※この記事は2020年09月15日にBLOGOSで公開されたものです

安倍さんは長期政権だったね。第2次安倍政権が7年8カ月か。記録更新だもんな。聞けば8月に入ってから体調がすぐれなかったんだろ。記録更新まではダマしダマしで日数を稼いだってことなんだろうけど、記録を手土産にってことで、まあいいんじゃないか。

だって途中、自民党総裁の任期を「連続2期6年」だった党則を「連続3期9年」に変えたりしてさ、あの手この手で続けて、その結果、記録を作ったんだから見事なもんだよ。それまで総理って言うと小泉純一郎さん以降は1年かそこらで次々に変わり続けたろ。

2006年から2012年までか？　「第1次安倍晋三→福田康夫→麻生太郎→鳩山由紀夫→菅直人→野田佳彦」って、毎年変わるって「干支」じゃないんだからな。

それが第2次安倍政権になって、国際社会でも日本の首相は「アベ」だって定着したもんな。安倍さん、外交は頑張ったと思うよ。常にアメリカのトランプさんの顔色をうかがいながらも、ロシアのプーチンさんともよく会ったし、中国からは観光客をどんどん増やしてたし、韓国とはにらみ合いつつも付き合ってたし、全方位だったんじゃないの？

そうして続いた7年8カ月。プロ野球なら2千本安打や2百勝投手の名球会入りに匹敵だよ。政治は「記録より記憶」で何を成し遂げたかの記憶のほうが大事なんだけど、党内を安倍一強にして政権を維持し続けたことは確かなんだから。

だけど安倍さん、外交に比べると内政は穏やかじゃなかったね。とくに、モリカケ、桜を見る会、河井夫妻逮捕、公文書改ざんのあれこれ・・・、疑惑が宙ぶらりんのままだった。「名球会」というよりは「迷宮会」って感じかな（笑）。

あとは奥さまのアッキーこと昭恵夫人を、夫として御せなかったことも失点につながってたね。もしもあの奥さんがあまり表に出ないタイプだったり、旦那の失点をカバーできる大人だったら、安倍さんの評価はもっと上がってたよ。つくづくトップにとって奥さんの存在は大きいんだなって感じたね。

安倍晋三は総理の「柄」だった

そして、安倍さんの次は菅義偉さんだ。自民党総裁選では菅さん、石破さん、岸田さん、あの3人が並ぶ場面を何度も見たけど、3人ともちょっと物足りないんだよな。一国の総理にふさわしいオーラっていうか、その雰囲気が薄いんだ。

安倍さんってなんだかんだ問題あったし、言いたいことも山ほどあったけど、総理大臣にふさわしい「柄」だったよ。それをあらためて感じてるよ。全身の見映えだったり、岸総理からの三代に渡る生い立ちだったり、お坊ちゃんな感じだったり、周りのお仲間たちに支えられながら、映画で言えば主役を張る大看板の「柄」だった。

映画の主役って芝居がヘタでもいいんだよ。演技力よりも、そこにいてどれだけみんなが納得できる存在感があるか、主役にふさわしいオーラがあるか、そのほうが大事なんだから。現に安倍さんなんか台詞がつくづくヘタだったろ。国会答弁なんか「いわば」「まさに」「つまり」って話を要約しようとする割に、何を言ってるのかますますわからなくなってたもん（苦笑）。

それでも日本の顔としてね、外交の場に出ると安倍さんの見映えはサマになってた。トランプさんやプーチンさんはマフィアの大ボスみたいで迫力が違うけど、安倍さんも組長として横に並んで納まるだけの見映えをしてたよ。

これ、菅さんで想像するとどうだい？　もしもトランプさんやプーチンさんと並んだら風圧で吹き飛ばされそうだよ。なんだかしょぼしょぼしてて、ツーショットにならないよ。菅さんって日本を明るく照らす太陽ではないよな。雲の影でうすぼんやりした半月みたいだもん。どう見ても番頭さん。向こうから「早く主役を出せ」って言われちゃいそうだ。

石破さんは恰幅いいけど、いつ見ても愛想が無いんだ。人は良いのかもしれないが、笑っても薄笑いで目が笑ってないんだよな（笑）。それに中国の習近平さんと似てると思わないか？　見た目が冷徹というかヒンヤリしてるんだ。石破さんと習近平さんの二人に挟まれたら寒気で鳥肌が立ちそうだね（苦笑）。

