「生命の起源」に関する7つの理論
人類にとって、地球の最初の生命がどのように現れたのかは永遠のテーマの1つであり、生命の起源に関する理論は一説によると123個もあるとされています。そんな生命の起源に迫る7つの仮説を、科学系ニュースサイトのLive Scienceがまとめました。
7 Theories on the Origin of Life | Live Science
https://www.livescience.com/13363-7-theories-origin-life.html
アメリカの化学者であるスタンリー・ミラーとハロルド・ユーリーは、密閉された実験装置に原始の地球を再現した水・メタン・アンモニア・水素を封入して放電する実験から、落雷により生命のもととなるアミノ酸が合成されたと発表しました。「ユーリー-ミラーの実験」と呼ばれるこの有名な実験は、単純な分子から複雑な分子ができて、それがやがて生命へと発展したという化学進化説の初期の実験と位置づけられています。
その後、原始の地球の大気はミラーらの想定より水素が少なかったことが明らかになりましたが、NASAとカリフォルニア大学サンディエゴ校の研究者らは2008年に発表した論文の中で、「火山の噴火により発生した雲にはメタン・アンモニア・水素が含まれており、雷も発生していた可能性がある」と論じています。
◆2:最初の生命は泥の中で生まれた
スコットランド・グラスゴー大学の有機化学者であるアレキサンダー・グレアム・ケアンズ=スミスは1985年に発表した著書「生命の起源を解く七つの鍵」の中で、「粘土中の結晶はその構造を保ちながら成長し、その過程で他の分子を捕獲して我々の遺伝子と同じようなパターンとして組織化される」と提唱しました。
DNAの主な役割は、肉体を構成するタンパク質のアミノ酸分子がどのように配置されるかを指示する情報を保存することにあります。ケアンズ=スミスの仮説では、粘土に含まれる鉱物の結晶が有機分子を組織化し、これが後に有機分子が自ら組織化するようになったのが生命の起源だとされているとのこと。この野心的な理論は1980年代の生物学者の間で物議を醸しましたが、現代の科学界に広く受け入れられているわけではないそうです。
◆3:生命は海の底から湧き出る熱水から生まれた
2008年に学術誌・Nature Reviews Microbiologyに掲載された論文の中で、ドイツのハインリッヒ・ハイネ大学デュッセルドルフ校の研究者であるウィリアム・マーティン氏らの研究チームは、深海の熱水噴出孔から吹き出す元素から最初の生命が生まれたという「熱水噴出孔説」を提唱しました。
地熱により熱せられた水が海の底から噴き出す熱水噴出孔には、地殻を通過する際に取り込まれた炭素や水素などの物質やミネラルが含まれています。熱水噴出孔説は、岩の隙間にこれらの分子が集まり、生命が誕生する上で重要な触媒が提供されたのではないかとする説です。
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2019年にロンドン大学の研究者らが発表した研究では、熱水噴出孔と同じ高温かつアルカリ性の環境下で、原始的な細胞の前身となるプロトセルを作成することに成功しています。
◆4:生命は氷の中で生まれた
生命の誕生には有機化合物が必要ですが、これらは水中にはごく低濃度でしか存在しておらず、しかも化学的に不安定ですぐに壊れてしまいます。そのため、一部の研究者は「水が凍結してアミノ酸などの分子が濃縮されることで最初の生命の誕生が促されたのではないか」と考えています。
カリフォルニア大学の海洋化学者であるジェフリー・バダ氏は、エウロパなど氷に覆われた星における分子のふるまいを調べるべく、無機化合物であるシアン化アンモニウムの希釈溶液を低温下で25年間凍結させる実験を行いました。その結果、DNAを構成するアデニンやグアニンなど、生命にとって重要な物質が生成されるという結果が得られたとのこと。
これについてバダ氏は、「生命の起源に重要な有機化合物は、低温の環境下でより安定的になります」と話しました。この説では、氷は紫外線など生命にとって危険な宇宙線から有機化合物を守る役目を果たしたとも考えられています。
◆5:生命はDNAより単純なRNAから始まった
生命の体を構成するタンパク質はDNAの情報に基づいて合成されますが、DNAの合成にもタンパク質が必要です。そのため、DNAもタンパク質もない原始の地球でどのように生命が誕生したのかは難しい問題です。そこで提唱されたのが、「DNAのように情報を保存し、タンパク質のような酵素として働き、DNAとタンパク質の両方の合成に関わっているRNAが生命誕生のきっかけではないか」とするRNAワールド仮説です。
◆6:もっと単純な分子から始まった
RNAワールド仮説では、そもそも最初のRNAはどのように誕生したのかという疑問が残ります。そのため、小さな分子同士が相互作用し、細胞膜のような泡のカプセルに収っていたのが複雑化して生命になったとする仮説も生まれました。この考え方は、RNAワールド仮説の「遺伝子優先モデル」に対して、「代謝優先モデル」と呼ばれています。
◆7:最初の生命は宇宙からやってきた
国際宇宙ステーション(ISS)の船外で微生物が生存できるかどうかを調べる日本の「たんぽぽ計画」では、3年間にわたって微生物を宇宙空間で紫外線にさらしても生存可能なことが確かめられました。
微生物は宇宙空間でも長時間生存可能と判明、「生命は宇宙からやってきた」説の有力な根拠となるか - GIGAZINE
場合によっては微生物が宇宙空間で数十年間は生存できることを示したこの実験は、地球上の最初の生命は小惑星などに乗って宇宙からやってきたとするパンスペルミア説をより有力にするものだとされています。ただし、もしパンスペルミア説が正しい場合、「地球に来る前の生命はどうやって誕生したのか?」という新しい謎が生まれることになります。