日本代表チームの新主将を務める桃田【写真:平野貴也】

写真拡大

スディルマンカップへ向けてフィンランドへ出発

 東京五輪の惨敗を糧に、パリ五輪での飛躍を目指す。バドミントン日本代表が21日、男女混合対抗戦スディルマンカップが行われるフィンランドへ出発した。チームの新たな主将となった桃田賢斗(NTT東日本)は「(勝って)乗っていけるかどうかで個人戦の勢いも変わってくると思うので、まずは団体戦をチームジャパンとして勢いに乗れるように」と意気込みを語った。副主将は、女子の高橋沙也加が務める。

 桃田は、主将となって新たな形でプレッシャーと向き合う。世界選手権を2018、19年と連覇し、世界ランク1位をキープし続けた実力から、今夏の東京五輪では金メダル候補として期待を受けていたが、重圧によって本来のプレーを発揮できず、まさかの予選ラウンド敗退に終わった。

 試合後、3日ほどは考え込んだというが「自分の順位、目標とする設定に対して、気持ちが強すぎて空回りしてしまった。自分との向き合い方は、もっと楽にじゃないけど、柔らかい感じで、張りつめ過ぎず、柔軟に対応できるようなメンタルでいれたらいいかなと思う」と一度リラックスした状態に戻して自然体で臨む姿勢を示した。

 しかし、勝負が始まれば、重圧との戦いは避けられない。今回の欧州遠征は、新生・日本代表の船出となる。男子ダブルスは遠藤大由(日本ユニシス)、園田啓吾/嘉村健士(トナミ運輸)が代表を辞退。若いペアに切り替わるタイミングとなる。団体戦では特に、シングルスで経験のある桃田がエースとして絶対的な信頼に応える勝利を挙げることが、重要なポイントだ。

 最初のスディルマン杯は、前回大会で準優勝。序盤の2種目で敗れ、3種目目だった男子シングルスで桃田が石宇奇(シー・ユーチ)に1-2の逆転負けを喫して0-3で中国に敗れた。後がない状況で気負い、ハイペースで第1ゲームを取ったものの、第2ゲーム以降はスピードが落ちて逆転された。状況に左右されず、自然体で力を発揮するスタイルで、桃田が重要な場面でしっかりと力を出すことが、悲願の初優勝への鍵となる。

学生時代以来の主将に「取り組む姿勢で示していけたら」

 日本は、遠征の最初の大会となるスディルマン杯と、続けてデンマークで臨む男子団体戦のトマスカップで、強豪のマレーシアと同組。桃田は、2020年3月に14か月ぶりの国際大会出場となった全英オープンで敗れたリー・ジージャとの再戦が見込まれる。朴柱奉ヘッドコーチによれば、現在は五輪後に休んだ後でトップフォームには戻っていないというが、どんな戦いを見せるか楽しみだ。

 朴ヘッドコーチは「キャプテンのイメージを持ってやっていければ、雰囲気が変わるかなという部分も考えた」と、東京五輪の惨敗から這い上がる桃田に、新鮮な視線を与えたかった意味合いも持って主将に指名したことを明かした。桃田が主将を務めるのは、学生時代以来だが、こちらも自然体で臨むつもりだ。主将としての取り組みについては「言葉ではあまり上手く伝えられないので、取り組む姿勢で示していけたらいい。理想は、背中を見せて引っ張っていく感じですけど、それはできないので、みんなに頼りながら、チームの一人ひとりが自覚を持ってやっていけたらいいかなと思う」と肩ひじを張らずに答えた。

 日本代表は、スディルマン杯後にデンマークへ渡り、男女別の団体戦トマスカップ&ユーバーカップに参戦。さらに個人戦のデンマークオープン、フランスオープンと欧州で4大会を転戦し、6週間の長期遠征となる。チームとしても、個人としても東京五輪後の再出発だ。当然、次の目標は2024年パリ五輪となるが、桃田は「出られるなら出たいですけど、まだそこは、見ていない。積み重ねの先にあればいい。五輪の結果で、しっかりと自分の順位というのが分かった。変なプライドは捨てて、ゼロからチャレンジャー精神で向かっていけたらいいかなと思います」と決意を語り、リスタートの舞台へと旅立った。(平野 貴也 / Takaya Hirano)