「彼と5日間も一緒のホテルに泊まったのに…」手を出されなかった女は、しびれを切らし…
ハイスペ男に“選ばれる女”は、一体何が違うのか?
「俺は結婚に向いていないし、結婚しなくても十分幸せだ…」
と、思っていたバツイチ男が“ある女”と再婚した。
彼の結婚の決め手は何だったのか――。
6人の女性の中から、彼に選ばれたのは誰?
▶前回:結婚願望のないハイスペ男が“結婚”を決意。絶対手に入れたかった女とは
Case1:2016年の玉城玲奈(29歳)
有名人の不倫騒動で世間が騒がしい2016年。
だからというわけではないが、玉城玲奈は出会ったばかりの男に警戒心を抱いている。
学生時代にグラフィックデザイナーとしてブレイクし、その後は起業家としても活動している桜井和真だ。
名前こそ知らなかったが、彼が手掛けた人気ユニットのアルバムジャケットは、よく知っている。
出会った食事会の場で、玲奈は、酔った勢いで年収を尋ねた。
すると、和真は「隠すことでもないので」と前置きして「去年は、手取りで年収は4,000万ほどでした」と即答してくれた。
その瞬間、同席していた男性陣が一斉にうつむいたことを、玲奈は見逃さなかった。
後日、玲奈から誘う形で焼鳥デートした際、和真は「実は最近、離婚したばかりなんです」と教えてくれた。
“妻とうまくいってない”と適当な嘘をついて玲奈を誘ってくる既婚男は、想像以上に多い。
だから、「離婚したばかり」という和真の言葉を初めは信じられなかった。
和真は、年収も容姿も、そのうえ人当たりも良かったから、そんな男の妻の座を降りる女性がいることが、玲奈は信じられなかった。
― 本当に離婚したの?そう言って、実は奥さんがいるんじゃないの?
だが、和真と出会って1ヶ月後に、玲奈は警戒心を抱いたまま、彼と一緒に海外旅行にいくことになる。
行先はハワイ。
どうして玲奈は和真と一緒に海外旅行に行くことになったのか?
沖縄出身の玲奈は、すっぴんで朝を迎えたベッド上で男性から「えっ?いつの間にメイクしたの?」と言われるほど、はっきりとした顔立ちだ。
顔からして意志が強そうとよく言われる。
2005年、玲奈は、東京に出たいという強い思いだけで18歳のときに上京した。そして、生活費のために人材派遣会社で事務のアルバイトを始めた。
そのときは本当に「とにかく東京で暮らし続けたい」という思いだけだった。が、働き始めるとすぐに「お金を稼ぐこと」「人から評価されること」の楽しさを覚える。
気づけば、より良いキャリアを求めて転職を繰り返すようになり、現在は8社目にあたる富裕層向けの不動産仲介会社に勤務中だ。肩書はマネジャー。29歳となった今、同世代の男女を上回る年収を得ている。
「すごいね。やっぱり意志が強くないと歩めないキャリアだよね」
玲奈が東京で過ごした11年間を知ると誰もが言うが、いつも彼女はこう切り返す。
「というより、私は金銭欲とか出世欲が人より強いんだと思う。『稼ぎたい』とか『評価されたい』って願望に妥協したくないの」
玲奈は男選びに関しても妥協を許さない。
そんななか、出会った同い年の和真は、玲奈にとって理想の男性だった。中高でバスケットボールをしていた影響からか 、身長は180cmほどあり、手足もすらりと長い。 ほどよい筋肉質な体格も玲奈好みだ。
見た目だけでなく中身もよかった。
SNSのフォロワーが5万人いる人気のデザイナーだが、同世代男性が陥る“仕事自慢”をしない謙虚さと、年収も離婚歴も離婚理由も言いにくそうなことも即答してくれる素直さを兼ね備えている。
結婚した経験があり女性の扱いに慣れているのか、レディファーストも徹底している。彼は、単にモテるだけのチャラ男とは違う気がした。
― これがバツイチの魅力ってやつかな?
玲奈は、最初に会った時、和真に好印象を抱き、1回目のデートで異性としてすっかり惹かれた。
だから店を出たあと、2軒目に誘われないことが少し寂しかった。
2回目のデート
しかし2週間後、2回目の焼肉デートのときに、彼から意外な場所へ誘われることになる。
「6月から7月にかけて1ヶ月ぐらいハワイで過ごそうと思ってるんです。もし良かったら、遊びに来ませんか?」
「え?いいんですか?」
ひとまず社交辞令で返すと、和真は微笑んだ。
「もし本当に来ていただけるなら、同じホテルの中に玲奈さん用の客室を予約しますよ」
玲奈を海外旅行を誘ってくる男性はこれまで何人もいた。なぜか、グアムが多いのだが。
いずれも、付き合ってもいないし、肉体関係もない男たちだ。 海外を餌に関係発展を望むなんて気持ちが悪い。だから、玲奈は、これまで誘いに応じたことはなかった。
しかし和真は、肉体関係を迫るどころか、手すら繋いでこない雰囲気がある。だから気になった。
― 和真さんは私のこと、どう思っているのだろう?
