クルマのエアコン吹き出し口に取り付ける小さな「クリップ型」の芳香剤が近年人気です。これに、家庭用の消臭剤などのブランドも続々と進出。人気に火をつけたのは、あるブランドの戦略でした。

クルマ用芳香剤の黒船? クリップ型登場の背景

 クルマの芳香剤で近年、エアコンの吹き出し口に取り付ける「クリップ型」のタイプが増えてきました。従来は車内に置くボトルタイプや吊るすタイプの商品が多かったところ、2021年現在、カー用品店だけでなくホームセンターやスーパーなどでも、クリップ型の商品が一定の面積を占めています。

 しかもそれらは、「ファブリーズ」や「消臭元」「サワデー」「ランドリン」「ラボン」といった家庭用芳香・消臭剤ブランドの商品が目立ちます。従来型の商品にはあまり見られなかったことで、家庭用ブランド各社がクリップ型芳香剤に続々と進出したことが伺えます。


ファブリーズのクリップ型芳香剤(乗りものニュース編集部撮影)。

 小さいうえに、ひとつ数百円と手ごろなクリップ型は、オートバックスを展開するオートバックスセブンも「かなり支持されているのは間違いありません」とのこと。同社も2019年からプライベートブランドのクリップ型芳香剤を展開しています。

 ただ、そもそものヒットのきっかけは「ファブリーズでしょう」とキッパリ。そこで、ファブリーズを展開するP&G(プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン)へ、クリップ型芳香剤について聞きました。

――ファブリーズのクリップ型芳香剤は、いつ頃から販売しているのでしょうか?

 2012(平成24)年4月に販売を開始いたしました。アメリカに続き世界で2番目の発売でした。

――ボトルを置くタイプや、吊るすタイプではなく、なぜクリップ型の商品を多く展開しているのでしょうか?

 一番の理由は、エアコン吹き出し口につけることで、気流を利用し車内のすみずみまで有効成分を届けることができるからです。これにより、ファブリーズの場合、シートに染みついた臭いにも対応する高い消臭・防臭効果を実現しました。

 また、エアコン使用時に車内で循環される空気を利用し、防カビ成分をエアコン内部にまで最大限に届ける「防カビエキスパート」シリーズもあります。湿気の多い時期には特にオススメです。

クルマの変化も影響か?

――ファブリーズは家庭用のイメージがありますが、クルマ用に展開するのはなぜでしょうか?

 もともとファブリーズは、洗いにくい布用アイテムの消臭・除菌ケアをする布用スプレーから始まったブランドですが、「爽やかな空気を提供する」という使命を果たすために、多様化する消費者ニーズにお応えしながら様々なラインナップを展開してきました。クルマ用のシリーズもその一環です。

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 オートバックスセブンもまた、エアコンの風で消臭・芳香効果がいき渡るのは画期的だったといい、加えて「テレビCMなどで、それをわかりやすく示したP&Gさんのプロモーションも素晴らしかったと思います。ファブリーズが“家だけ”“服だけ”じゃないことを示したといえるでしょう」と振り返りました。

 ただ、クリップ型が支持される理由は、それだけでもないようです。


クリップ型は海外でも見られる。クアラルンプールにて(画像:nizamkem/123RF)。

「最近のクルマはダッシュボードに物を置かなくなっています。セダンなら、後席の後ろのスペースに箱ティッシュなどと一緒にボトル型の芳香剤も置けますが、セダンも少なくなっています。クリップ型は場所もとらず、取り付けたことによる日焼け跡もないことから、リピーターになる方がいます」(オートバックスセブン)

 その一方で、従来のボトルタイプの芳香剤も数多く、ニーズも高いといいます。「最近はクリップ型も見た目重視になってきていますが、ボトルタイプもラインアップが広がり、ドリンクホルダーに置けるタイプなどもあります」とのことです。