純丘曜彰 教授博士 / 大阪芸術大学

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匿名の読書猿氏が著した『問題解決大全』(フォレスト出版)は、労作の良書だ。とはいえ、この本、元ネタに引っ張られて、その要約がかならずしも問題解決というテーマの下にまとまっていない。というわけで、メモ書き程度だが、その40の方法について、その追加的な解説をかんたんに書き留めておこう。


S04 キャメロット

一般にはサイモンアプローチと呼ばれているもの。元はキルケゴール以来の実存主義。問題状況に対しては、まずそれが解決された理想を立て、そのギャップを埋める。しかし、理想の立て方は人それぞれ。たとえば、部屋にモノが散乱している、という状況は、整然とモノが収納されている生活を理想とすることもできれば、ミニマリストとしてモノをほとんど持たない部屋を想像することも、かたづけにマメな旦那/奥さんとの幸せな結婚を夢見ることもできる。そして、あとはその理想に近づくように、それぞれ棚を買う、モノを棄てる、相手を探す、など、努力すればよい。


S05 佐藤の問題構造図式

問題は、おうおうに、その問題そのものではなく、その解決策の困難にある。たとえば、なかなか結婚できない、というのも、じつは、相手が見つからない、というのではなく、良い相手を見つけて付き合い始めても、ずっと仕事が忙しくて、すぐ疎遠になり、いつも自然消滅なのかも。これは、仕事の忙しさの方を解決することが重要。


S06 ティンバーゲンの四つの問い

問題を、個別/一般、直近/根本の二軸四象限に分け、一般根本原因の解決こそを求める。たとえば、今朝、遅刻した、という問題の個別直近事情は、起きるのが遅かった、ということだが、その根本原因は、昨夜に夜更かししたこと。それで、早く起きればよい、夜更かしさえしなければよい、と考えがちだが、毎度、遅刻する、となれば、一般直近原因としては、生活リズムが乱れているせいであり、その一般根本原因は、酒の飲み過ぎ、夜遊びのしすぎだったりする。


S07 ロジックツリー

物事の道理を可視化する方法。中心の幹は、実現すべき目標。これに対して、幹より下の根の側はそれを実現する条件(方法)を<かつ>や<または>で論理的に整理し、さらにその条件についても、それを実現する条件(方法)を整理していく。これによって、どのルートで目標を実現するか、そのために事前にどれだけの根回しが必要か、がわかる。たとえば、家を買う、という目標に対して、貯金する、または、ローンを借りる、という手があり、貯金するのにも、節約する、転職する、夫婦ともに働く、などの手がある。しかし、夫婦ともに働く、となると、保育園が近くにある、または、親と同居する、などの条件が必要になるだろう。また、逆に幹より上の枝の側は、それを実現したときに起きる影響。これも、<かつ>や<または>で論理的に整理し、起こりうる問題を事前予測して、つねに先回りして手を打っていく


S08 特性要因図

別名、フィッシュボーン分析。現状を尻尾として、頭が上がる要因を下に、頭が下がる要因を上に矢印で記入していく。そして、自分たちでコントロールできる要因と、偶発的な外部の要因を見分け、前者については改善し、後者についてはリスクを監視し、また、部分的にでも小骨を加えてその要因をコントロールし、できるだけリスクを抑え込む。たとえば、自社の株価であれば、費用逓減や新製品開発などは自分たちで上向きできる要因だが、他社との商品競合、為替の悪化などは魚の頭が下がる外部要因。しかし、為替変動も、先物予約や現地法人化などで、部分的ながら自分たちでコントロールすることでリスク軽減はできる。


S09 文献調査

会議室で似たり寄ったりの経歴のメンバーが知恵を絞ったところで、同じような発想にしかならず、解決策も見つからず、見つかったとしても、知見不足で大きな穴があるかもしれない。それゆえ、むしろ図書館で既存文献を調べ上げ、関連事項を網羅して、あらかじめ問題の全体像を把握しておくことが大切。たとえば、マイクロビーズが洗顔に有効だ、と思っても、それに似たプラスチック小片を魚たちが口にして環境破壊を起こしている、なんていうこともありうる。


(以下、つづく)