NHKから国民を守る党代表・立花孝志氏、NHKスクランブル放送化への道筋を語る - BLOGOS編集部
※この記事は2019年08月07日にBLOGOSで公開されたものです
受信料を払った人だけが視聴できる「NHKのスクランブル放送」を政策として掲げ、比例代表で約98万票を獲得したNHKから国民を守る党。元船橋市議、前葛飾区議の同党代表・立花孝志氏は、「NHKをぶっ壊す!」というキャッチフレーズを繰り返し、選挙期間中からネット上を中心に大きな注目を集めた。
NHKスクランブル化はどのように進めていくのか、それ以外のイシューについてはどんな方針を元に判断していくのか、立花代表に直撃インタビューを敢行した。【取材:島村優】
「NHKの論理は破綻している」
-参院選ではN国党の一風変わった選挙運動が功を奏したと同時に、多くの人の間にNHK受信料支払いに対する不平等感があることも窺えました。
まさに、それが多くの国民の声じゃないですか。それも合理的な声。本来、NHKというのは、見ても見なくても受信料は払わないといけないという前提なのに、衛星料金なんてつけるから話がおかしくなってくる。衛星放送があれば値段が高くなる、なければ低くなる、という状況が現にあるので「NHKを見ても見なくても金を払え」という論理は破綻していますよね。ホテルも、ワンセグの例もそうですけど、やっぱり合理性に欠けているわけですよ。
例えば、障害者や生活保護受給者のNHK受信料を免除するというのは、本来は間違いなんです。収入が少ない人を免除するのであれば税金と同じでしょう。NHKは公共放送だから、生活保護を受けている人からも受信料をもらって、その受信料分を税金から補助するべきでしょう。NHKも国会も、こういう受信料制度の根幹がわからずに、場当たり的にやってきたんです。こういう一つの問題をしっかり解決しないと、他のどんなことをやっても国民からは信用されません。
-NHKが7月30日に出した「受信料と公共放送についてご理解いただくために」という文書については、どんな感想を持ちましたか?
この文書は今までのNHKの立場と一緒です。受信設備があれば契約を結び、受信料を支払うことが定められている、と。ただ、それを守らなかった場合に「厳しく対処をします」と書いてあっても、「具体的な法的手続きをとります」とは書いていない。
だから、あの文書を見て「怖いな」と思う人から受信料を取れればいいと思っているんですよ。でも、本当に公平に取ろうと思ったら、もっと具体的に「NHKから国民を守る党がこういう主張をしているけど、これは間違いだ。訂正されなければ法的な手段を取る」とはっきりと明記すればいいんです。私たちとしては、テレビを設置して契約はするけど受信料は支払わない、その上で提訴していくという立場です。
-「契約するけど受信料を支払わない」ということの法的根拠はどこにありますか?
受信料の支払い義務化は、これまでに何度も法律に明文化しようとして失敗しています。つまり「契約の義務」と「支払いの義務」は別なんです。法律ではNHKとの契約は義務化としているけど、弁済についての義務は負わせないとしています。
-ワンセグの受信料裁判もN国党で提訴したものですが、「グレーで運用されていたものを、わざわざ裁判でクロにしているんじゃないか」という指摘があります。
間違ってはないと思うけど、それは浅はかな考えですね。問題をはっきりさせないと、どちらが悪いのかわからない状態なので、クロにした上で法律を改正する方向に進むんです。現行の法律があって、司法の判断があって、その判断と世間の考えが乖離している場合には、僕らが法律の改正に動くという順番だと考えています。
NHK改革の鍵は「直接民主主義」?
