高齢化や人口減少が深刻化するなか、公共交通など地域の移動手段の確保が課題となっています。

課題解決の1つとして栃木県などがAIを活用した自動運転バスの実証実験を県内各地で行っています。

今後のバスの導入に向けた課題や展望について取材しました。

一見、何の変哲もなく町を走るバス。しかし、ドライバーの手元をよく見るとハンドルには触れていません。バスは自動で運転されています。

県は2025年度からの本格的な運行を見据え自動運転システムを導入した路線バスの実証実験を昨年度からの3年間で中山間地域や市街地など県内10カ所で行っています。その背景とは・・・。

県県土整備部交通政策課 牛久益雄総括:「高齢化や人口減少、それらの問題が深刻化しているなか、高齢者をはじめとした地域の皆様の移動手段の確保であるとかバス運転手の不足、また公共交通の利用者が減っている課題が問題になっている。そのため県ではAIを活用した自動運転サービスの導入がこれらの課題を解決する1つの非常に有効な方策であると考えている」

1月、小山市のJR小山駅から白鷗大学大行寺キャンパスまでの片道およそ1.8キロメートルの区間で自動車や歩行者など交通量の多い市街地で実証実験が行われました。

実際に市内を走るコミュニティバス「おーバス」と同じ形の車両にレーザーセンサーやカメラを搭載して周囲の障害物などを検知するほか、人工衛星からの電波を受信して車両の走行位置を特定する技術を採用しています。

また、車両だけではなく道路側にもセンサを設置して危険情報をバスに送信するなど道路側のインフラ整備の有効性についても検証しました。

県県土整備部交通政策課 牛久益雄総括:「国道4号との交差点では信号からあと何秒で青信号が赤に変わるというような情報を車両に提供していただくことで黄色信号で交差点に進入するという危険な行為や交差点手前で急ブレーキをかけて停止するというような行為を防ぐことができます。白鷗大学入口の交差点では道路に設置したセンサーが対向車両や横断待ちの歩行者、自転車を察知してその情報を車両に送ることでより安全でスムーズな運行が可能となっている」

実験で既存の停留所のほかに新たに6カ所設置して利便性を検証したり、一般の人に自動運転を体感してもらったりしました。

乗車した子ども:「自動で運転していたのですごいと思いました。信号の残り秒数とか知れて良かったです」

乗車した女性:「普通に運転されているようで自動っていう感じかしなかったです。それぐらいスムーズに乗れていたのでとても良かったです」

乗車した男:「信号に対してちゃんと止まっているセンサーの状況とかみて車だったりとか他の障害物を検知してるってところで安全に配慮した運転ができているなと思いました。今後、自動運転が進んでバス停がどんどん増えても対応できるようになったりとか、もっといけばバス停がなくても人がいることを検知して乗れるとかそういう仕組みができればもっと利用しやすくなるんじゃないかと思いました」

県によりますと、去年6月に茂木町の実証実験で行ったアンケートでは乗車前はおよそ3割の人が不安と回答しましたが、乗車後は1割以下に減少したということです。

一方、ドライバー不足が課題となっているバスの事業者は自動運転をどのように捉えているのでしょうか。

関東自動車 吉田元社長:「将来的に自動運転バスが導入されていけば運転士の担い手の部分を補っていけるのかなと。技術が進歩すればするほどプロのドライバーが運転する以上にもしかしたら安全・安心を提供できるバスになりうるのかなというふうに考えています」

実証実験を通して得られることは。

関東自動車 吉田元社長:「こういった研究ないし実験を通じて過渡期としてバスの安全支援というかそういったテクノロジー、技術というのは少しずつバス側に入っていくことは可能かなと思っていて、そうするとプロの運転士の力量だけでなく機能的に安全面が進化していくことは過渡期としては見込まれるかなと思っています」

しかし、自動運転バスの導入に向けては解決しなけらばいけない課題もあります。

関東自動車 吉田元社長:「課題としてはやはり技術的な面とかおそらく車両価格が非常に高くなるのではないか。そういったところが実際の導入に当たってはハードルになっていく。車両そのものだけではどんなに進化しようが信号の協調とか、そういったところも非常に大きなポイントになる。あらゆる関係者が一緒になって取り組まないといけない。いつになるか分からないが完全自動運転の方に社会の環境変化とともに我々もそういう運営をしていくことになる」

実証実験は2月末から壬生町のわんぱく公園、春に塩原温泉などの観光地、そして10月はとちぎ国体の開催に合わせて実施する予定です。

県県土整備部交通政策課 牛久益雄総括:「実験で得られた知見や実際に乗って頂いた方の意見を参考にして交通事業者や市町と協力しながら自動運転バスの社会実装に向けて取り組んで参ります」