ニコンのミラーレスカメラは業界では後発にであったのにも関わらず、登場時には最新技術の瞳AF非搭載や動画機能などでニコンらしさや光るモノがなかったように思えた。
しかしそこはニコン。アップデートを重ねることで瞳AFや動物の瞳AFに対応するなど、最新技術を順次取り入れ、不満点を潰していくとともに外部記録装置を使った動画撮影機能を追加するなど、他社にはない魅力を作り上げることに成功している。

ニコンは、デジタル一眼レフカメラとは異なり、ミラーレスカメラはアップデートを重ねて完成度を高めていく製品であるという方針をしっかりと打ち出したように思う。

初代モデルのアップデートにより実現した完成度を、ハードウェア面で高めた製品がII型である。現在(2021年5月)は、初代モデルとII型が併売されており、十分な機能を搭載しながら価格がこなれた初代モデルを選べるのも嬉しいところ。

今回はこのII型となるZ 6IIとZ 7IIを、実際のライブイベント撮影に持ち込んでの使い勝手についてレポートしたいと思う。

はじめにZ 6IIとZ 7IIについて紹介しておこう。

Z 6IIは最大秒間14コマの連写速度を持つ2450万画素モデル。
Z 7IIは最大秒間10コマの連写速度をもつ4575万画素モデル。
キャラクター的には初代モデル同様に、
・Z 6IIは、動画に強いオールマイティーモデル
・Z 7IIは、風景写真や広告写真など解像度が必要な撮影に適したモデル
こうした位置付けだ。

外観や使い勝手は同一であり、上下機種というわけ方ではない。
このため、使用方法に合わせた選択をすれば、性能がたりないという後悔をすることはない。

実際に今回レンズを変えながらZ 6II、Z 7IIと使い分けてみたが、どちらも同じように使うことができた。静止画撮影において、高速連写を必要としない場合は最終出力の解像度が違うだけという認識は間違っていなかった。

まずは、超広角ズームレンズ「NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 S」から試してみた。ライブ撮影では、最前からステージの雰囲気を伝えるには超広角レンズが必要となるが、まさにその撮影を実現するレンズがこのレンズである。







14mmという超広角であるにも関わらず、周辺の描写も問題ない。そして歪みも感じないパーフェクトなレンズだ。超広角ならではのパースが出せるので、見上げた構図などでは迫力のある構図で演出することができるのが強みである。




望遠端24mm側も十分広角なのだが水平を意識することで、パースの強調を抑えた落ち着きのある雰囲気に仕上げることができる。


歪みを感じない14mmの安定感



24mm側も同じく直線が綺麗にでる


標準ズームレンズ「NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S」は、バックステージやオフショットの撮影には適しているが、ライブの撮影では寄りも引きも足りず使い勝手が難しいレンズだ。ライブ撮影では、被写体の切り出しよりは全体をおさえておくような使い方をしている。


舞台袖から24mm側でステージの状況を説明



こちらはカメラをローポジションにして照明を入れた状況の説明カット



35mmぐらいまでズーミングするとパース感が弱まり、安心感、安定感が増す



70mmの望遠なら背景のボケで被写体を浮き上がらせることができる


望遠ズームレンズ「NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR S」は、被写体の切り出しや状況を伝えるためにはなくてはならないレンズである。ズームレンズとは思えない解像感とクリアな描写が魅力的で、Zマウントのレンズで絶対買っておいて損がないオススメのレンズだ。


水平垂直を出すことができれば静の演出ができる。動きのあるカットにこうしたカットを入れることでメリハリを付けることができる















顔認識・瞳AFのおかげで手前のユーホニウムではなく顔にピントが合っている



24-70mmと同じステージ袖からの撮影だが、望遠200mmならさらに大きなボケで被写体を演出できる


―撮影協力―
C;ON(シーオン)
twitter:https://twitter.com/c_on_official
webサイト:https://www.con-music.com/


今回長期レポートをする機会があり、ファームウェアVer.1.10(2021年5月の時点での最新ファームウェアはVer.1.20)のアップデートも試すことができた。

動画機能のアップデートがメインだが、スチルでは瞳検出の性能向上を謳っている。
実際に試してみたところ、顔を認識することができれば、ほぼ瞳にAFポイントが追従するようになったことが確認できた。





























屋内で動きも多い被写体ということもあり、100%ピントが合っているというわけではないが、使えるカットが増えている。

ステージまでの距離が15〜20mぐらい離れていたためか、NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR S望遠端の200mmでも大きく写すことができない。




こうしたシチュエーションで使えるのがZ 7IIの高画素4575万画素からの切り出しだ。
試しでSNS用に、8256×5504ピクセルから長辺2048ピクセルをトリミングしてみた。ここまで実用になる解像度でズームアップできるので、撮影中に望遠側が足りないとあきらめず、トリミングを考慮した構図づくりと撮影に集中したほうが良い結果をだせるだろう。




―撮影協力―
いちごみるく色に染まりたい。
twitter:https://twitter.com/ichigomilk_iro
webサイト:http://www.vbp.jp/ichigomk/

東京アイドル劇場
twitter:https://twitter.com/tokyoidolgekijo
twitter:https://twitter.com/shibuyaidol
webサイト:http://www.tokyoidolgekijo.com/


最後にファームウエアアップデート前後でも気になる点もあった。
顔認識されなかったときの挙動において、しばらく被写体を認識せずにピンボケが続くことがあった。他機種では、顔を認識できなくても近い被写体を見つけてピント合わせをするため、ピントが甘くても写っていることが確認できる。
しかしNikon Z 6II/Z 7IIでは、被写体をロストした場合、復帰のためのAF-ON操作を細かく行う必要があるように感じた。

オススメのレンズは何と言ってもNIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR Sだ。ライブインベントでの特典会ではNIKKOR Z 24-70mm f/2.8 Sがオススメである。


執筆  mi2_303