岸田さんはパッと見るとルックスは整ってるし、人柄も良さそう。だけど決断したり牽引したりっていうパワーを感じないね。争いごとになると腰が引けそう。入り婿とか養子とか、そういう感じだもん。サザエさんに出てくるマスオさんみたいな（笑）。従順でみんなの顔色をうかがってアワアワしてるうちに問題がこんがらがっちゃうの。

この3人と比べたらだけど、安倍さんって総理の「柄」だったんだ。ということは、いかに今「総理」の人材がいないかって話だよ。

「答える必要はない」は総理になったら使えない

自民党で言えば「三角大福」の時代なんて、佐藤栄作さんの跡を継ぐ候補に「三木武夫・田中角栄・大平正芳・福田赳夫」と誰が総理になっておかしくない人材がごろごろと並んでた。先月亡くなられた渡部恒三さんが自民党だった時代に話したことがあってさ、その時「自民党は人材が豊富だからね」って福島訛りで自慢してたっけ。

対抗する野党も「浅沼稲次郎・野坂参三・徳田球一」とか大立者がそろってた。昭和のあの頃は与党も野党も総理になるような人材がひしめきあって「密」だったんだ。それが今は人材がソーシャルディスタンス。「密」ではないな（苦笑）。

そんな選択肢から菅さんが選ばれたワケだ。しかも決め方は結局、派閥の論理。「密」でない人材を「密室」で決定か・・・。たいした政策論争も無かったし、菅さんは安倍政権を引き継ぐって言ってる。しかもちょくちょくうつむいて原稿見ながら言ってるよ。もう少し顔上げて自分の言葉で喋ったほうがいいよな。総理なんだからさ。

菅さんは官房長官を長年やってきて、言うなれば内閣で問題や疑惑が起こるたびに記者からの質問を浴びて防波堤になってきた。そこで追及されるたびに口にしてきたのが、

・「その指摘はあたらない」
・「まったく問題ない」
・「あなたに答える必要はない」

ないないないの、ないないづくし。菅さんのこと世間では「令和おじさん」なんて呼び方もあるけど、仕事ぶりを見たら「ないないおじさん」だよ。「答えない」を答え続ける「ないないおじさん」。

菅さんは先日の会見で、首相になった時の国会対応について「出席は大事なところに限定すべき」なんて言ったんだろ？　わかりやすいね。国会質問で野党に問い詰められて答えるのが嫌なんだよ。自分でもそこが弱点だってわかってるんだろうな。官房長官としては記者相手に通用してた「まったく問題ない」「あなたに答える必要はない」なんて逃げの答弁、国会じゃ通用しないからね。

安倍さんみたいになんだかよくワカラナイ答弁を延々と続けることも出来なさそうだし、菅新総理の国会答弁はどうなるのか気になるね・・・。

地方創生 まずは地元の秋田を盛り上げよ

でもね、菅さんが総理ってことで、出身地の秋田県からは初の総理なんだよな。これは秋田が盛り上がるよ。地方創生を掲げる菅さん、自分自身が秋田の経済効果になるよね。

秋田と言えば、今の秋田県知事の佐竹敬久さんと福祉のイベントで一緒になったことがあってね。気さくな人だったよ。調べるとわかるけど、佐竹知事って古くは源氏の流れがあって江戸時代は佐竹藩で、言うなれば殿様の家系なんだよ。確かにトノサマみたいな顔してた。気さくなトノサマだ。

この秋田県の人口流出がすごく深刻でさ、若い人がどんどん出てっちゃってるんだよね。「消滅可能性都市」か？　そういう自治体の割合が全国でもいちばん多い県が秋田で、なんでも2040年には人口が3分の2に減るって。で、高齢者の割合がますます増えていく。

地方が今抱えてる問題の象徴みたいな県なんだよ。だから菅さんが総理になったのをキッカケに、秋田県の人口減問題をどうにかしようって、地元じゃますます真剣になるんじゃないかな。

ほら、菅さんってカジノ推進派だろ。横浜のカジノ招致って菅さんががっちり絡んでるんだよな。でも、カジノは海外からの観光客が目当てだから、この青写真もコロナですっかり吹き飛んじゃった。そうそう、利権を待ってたアメリカのカジノ企業も日本のカジノ計画から撤退表明したんだってね。そりゃそうだろ、アメリカだってコロナでにっちもさっちも行かなくなってんだから。日本に手を伸ばしてる場合じゃないもの。

そこで菅さん、横浜から秋田にカジノ持ってったりしてね。ナマハゲがルーレット回して「有り金すって泣く子はいねーかー」なんてな（笑）。

冗談はさておき、とにもかくにも菅さんには新総理として、今ホントに大変な状態の日本をなんとかしてほしいと願うばかりだよ。

（取材構成：松田健次）