何度デートを重ねても、進展ナシ。男が決して女に手を出さない意外な理由とは
ハイスペ男に“選ばれる女”は、一体何が違うのか?
「俺は結婚に向いていないし、結婚しなくても十分幸せだ…」
と、思っていたバツイチ男が“ある女”と再婚した。
彼の結婚の決め手は何だったのか――。
6人の女性の中から、彼に選ばれたのは誰?
▶前回:Case1:2016年の玉城玲奈(29歳)
Case1(回答編):2016年の桜井和真(29歳)
2016年は不倫スキャンダルの末、離婚した芸能人カップルが多かった。
けれど食事会で出会った同い年の玉城玲奈は、同じ意味の質問でも、面白い尋ね方をしてきた。
「和真さん、どれだけひどい不倫をしたんですか?」
初めてのデートで、玲奈に真顔で聞かれて、和真は飲んでいたワインを吹きそうになった。
「俺が不倫したって決めつけた質問ですね」
「え?違うんですか?」
「不倫はしてません。前妻も不倫はしてないと思います」
「誤解して、ごめんなさい」
玲奈は申し訳なさそうな顔をする。
「どうして不倫が原因だと思ったんですか?しかも“ひどい不倫”って」
「“普通の不倫”ぐらいじゃ和真さんみたいな素敵な男性と離婚はしないと思って…。だから相当に“ひどい不倫”をして奥様を傷つけたんだろうと思いました」
あっけらかんと玲奈は言う。
「普通の不倫?不倫に普通もひどいもないですよ」と和真は笑った。
離婚後、和真はしばらく“独り身”を楽しもうと思っていた。実際に楽しかった。しかし玲奈と話していると、その楽しさが倍になる気がした。
やはり、1人でいるより、2人でいるほうが楽しいのかもしれない。
― 彼女のことをもっと知りたい。
気づけば2回目のデートで、和真は口が滑っていた。
「6月から7月にかけて1ヶ月ぐらいハワイで過ごそうと思ってるんです。もし良かったら、遊びに来ませんか?」
ふたりきりの海外5日間で、何が起きた…!?
ハワイで過ごした5日間
和真がハワイに到着して1週間ほどのんびり過ごした後、玲奈はやってきた。
出会いとなった食事会を含めて3回しか会ってない。そのうち2回はデートだが手も触れていない。
つまり、3回目のデートの場所がハワイだったのだ。
寝泊まりする部屋は別々だとしても普通なら警戒する。しかし玲奈は特に気にしていない様子。
「玲奈さんはハワイにいる間にしたいことって何かあります?」
カラカウア通りに面したカフェのテラス席で和真は尋ねた。なにしろ玲奈は5日間しかいられない。
「和真さんにお任せしてもいいですか?」
そのとき、和真はすべてを察した。
― なるほど。彼女は俺を試しているのか…。
思い返すと、初対面のとき玲奈は年収を聞いてきた。
また、笑える聞き方だったとはいえ、遠回しに「この男は不倫するタイプか?」を確認してきた。
玲奈はしっかりと男を値踏みするタイプなのだろう、と和真は思った。
「ハワイまで連れてきた私をどのようにエスコートするのか、見せてくださる?」
そんな玲奈の心の声が聞こえた和真は、闘志が湧いた。
― よし、わかった。だったら最高に楽しませよう。
「私のこと、女として見てない?」
最終日の夜、ホテルのビーチバーで玲奈が尋ねた。
質問の意図は和真にも理解できる。5日間一緒にいて自分が彼女を一切、口説こうとしなかったからだ。
「女として見てるよ」
「じゃ、どうして部屋に誘ってこないの?」
「今は、非日常を楽しみたいんだ」
続けて和真はその言葉の意味を丁寧に説明し、玲奈に納得してもらう。
「女として見ている」「非日常を楽しみたい」
その2つの言葉に嘘はなかった。
だが5日間一緒にいて和真は発見したことがある。
― この人といると、本当に、本当に、本当に、楽しい。
他の女性と比べることは失礼だとわかりつつ、和真は「今まで付き合ってきた女性よりも、前妻よりも、玲奈と一緒にいるのは楽しい」と感じていた。
楽しませるつもりが、和真自身もずいぶん楽しめた。
― でも…。
いや、だからこそ、男女の関係になることが和真は怖かった。
素敵な女性を前にして、男が抱えてしまう“ある悩み”とは?