ただ、僕はNHKの受信料問題は、単なる小さなテーマではなくこの国の民主主義の問題だと思っています。現在のNHKは政権側に忖度した報道を行い、その報道によって選ばれた国会議員が歪んだ政治をしているんです。もちろん自分だけの力では全部はできないので、とりあえず一つ、専門分野のことをやって、あとは残った政治家に任せたいと考えています。
ーNHKを改革することで、政治全体の風通しも良くしたい、と。具体的にスクランブル化は、どのように実現していくお考えでしょうか。
これは「直接民主主義」というものを普及させて進めていきたい。今の社会は、政治家の多数決と国民の多数決が大きく乖離しています。国民の多数が「スクランブル放送を実現してほしい」とか、例えば「消費税を上げてほしくない」と思っていたら、その声は聞くべきでしょう。それを、国民の声を無視して消費税を上げるっていうのは、誰の意見として進めているのか。これが民主主義国家なのか、ということです。
「直接民主主義」が本当に良いのか、と言われたらベストではない。子どもが3人いる5人家族だとして、全員に同じ一票を与えるのはちょっと問題ですよね。ただ、それでも、今の政治よりはマシ、ベターだとは思っています。
-まだイメージがつきにくいですが、その「直接民主主義」とNHK改革はどのように結びつくのでしょうか。
うちの党は「直接民主主義」を取り入れて、アンケート調査を行って調べるわけです。「NHKの番組内容は関係なく、見たい人はお金を払う、払わない人は電波を止める。賛成ですか、反対ですか、どちらでもないですか」と。
そこには私たちの意見は関係ありません。議決権を行使するかどうか、賛成か反対かを選ぶのは国民の皆さんです。我々は国民の過半数をとって、国会で一票を行使する。もちろん、NHKのスクランブル放送を実現してほしいという声は全国民の半数以上あると思っています。半分以上ないなら、うちの党は終わりにしますよ。国民が望んでないことをやる必要はないから。
改憲発議に必ず賛成しなければいけない理由
-国民の多数派に従って行動するという原則はわかりましたが、スクランブル化の実現に向けてどのようなロードマップを描いているんでしょうか。
そうやって国民の多数の意見を受け止めれば、それと違うことを自民党がやった時に厳しく迫ることができますよね。多数決を絶対とする理由はないにせよ、多数決を無視して少数意見で突き進むのは「民主主義から離れていくことなんじゃないのか」と問題を提起します。
-当選後には「スクランブル化で協力してもらえれば、自民党が進める憲法改正に協力する準備がある」と話していましたが、少しトーンが変わってきているのでしょうか。
いや、この国で直接的な民主主義が唯一法律で定められているのは憲法改正です。憲法96条によって「国民の過半数で決めなさい」と定められている。だから、憲法改正は国民の多数決で決まるものなので、私たちは「直接民主主義」を謳う以上、改憲発議には絶対に賛成しないといけない立場なんです。
-「直接民主主義」を進める以上、憲法改正発議には反対しないというロジックなんですね。
もちろん、私たちは「直接民主主義」ではなく「NHKのスクランブル化」を公約として掲げて支持を得ている以上、NHKを第一に進めていきます。その時に、自民党とバーター取り引きが可能なら、憲法改正発議に賛成する。それがすぐには難しいようなら、懐刀としてとっておく、ということもありえます。
-「NHKスクランブル化」ワンイシューで、それ以外の判断については棚上げする、という立場には批判も寄せられています。
批判をする人はしてもらえばいい。我々はもっと高尚なレベルで話をしているつもりなんです。NHK問題を解決することが、この国の民主主義の問題を解決する一番のステップであって、それくらい大事な問題なんです。
-これまでの発言を読むかぎり「NHK以外は多数決に従う」ということかと思っていましたが、NHKのスクランブル化も含めて、すべて国民の多数決を取った上で進めていく、ということで間違いないですか?
そう、すべてが多数決です。例えば「原発再稼働どうしますか」というのも国民の多数の声を反映させる。あらゆるテーマが「直接民主主義」に含まれるんです。今は国会議員の多数決に委ねる形ですが、議員は「俺たちは正しく、国民は間違う」という考え方で、間接民主主義というのは必ずおかしくなるんです。
また、野党を結集しないと今の自公体制には挑めない。常に政権交代が可能な状態にしておかないといけないので、この「直接民主主義」というコンセプトで今のバラバラな野党がまとまることができるんじゃないか、という狙いもあります。
選挙出馬は資金集めとPRのため
-2013年の結党時から今回の参院選で一議席を取ることを目標にしていたそうですが、これまでの地方選挙はそのステップだったのでしょうか?
