わいせつ物頒布などの疑いで逮捕された元ユーチーバーの男(手前)=読者提供

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(台北、新北中央社)人工知能(AI)を使った「ディープフェイク」の技術で有名人の顔を合成したアダルト動画(AV)を有料配信し、有名人の名誉を傷つけたとして、内政部警政署刑事警察局は17日、元人気ユーチューバーの男ら3人をわいせつ物頒布や名誉毀損などの疑いで逮捕した。顔をすり替えられた被害者はインフルエンサーや芸能人、政治家など100人以上に上るという。

警察によれば、3人はAV出演者の顔を有名人にすり替えた動画を制作。短文投稿サイト「ツイッター」上に広告を出して有料会員を募り、インターネット上で動画を公開していた。動画は昨年7月からネット上に出回っていた。今年10月初旬までに集まった会員は8000人を超え、3人は約1100万台湾元(約4500万円)の収入を得ていたという。

3人の身柄は18日、台湾新北地方検察署(地検)に送られ、検察は同日、元ユーチューバーの男を保釈金30万元(約120万円)で釈放した。この男は「小玉」の名前で活動しており、ユーチューブのチャンネル登録者数は140万人を超えている。

▽蔡英文総統「座視できない」

蔡英文(さいえいぶん)総統は18日夜、フェイスブックで、アダルト動画の顔をすり替える犯罪などインターネット上でのさまざまな性的暴力に対し、法改正を検討すると表明した。

蔡総統は、科学技術は人類の生活をより良くするものであり、他人を傷つけるために使うべきではないと呼び掛けた上で、「これらの被害者は私たちが関心を向ける対象や私たちの家族や友人であるかもしれない。これらの出来事が起こるのを座視できない」とつづった。

▽法務部、1カ月以内に刑法改正案を提出へ

蔡清祥(さいせいしょう)法務部長(法相)は19日、立法院(国会)での答弁で、AIを利用して顔をすり替えた動画の配布に対する処罰が現行法では「軽すぎる」との見方を示し、学者の意見を聞き取った上で1カ月以内に刑法改正案をまとめ、行政院(内閣)に提出する考えを示した。

(黄麗芸、王国鴻、温貴香、郭建伸/編集:名切千絵)