【いまだはっきりしない】日産エクストレイル新型 日本導入時期 欧州の次? 米では大成功
2020年度決算報告 赤字幅は縮小text:Kenji Momota(桃田健史)editor:Taro Ueno(上野太朗)
日産は2021年5月11日、2020年度決算報告をおこなった。
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この中で気になったのが、日本での新型エクストレイルの発売時期だ。
日産ローグ(エクストレイルの北米モデル) 日産
まず決算内容から見てみると、新型コロナ感染症の影響で上期にグローバルで販売台数減になったことが大きな要因となり、売上高は前年比で2兆163億円減少し7兆8626億円となった。
一方で、赤字幅は前年の6712億円から4487億円へと2225億円縮小した。
これは、アメリカでのインセンティブ(販売奨励金)を多用する安売り体質を見直す「販売の質」の改善を徹底したこと。またグローバルで様々な要因での最適化をおこなったからだと説明した。
具体的には、インドネシア工場の閉鎖、2021年12月にスペインのバルセロナ工場の閉鎖が決まったこと、そして各地の工場で就業体制を3直から2直に変更したことなど、生産体制の見直しをおこなった。
マーケティングやセールスではデジタルメディアへのシフトなど戦略的な資金配分を徹底し、モーターショーの開催についても適材適所での実施を徹底した。
一般管理費ではグローバルでの地域事業運営体制をこれまでの7つから4つに縮小して事業全体での効率化を図った。
さらに、商品については69車種から約55車種とし、これにより研究開発やデザイン開発の費用を抑えた。
こうした中、エクストレイル日本仕様はどうなるのか?
いまだはっきりしない日本導入時期
新型エクストレイルの登場を待ち望んでいる販売店やユーザーが多い日本。
周知の通り、日本市場では近年、アメリカ/欧州/中国などグローバルでの大きなトレンドであるSUVシフトが浸透してきたからだ。
日産パスファインダー 日産
とくにトヨタの場合、ランドクルーザー/ランドクルーザープラド/RAV4/ハリアー/ヤリス・クロス/ライズというSUVフルラインナップ体制を敷いており、ここに東南アジア等の海外で先行発売されているカローラ・クロスが加わる可能性もある。
一方、日産の場合、現状ではエクストレイルとキックスeパワーの2車種のみ。エクストレイルは2013年発売の3代目であり車歴は8年を超えており、時世を踏まえると4代目への一刻も早いフルモデルチェンジが望まれる。
日産の新車導入計画を俯瞰すると、2020年5月に発表した事業構造改革計画「ニッサン・ネクスト」では同月以降の18か月間でグローバルで合計12の新型車種を導入すると発表した。
その中には、世界市場向けキックスeパワー、北米向けローグ、北米向けパスファインダー、欧州向けキャッシュカイ、インド向けマグナイトなどの名前が挙がった。
その時点でも、日本向けエクストレイルについては明確な提示がなかったが、今回の発表でも……。
日産ローグがアメリカ市場で大成功
今回の決算発表で示された資料の中で、商品満足度という項目で、ローグが「北米日産で過去最高の購入者満足度」、キャッシュカイが「欧州日産で過去最多の予約注文」、そしてエクストレイルが「中国上海モーターショーで『ベスト・アップカミング・ニューカー・アワード』を受賞」と、新型エクストレイル絡みの様々な功績が讃えされた。
このうち、最も早く市場導入された北米ローグは、直近の2021年1〜3月期の販売台数は8万6720台となり、これは北米日産のSUV車種でのトップで、キックスの3倍、ムラーノの7倍、パスファインダーの約10倍という好調な売れ行きだ。
日産ローグ(エクストレイルの北米モデル)。直近の2021年1〜3月期の販売台数は8万6720台と好調。 日産
北米日産の乗用車部門と比較しても北米での主要分野であるC/Dセグメントセダンのセントラやアルティマ、それぞれの2.5倍に達する数字である。
また、新型ローグの台当たり販売奨励金を4.6%削減したことで、台当たりの販売価格は3.8%増となり、ローグは日産にとって実質的に大きく稼ぐクルマになっている。
ニッサン・ネクストでは、事業の「選択と集中」を最優先課題としており、グローバルで見てSUV市場が最も大きなアメリカでローグを先行発売する意義は大きく、その効果が明確に現われているということになる。
では、ローグの兄弟車、エクストレイル日本仕様はどうなる?
エクストレイル導入 欧州の次か?
決算資料の電動化の推進という項目で、2021年度以降のeパワー搭載車種として、エクストレイルeパワー販売は欧州のみとの記載がある。
前述のように2021年4月の中国上海モーターショーでは、エクストレイルとして発表されており、搭載ユニットはVCターボとしている。
日産ローグ(エクストレイルの北米モデル)が搭載するパワートレイン。 日産
一方、ローグは排気量2.5Lの直4ガソリンエンジンのみを搭載し、価格を抑えることで市場競争力を上げている。
そうした中で、日本向けエクストレイルには欧州同様に、1.5LのVCターボを発電機として使う、eパワーターボを搭載する可能性が高い。
同ユニットはすでに、エクストレイルとプラットフォームを共用する欧州キャッシュカイに搭載することが決まっている。
2021年2月に、日産が筆者を含む一部メディア向けにおこなったオンラインでのeパワー技術説明会で、開発担当者は「第2世代となったeパワーでは、既存のHR12型エンジンに加えて、日本を含めてグローバルでエンジンバリエーションを増やす」と明言していた。
決算での報告から推測するに、eパワーターボ搭載の新型エクストレイルは欧州で先行発売され、追って日本市場でも発売となると考えるのが妥当だ。
その時期については、2021年秋の東京モーターショーが中止となったいま、日産としては発表と発売のタイミングを精査していると思われる。