1人で戻ったホテルの部屋で和真は考え込んでしまった。
― 彼女が男だったらな…。
玲奈は金銭欲と出世欲が強いことを隠さない女性だった。
キャリアアップのため7度も転職したことからもわかる。
ハワイで過ごした5日間で、業種は違えど和真と玲奈は仕事の話で大いに盛り上がった。まるで男同士のように。
特に「クライアントが人間的にすごく嫌なヤツだったらどうするか?」という話題では、意気投合した。
2人の意見が「仕事を断る」「もっと高みを目指したい。嫌なヤツの相手をしている暇はない」で一致した。
玲奈と話していると、美大時代の男子学生と酒を飲みながら夢を語り合ったころを思い出す。
― もし、彼女が男だったら親友になれただろう…。
が、玲奈は女性だ。しかも、とても魅力的な女性だ。
彼女の試すような言葉や大胆不敵な行動に、和真は惑わされ、異性として意識しないわけにはいかない。
それに、彼女も和真のことを異性として意識している。
非日常のハワイの空気がより一層、2人の気持ちを加速させる。
― だからといって男女の仲になってしまったら…。
和真は、二度と結婚しないと決めている。つまり、もし玲奈と付き合ったとして、彼女が結婚を望むなら、2人の未来には別離しか待っていない。
別れた男女が「友達同士」に戻るケースは、ほぼない。
つまり玲奈と付き合ってしまえば、大事な親友候補が1人減ることになる。そんな事態は避けたいと思う。
和真は「男女の間に友情は成立する」と思っている。同じような考えの男性は、女性が想像するよりもはるかに多い。
ところが「女なら誰でも抱きたい派」の一部の愚かな男性たちのせいで、すべての男性たちがそうだと誤解されているのだ。これは、世の多くの男性が抱えている“悩み”でもある、と和真は思う。
― 玲奈もおそらく男のことを、というより俺のことを誤解している。俺たちの間に生まれるのは「恋愛感情」とか「性欲」だけで「友情」は生まれないと思っているだろう。
実際、2回のデートと、5日間ハワイで共に過ごした玲奈は「この男はアリかナシか」という目で和真を見ていた。
翌朝、ホノルル空港まで見送ると玲奈が言う。
「東京に帰って日常に戻ったら、またデートしてくれる?」
「もちろん」
和真は即答した。
玲奈は今はまだ、和真のことを「恋人候補」として見ている。
でも一夜明けて和真の腹は決まっていた。
― 彼女とは親友になりたい。
その先に何があるのかはわからない。恋愛感情が生まれる可能性も否定できない。
ただ今は友情を築きたいと強く思っている。玲奈という貴重な存在を失いたくないから。
― 彼女のように話が合う相手なら、2人で会ううちにわかってくれるはずだ。
東京に戻ってから、そのことを確かめるつもりだった。
東京に戻って…
東京に戻ってから和真と玲奈は何度か2人きりで食事にいった。
玲奈はいつも「今日こそ告白される」と思っていたようだ。それは彼女の言動から一目瞭然だった。
なにしろ玲奈は、和真と2人きりで会うことを「デート」と表現する。
「男女間に友情は成立するよね?」「友達から発展する恋もいいよね?」
和真は様々な角度で「まずは玲奈と友情を築きたい」とアピールした。
しかし、それが伝わることはなかった。
「男女間に友情は成立する。でもそれは一般論で、私たちには関係のない話。私と和真さんはお互いを恋人候補として見ている」
口には出さなかったが、玲奈はそんなふうに思っていることは明白だった。
次第に和真は疲れてしまった。
◆
こうして玲奈との関係は終わった。
しかし数年後、ふたたび玲奈との未来が切り開かれることを、2016年時点の和真は想像もしていなかった。
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2017年の和真が出会ったのは、モテることに疲れた美女…。