参院選に出るには、どんなに安くても5000万円以上はかかります。このお金をどうやって集めるのかと言えば、市議会議員選挙で得た報酬から集めるんです。お金を誰かからもらえば、その人に忖度する政治になることは避けられないので、我々は政治活動や選挙活動をする原資はできるだけ税金から取ってこようと考えたわけです。
結局、選挙が一番安く上がって効率的な広報・PRなんです。だから、「落ちても良い選挙」と「当選する選挙」を使い分けて、落ちても良い位置付けの選挙では、次回以降の選挙で効果がある地域にしかポスターは貼りません。
-都知事選や参院選での政見放送も、結果的に今言った「効率的な広報」になっています。
都知事選の政見放送は3年後、今回の参院選に向けた先行投資です。今回の参院選は次の衆院選への先行投資です。参院選の投票率を見ると、国民の半分以上は投票に行かなかったわけで、本来はこの人たちこそが多数派で、舵取りをしてこの国の未来を決めるべきなんです。
でも「平和だからいいか」「どこに入れたらいいか分からない」という人が大半です。こうした人に、政治には無関心でいられるけど無関係ではいられない、ということを発信し続けるのが政治家の仕事だと思っています。だから品位に欠ける、と批判されようとやるべきだと思いますけどね。「悪名は無名に勝る」でしょう。諸派の政党が真面目なことを言っても誰も聞かないでしょう。
-政見放送の内容は候補者がそれぞれ自分で考えているのですか? 結果的に党が注目を集めるきっかけになっていましたが、立花さんからの指示はなかったのでしょうか。
参院選には、地方選挙で落選した議員のほか、YouTubeで声をかけて集めた候補者が出馬しました。政見放送については「何をしてもいい」と伝えてあり、候補者が一人ひとり自分で考えています。
僕から「何をしなさい」とは一切指示していません。「できるだけ、面白いことをしなさい」とは話していましたが、中には面白いことができない人もいるので「ずっと黙っとけば」「ずっと『ぶっ壊す』って言っとけば」なんてアドバイスをして、それを聞いた人間が2人いただけです。指示ではない。
「野党の失敗」から草の根選挙を学ぶ
-地方議会でも議席数を増やしていますが、放送法の改正とは直接つながらない自治体レベルで支持が伸びいている理由についてどう考えていますか?
これは簡単な話で、我々が市民に寄り添っているからですよ。地方議会というのは市民と直接コミュニケーションが取れるので、有権者は自分に何かしらのメリットがあることをしてくれる人に投票する。そこで我々が選んでもらえた、というのが地方選挙で支持を得られている理由ではないかなと。
-多くの野党は、地方に票が根付いていないため、与党批判ばかりしているように見えるということがよく言われます。
我々は地方からしっかりと進めていこうと考えていました。それは民主党の失敗と維新の会の失敗を見ているからです。民主党は足元が磐石でないのに県議会議員、国会議員が増えて頭でっかちになってコケた。維新の党は、大阪は固めたけど他が弱いからうまくいかない。だから我々は下をしっかりと固めてから国政に進出しようと。
-党所属の議員から党に多額の上納金を納めないといけないという話は事実でしょうか?
これは全く事実ではありません。むしろ、お金を納めていただいた方にはこれからお返ししていきます。僕は人に命令するのが苦手なんです。上納金というのはネット上で勝手に言われていることで、実際にお金を入れてくれている議員に対しては、選挙の時にそれ以上のお金を出している。
ただ、それを一括で返すよりは党にお金を入れてよ、と言っている程度の話で。入れてくれたお金に関しては、必ず支部に返すから、またボランティアの人たちに使ってあげてほしいということです。
私人逮捕は「選挙とはそういうもの」
-地方議会の選挙運動中の話だと思いますが、N国の候補者や運動員が高圧的な態度で市民に接している、私人逮捕はやりすぎではないのでは、という批判も上がっています。
これに関しては、皆さんに「選挙はそういうものだ」と知ってほしいです。民主主義国家における選挙というのは崇高なものなんです。もし文句があるなら、立候補しなさい、と。たとえそれが事実であったとしても、選挙期間中は他人の悪口を言ってはいけない。それくらい選挙期間中の候補者は守られているんです。
高齢者や女性の候補者が男性から妨害行為を受けたら恐怖を感じますよね。選挙期間中は、表現の自由よりも候補者の権利が守られているわけですから、逮捕されるかどうかは別にして、「嘘つき」なんてヤジを飛ばした場合は強く罰せられるべきなんです。そうしたヤジを飛ばす人が、どこかの陣営である可能性は極めて高いんです。
-なるほど、そういう可能性もあるから厳しく対処する、と。
これまでの政治家はイメージを大事にしてきました。でも、我々を妨害する勢力は抵抗勢力として扱って、厳しく対処する。それくらい過激に政治をやるんだということを前面に出しています。
私人逮捕についても、逃げる人は捕まえますよ。それはこれからも変わりません。周りから見たらイメージは悪いかもしれないけど、やっていることは合法です。ただ、うちがやっていることが危険であることも理解しているので、早く解党した方が良いとは思います。でも、国民は我々が危険でもNHKの改革を望んでいるわけです。NHKの方がもっと危険だからでしょう。
-陣営の運動員の方が、激しく市民を罵倒する様子を見て行きすぎでは、とも思いました。立花さんが指示しているわけではないんですか?
