7月22日(木・祝)より公開のアニメーション映画『サイダーのように言葉が湧き上がる』。3⽇(⼟)に未来のクリエイターである東放学園映画専⾨学校のアニメーション・CG科の1、2年⽣ら85名が公開に先駆けて映画を鑑賞、イシグロキョウヘイ監督と尾留川宏之プロデューサーが登壇し、ティーチインを行った。

本作は、フライングドッグの10周年記念作品として企画されたオリジナルアニメーション映画。登壇したイシグロ監督と尾留川プロデューサーは、当初企画されていたものとは全く違う映画となったと語りつつも、「原作のある作品は迷ったときに原作に立ち戻ることはできるけれど、オリジナル作品で大変なのはよりどころは自分自身だということ。自分自身のイマジネーションに答えがあるし、それを期待されているとも感じていました」(イシグロ)、「プロデューサーは自分が信じた人と心中する覚悟が必要。自分自身が作業をするわけではないので、信じた才能を信じ続けることです」(尾留川)と語った。

ときにアニメファンから聞かれる意見の一つ、「キャストが発表されたときに声優じゃないとがっかりする?」とイシグロ監督が会場で問うと、40%ほどの学生が“がっかりする”と答えた。それについて、制作の最前線にいるイシグロ監督は「でもさ、本当は声優かどうかは関係なくて、その声が“キャラクターにあっているかどうか”なんだよね。宣伝的要素を考えれば、声優よりも顔出ししている俳優の方がいいということもあるかもしれない。アニメファンから上がるそういう声もわかるけれど、キャラクターではなく、その声優さんが好きなだけではないか?ということもある。これから監督や演出を目指す人は、『声優でないと』という固定観念は捨てて、フラットな気持ちをもった方がいいと思います。演じる人の声がキャラクターに合っているかということが一番大切で、貫き通すことの難しさをこれから仕事をし始めて実感するんじゃないかなと思う」と語った。

また、作品のアイディアの思いつき方についてイシグロ監督は「演出やシナリオは、学生時代突き詰めていたものからのインスピレーション。僕の場合は音楽的なものに惹かれます。働き始めたらアウトプットの連続で、好きじゃないものをやったりしなくてはいけない。今、皆さんに伝えたいのは“学生時代に自分の好きなものを突き詰めておいた方がいい”ということ」「みんな仕事を始めると作ったものを人にチェックされる立場からスタートします。今の僕の立場(監督)は否定する立場なんですよね。作品にとってこれが正解だと説明すること。集団作業にはリテイク内容は具体的に伝えることが大切。批評と批判は違うということですね」と、体験談を語り、アニメ以外にも共通する“仕事論”にも花が咲いた。

また、アニメーション業界では賃金や労働時間など“働き方”も昨今話題になるが、イシグロ監督は「特に絵描き(アニメーター)を目指している子は生活不安じゃない?僕は制作進行という制作側からこの業界に入っているのですが、大手の正社員も多いし、生活するお金はあまり心配しなくていい。けれどアニメーターはフリーランス・個人事業主になることが多いので、お金面・・・貯金や実家・友人など“避難場所”があったほうがいいと思います。アニメーターになった年に貯金が100万円なくなった、という人もいます。僕もフリーランスになった最初の年の2ヶ月目で生活費がなくなりました。そういう意味でアニメーターはハンデがある。でもその中で飛び込んで結果を出したら、自分の年齢の平均年収なんてもんじゃないくらい稼げる!だから夢があるよ。作画関係で僕がいいなと思っているところは、男女の差・キャリア、関係ない。絵での勝負なんです。だからねじ伏せる才能があったらなんのストレスもなく仕事ができます。すごくいいことだと思う。夢を持って飛び込んでほしいと思います」と今の現場のリアルを明かした。

この作品で伝えたかったことについては、言葉についてのこだわりについて質問を受けた際、「文字と声の違いは、文字は意図した通りに伝わりづらい。声は意図した通りに伝わりやすいが、失敗したときにダメージを受けやすい、ということだと思う。本当に大切なことを伝えるときには、対面で直接言え!ということだと思います。気持ちをぶつけるためには自分の身体性を持って、恐れずにやってほしい!」と熱く語ったイシグロ監督。ティーチイン終了後も学生同士で語り合うなど、クリエイティブだけでなく「仕事」についても考えられる有意義な時間となった。

映画『サイダーのように言葉が湧き上がる』は7月22日(祝・木)より全国公開

(C)2020フライングドッグ/サイダーのように言葉が湧き上がる製作委員会

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