別部屋を用意してくれたといっても、男と女。
実際どうなるかはハワイに行ってみないとわからないし、心の奥では、和真となら関係を発展させても構わない、と玲奈は思った。
「ぜひ行きたいです!」
ハワイで過ごした5日間
「見てください。あのシャワーツリー」
ワイキキ、カラカウア通りに面したカフェのテラス席。
トムフォードのサングラスにヨウジヤマモトの上品なアロハシャツを着た和真が、色鮮やかに花を咲かした木々を指差す。
「日本では梅雨のころが、ハワイは最高の季節なんです。あのシャワーツリーもこの時季しか咲かないですし」
玲奈にとって、2年ぶり4回目のハワイだ。しかし、6月に来たのは初めてでシャワーツリーの存在も知らなかった。
「玲奈さんはハワイにいる間にしたいことって何かあります?」
1ヶ月間、ハワイに滞在する和真と違って、玲奈は5日間しかいられない。
「和真さんにお任せしてもいいですか?」
玲奈は、試していた。
部屋も別々だし、まだ、互いに敬語で、名前もさん付けで呼んでいる。そんな関係性でハワイに誘ってきた男が、一体どうやって楽しませてくれるのかを。
ハワイ最終日の夜に、しびれを切らした玲奈は・・・
結果的に玲奈は申し分ない5日間を過ごした。
好天のもとオアフ島内を周回するようなドライブ。日本ではやる気が起きなかったゴルフ。夜のビーチの散歩。東京にはない雰囲気のレストランでの食事。
どれも最高に楽しかった。
「毎日一緒にいると疲れてしまうかもしれないので、単独行動の日も用意しようと思いますが、どうですか?」
合流初日にそう言われたが、結局、5日間すべて行動を共にした。
会話も自然に無理なく弾んで、居心地も良い。
ただ、やはりと言うべきか、和真は一切手を出してこなかった。
触れたとしても、人混みをかき分けるときや、レストランに入るときなど、そっと背中に手をやってエスコートしてくれるぐらい。逆に玲奈は、不安になる。
「私のこと、女として見てない?」
最終日の夜、ホテルのビーチバーで玲奈は尋ねる。辺りは暗く、自分の表情は読まれないと思うと大胆になれたのだ。
「女として見てるよ」
いつしか2人の会話から、敬語が消えている。
「じゃ、どうして部屋に誘ってこないの?」
挑発するように玲奈が言う。
「今は、非日常を楽しみたいんだ。吊り橋効果じゃないけど、人間って非日常を過ごすと相手を好きになりやすいだろ。
だから、こうしてハワイにいるあいだは、玲奈さんも俺も相手に対してフィルターがかかってる。お互い、何割か増しで好意的に見えているはず。この状況も悪くないって思うから」
和真の言葉を聞いて玲奈はうなずきながら答える。
「わかる気がする。この5日間は、酔っ払ってる状態というか…。発する言葉の一つひとつが、深夜に書いたラブレターみたいな感じ」
「そうなんだ。でも、そういう状態も楽しいよね?」
「うん」
「だから、今はそんな非日常を楽しみたいんだ」
和真の言葉はそこで終わった。
玲奈は、ホテルの部屋に帰り、シャワーを浴びたあと、1人でベッドに潜り込んだ。しかし、まったく眠れなかったので、この5日間を振り返っていた。
― 和真さん、本当に素敵な人だったな…。
海外旅行は非日常だからこそ、日常ではわからないその人の本質が見える瞬間もある。その点で和真は合格だ。
嫌味のないエスコートはもちろんだが、緊急事態の対応が満点だったのだ。
2日目にドライブした際、地元のパトカーに車を制止させられて警察官に尋問された。
腰ベルトの拳銃に手をやりながら近づいてくる警察官を見て、玲奈は内心パニックだったが、和真は冷静だった。車を降りて流暢な英語で対応し、最終的には笑顔で警察官と握手をして、戻ってきた。
「指名手配されてる地元の男と、僕の顔が似てたみたいです。パスポートを見せて日本人だって話したら『sorry』だって。笑えますね」
和真が、そう言って白い歯を見せて笑った瞬間、玲奈は恋に落ちた気がした。
― 東京に戻ったあと、和真さんとの関係をもっと深められるかな。
期待と不安が入り混じった気持ちを抱えながら、玲奈は眠りについた。
◆
翌朝、ホノルル空港まで見送ってくれた和真に、玲奈は言った。
「東京に帰って“日常”に戻ったら、またデートしてくれる?」
「もちろん」
和真が即答した。
東京に戻って・・・
東京に戻ってから玲奈と和真は何度かデートした。
玲奈はいつも「今日こそ告白される」と思ってデートに挑んだ。
しかし、和真から告白されることも、口説かれることも、部屋に誘われることもないまま、2016年の年末になると会うことすらなくなった。
― 私の何がいけなかったんだろう?
出会ってすぐにハワイ旅行についていくような尻軽な女だと思われたのか。
酔っ払った勢いで「女として見てないの?」「どうして部屋に誘わないの?」と聞いたことで嫌われたのか。
あるいは他にも女性がいたのか。
聞けるものなら和真に直接、聞いてみたかった。
― 和真さんは、どうして私を選ばなかったのだろう?
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Case1の回答編。玲奈と付き合わなかった理由。それは和真だけでなく、多くの男性に共通する“ある悩み”だった。