罵声とかは言いすぎたところもあるので、党のトップとしてはもう少し冷静に対応してほしいとも思って反省しています。運動員の方も、選挙の最終盤で血気盛んになっていて、そこは冷静に演出していく必要があります。それは本気で怒ったらダメですよ。国民に対して、妨害するとこういうことになるぞ、というメッセージなので。ただ、支援者の方は全員が議員ではないし、僕のそういう過激な部分が好きな人はウワーってなってしまうので、イメージが悪くなってしまうのは事実です。ただ、イメージで選挙しているわけではなく、我々は中身でやっている。現に、選挙結果や発表された支持率を見ると、我々への支持が現れていて、やってきたことは間違ってなかったんだなと感じました。
“N国・自民”二大政党制を目指す
-無所属の議員に声をかけていることが伝えられていますが、政策が一致しなくても政党交付金を求めてN国に合流することも予想されます。
それでいいんです。そもそも政策が違う国会議員っていうのは誰もいません。
-政策が「違う」人がいない?
世界平和、戦争のない国、国民の幸せ…全員望むことは一緒なんです。これを言っているのが自民党で、だから民主党の大臣を務めたことがある政治家が入ることができるんですよ。PCのハードディスクにドリルで穴を開けた自民党議員だって未だに議員を続けている。丸山穂高くんは違法行為を行っていないのだから、我々と一緒になってもおかしくないでしょ。最終的に政治というのは、国民の幸せや戦争のない国に繋がっていれば集まることができます。
そんな幅広い自民党と対峙するための二大政党制を作ろうと思ったら、たとえお金のために集まってきても受け入れるべきなんです。今の自民党を止めるためには、目的は何であれ集まることは正義だと考えます。
-今、N国が自民党の対立軸として大きくなり、二大政党制を目指すという意味のことをおっしゃいましたか?
それはずっと考えているし、そうなるべきだと思います。だから、右から左までどんな人までN国に入ってもらえるように、我々は完全なる真ん中を貫きたい。野党の人はちょっとしたことですぐ別れていくでしょう。そうではなく、その中心の幹になっていきたい。だから「え、この人?」と思われる人でも受け入れていくわけです。
マイナスが出ることも予想しているけど、世論調査を見ると支持率を1%近くとっているわけです。これは、自民党に対抗しうる政策を打てるのはNHKから国民を守る党しかない、と国民が強く思ってくれている現れなんじゃないでしょうか。
-なるほど、最後に改めて任期中にやっていきたいことを教えてください。
絶対にやろうと思ってるのはNHKからの被害者を守ること。これまでも電話をくれた人を助けてきましたが、これからは攻めの姿勢で。集金人にはヤクザのような人物がたくさんいるんですけど…。
-…遮ってすいません、それって本当なんですか?
いっぱいいますよ。だから、これからは集金人をつけ回していこう、と柏市議選に当選した大橋(昌信氏)には言っています。こちらからつけ回して、集金人が正しく業務を行っているか監視しよう、と。正しい業務をしていれば宣伝になるので、逃げるNHKがおかしいんです。
もう一つは、NHK受信料は全員が払ったら安くなるので、その裁判も進めていきます。もちろん最後の目的はNHKの被害者が出ないようにすることで、そのためのスクランブル放送の実現です。そこに向けては少し時間がかかるので6年くらいお時間をいただければな、と。