女性蔑視は森氏だけの問題ではない「日本も国会議員のクオータ制を導入すべきだ」～田原総一朗インタビュー - 田原総一朗
※この記事は2021年03月02日にBLOGOSで公開されたものです
東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長が「女性蔑視発言」で辞任に追い込まれた。後任には、政府で五輪担当大臣を務めてきた橋本聖子氏が就任したが、森氏の発言は日本社会における「男女格差」の問題をクローズアップさせることになった。田原総一朗さんは一連の騒動をどう見ているのか、話を聞いた。【田野幸伸 亀松太郎】
「男女格差」は日本の構造的な問題
森氏は2月3日の日本オリンピック委員会（JOC）の臨時評議会で「女性がたくさん入っている会議は時間がかかる」と発言して、国内外から強い批判を浴びた。これは明らかに女性蔑視といえる発言で、とんでもない内容だ。
森氏は僕よりも3つ年下の83歳で、同じ世代の人間だ。戦前生まれで、学校で女子生徒と話すと上級生からぶん殴られたり、体育の授業で男女が手をつなぐときに戸惑ってしまったりするような世代だった。男女の間に壁があった。
社会に出るときも、男女雇用機会均等法はまだなくて、女性はまともな就職ができなかった。そういう時代に育っているから、男女平等の社会になったと頭ではわかっていても、体の中に「男と女は違うもの」という感覚が残っているのではないか。
一番の問題は、森氏がJOCの評議会で発言したときに、参加者から笑い声が上がったことだ。「森さん、あなたは間違っているよ」と誰も指摘しなかった。つまり女性蔑視は、森氏だけでなく、日本の問題なのだ。
世界経済フォーラムの男女平等ランキングで、日本は153カ国中の121位と非常に低い。衆議院の女性議員の比率も約10％しかない。男女格差は、日本の構造的な問題として存在している。
それを象徴しているのは、森氏の発言が問題になっても、政府から「辞任すべきだ」という意見が出なかったことだ。森氏が辞任に追い込まれたのは、国際社会から激しい批判を受け、国際オリンピック委員会（IOC）からも「完全に不適切」と非難されたからだ。
森氏の辞任表明後の動きもお粗末だった。森氏が元Jリーグチェアマンの川淵三郎氏を後継に指名し、川淵氏自身がそれを明らかにしたために、強い批判を浴びた。結局、五輪担当大臣だった橋本聖子氏が後任に選ばれたが、ドタバタ感は否めない。
「女性議員が苦手」というベテラン政治家が多い
今回の騒動をきっかけに、日本は構造的な男女格差や女性蔑視を根底から直さないといけない。
そもそも、森氏が「女性がたくさん入っている会議は時間がかかる」と発言したのは、男性の側に女性に対する苦手意識がある、という背景もある。森氏も女性が苦手だったのではないか。
実は、日本では「女性議員が苦手」というベテラン政治家が多い。
2017年に、旋風を巻き起こしていた希望の党の小池百合子代表が、民進党のリベラル派議員を「排除します」と発言して、不評を買ったことがある。そのとき、希望の党との合流を決めた民進党の前原誠司代表に「なぜ、小池さんの発言を止められなかったのか」と聞いた。
前原氏は「小池さんの前だと怖くて言葉が出ない」と答えた。女性の政治家が苦手なのだ。森氏も同じように女性に苦手意識があったのかもしれない。
男性議員が女性議員を苦手にしているのは、女性議員の数が圧倒的に少ないからだ。東京オリンピック・パラリンピック組織委員会のような公的団体も、女性がトップに就くことは非常に少ない。その歪みを正していくべきだ。
その意味で、森氏の後任として、女性である橋本聖子氏が選ばれたのは評価したいと思う。
先日、いま話題の音声SNS「Clubhouse」で、「朝まで生テレビ！」の出演者たちと議論したが、とても面白かった。特に、三浦瑠麗さんや福島瑞穂さんなど女性の論客が次々と参加して、自由に意見を言っていたのは良かった。
今度、菅首相に会うことがあれば、「日本も思い切って、国会議員のクオータ制度を導入すべきだ」と提言したい。女性議員の比率を3分の1以上にすべきだと言いたいと考えている。
