「AIをビジネスにつなげていく」東北のIT企業がインフラ劣化度検査アプリ「THE JUDGE!」を開発したワケ - BLOGOS編集部PR企画
※この記事は2019年02月15日にBLOGOSで公開されたものです
昨年11月に行われた、IBMのAI、IBM Watson(以下、Watson)を活用したアプリケーションコンテスト「Watson Build 2018 Japan Demo Day」。このコンテストで準優勝を獲得したのが、仙台のIT企業・SRA東北が開発した「THE JUDGE!」だ。
「THE JUDGE!」はWatsonの画像認識APIであるVisual Recognitionの高い画像解析能力を活かし、鉄橋や鉄骨など、インフラ設備に使われている鉄骨のサビ具合を色味や形から判定するWebサービス。
これまで多数の人員を配置し手作業でおこなっていた金属の劣化度検査を、スマートフォンなどのカメラで撮影した写真を解析することで省人化を実現するという。
AIの活用に注目が集まるなか、杜の都・仙台でいち早くサービス開発に着手したSRA東北。同社のキーマン3人にその背景を聞いた。
「AIをどうビジネスにしていくか」がカギ
「AIが当たり前になっていくというのはもう分かりきっている。だとすれば、地域で1番に取り組むことがアドバンテージになると考えました」
そう語るのは、SRA東北代表取締役社長の阿部嘉男氏だ。
同氏は35年前にそれまで従事していた漁業をやめ、「陸に上がった」という異色の経歴の持ち主。その後、IT技術を身につけ、SRA東北に合流。エンジニアとして活動後、現在の役職に就いたのは9年前のことだった。
そんな阿部氏がIT業界に飛び込んだ理由は、ただひとつ「手に職をつける」ためだったという。
「その頃から、どうすればビジネスとして成立するかという視点は常に持っています。AIを始めたときのテーマは『社会課題の解決』でしたが、その上でいかにビジネスにつなげるかを考えていました」
阿部氏の発言を証明するかのように、「THE JUDGE!」はコンテストでビジネス面での完成度の高さを評価された。
「いま、高度経済成長期に作られたインフラが徐々に劣化してきています。これを作り直すかメンテナンスするのか。どちらにせよ、強度の検査は必要ですが、人手が足りない。『THE JUDGE!』を利用すれば、AIを活用した省力化が可能です」(阿部氏)
「THE JUDGE!」のビジネス領域であるインフラメンテナンス市場は日本国内だけでも5兆円の規模といわれており、世界全体で見れば200兆円にもなるという。高品質なサービスを提供することができれば、一気に成長する可能性もある。
チーフ・ディレクターの我妻裕太氏は「データを蓄積して、ひとつのプラットフォームになっていくのが理想」と、今後の展開にも意欲を見せる。
「THE JUDGE!」は、戦略的なインフラ管理を可能にするため、撮影した写真をずらりと並べて見ることのできる「THE GALLERY」と、判定結果と位置情報をヒートマップで可視化する「THE ANALYSIS」も同時に提供している。これらのサービスを使えば、より効率的なメンテナンスが可能になるという。
新技術への取り組みが企業価値を高める
トップの判断でAI事業を始める際、現場にとまどいはなかったのだろうか。SRA東北の執行役員・岡田晃男氏は同社の風土を引き合いに出してこのように語った。
「SRA東北は染まらない会社なんです。新しいことも常に楽しくやる。そうやって新しいことをやり続けることで、新しい人材も取り込めます。その点でも、『THE JUDGE!』の準優勝獲得は喜ばしいですね」(岡田氏)
常に新たな技術に取り組むことが、企業によい影響を与える事例としても、「THE JUDGE!」とSRA東北はひとつの理想型なのかもしれない。
IT業界のフロンティアに仙台から挑戦していく
阿部氏はAIについて、「これからの5年、10年で気付かないくらい自然に生活に溶け込んでくる」と予測。すでにコールセンターなどではAIが一定の成果を発揮しているが、この流れは不可避なものだと同氏は語る。
最後に、SRA東北の今後について質問をすると、それまで終始にこやかだった阿部氏が真剣な顔つきで話し始めた。
「AIをはじめ、まだまだIT業界にはフロンティアがある。世界中に強力なライバルはいますが、東北からでも、やれないことはない。日本だけの市場にこだわらず、広い世界に挑戦したい」
東北から世界へ、AIを武器に新たな挑戦をはじめたSRA東北。「THE JUDGE!」はすでに、顧客と連携しながらテストを重ねており、今春にも実戦投入される予定だ。
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