリってロシア語でどういう意味か知ってる？ 「黒い草」「黒いヨモギ」って意味なんだって。語感から言うと、ずいぶんと奥まった片田舎なんだって感じるよな。そういう場所に原発を作ったんだなって。
日本で原発を見直す分岐点があったとしたら、チェルノブイリの事故が起きたあの時期だったと思うよ。あの事故から何を学ぶか、本当にこのまま原発を続けていいのか、と。だけど日本は変わらなかった。そして結局、日本でメルトダウンが起きちゃった。
歴史にもしもはないし、時は戻せないけど、2008年に巨大津波の可能性が報告されて、それをスルーしたっていうのは、チェルノブイリから20年以上経って、原発事故への危機感とか恐怖がずいぶんと薄れてたんだろうな。
環境問題を意識した「平成ウルトラセブン」
あのね、昭和42年にウルトラセブンが誕生したんだけど、平成にもセブンがあったの知ってる？ 「平成ウルトラセブン」って、日本テレビで特番みたいに放送して、そのあとビデオシリーズで何本も作られてさ。ウルトラファンはけっこう知ってるよ。ちょっと調べて載せてみて。
＜ 平成ウルトラセブンシリーズ ＞
テレビスペシャル
・「ウルトラセブン 太陽エネルギー作戦」 （1994年 日本テレビ）
・「ウルトラセブン 地球星人の大地」 （1994年 日本テレビ）オリジナルビデオシリーズ
・「ウルトラセブン誕生30周年記念3部作」 （1998年 全3話）
・「ウルトラセブン1999最終章6部作」 （1999年 全6話）
・「ウルトラセブン誕生35周年 EVOLUTION5部作」 （2002年 全5話）
テレビで放送された「太陽エネルギー作戦」と「地球星人の大地」は資源エネルギー庁がタイアップでついて、関連組織の「ソーラーシステム振興協会」がスポンサーだったんだ。太陽エネルギーを普及していこう、環境問題を考えていこうって主旨で、この「平成ウルトラセブン」は作られたの。
セブンの胸は太陽エネルギーを吸収する仕組みになっててソーラーパネルみたいだし、円谷さんが説いたセブンの世界観は地球は地球人で守れって話だから、「ソーラーシステム振興協会」としてはエネルギー問題や環境問題を盛り込むのにピッタリだったんだな。
この「平成ウルトラセブン」に俺もフルハシ役で出たんだ。しかも隊員から出世してウルトラ警備隊の隊長役だ。シリーズの中でさらに出世して参謀にもなったよ。フルハシという同じ役を半世紀に亘って演じるとは我ながら「エコ」だなって思ったよ（笑）。あと、アンヌ役のひし美ゆり子、モロボシ・ダン役の森次晃嗣とか、オリジナルシリーズでおなじみの方も出演してた。
でね、この「ソーラーシステム振興協会」が3月20日を「太陽の日」に制定したんだ。春分の日なんだけど、この日は昼夜の時間がほぼ同じってことで、太陽の光に注目してもらおうってことだな。
エネルギーや環境のことを50年100年単位で考えたらさ、太陽、風力、水力、潮力・・・などの自然からエネルギーを頂く方向に軸足を置くしかないよ。人間の消費に合わせてエネルギーを作ろうったってうまいこと続きはしないよ。自然のエネルギーに人間が合わせることだよ。
そうそう、東日本大震災で被災した東北の人に、俺こんなこと言われたんだ。「震災が東京で起きなくて良かった、もし東京で起きてたら日本は終わってた」って。ちょっと優しすぎるよな。こういうことを将来言わせない為にも、地震、津波、そして原発事故から我々は今度こそ学ばないとな。
（取材構成：松田健次）
