Netflix

アップルとEpic Gamesとの間で争われている、App Storeでの30%手数料をめぐる訴訟は、様々な機密資料が提出されることで直接関係のないソニーやFacebookにも飛び火しています。

そして新たに、アップルがiOS版Netflixアプリ内からの新規会員登録を止めさせまいと、多くの努力を払っていたことが明らかとなりました。

Netflixは2018年末に、iOSアプリにおける新規会員登録を終了して公式サイトからの登録に一本化しています。すなわちiOSアプリ経由であればアプリ内購入として手数料が取られるところを回避し、アップルの売上げに貢献しなくなった格好です。

今回、訴訟の一環として提出された機密資料や一連の社内メールでは、アップルがApp StoreのIAP(アプリ内支払い)システムを使い続けるようNetflixを説得すべく説得を続けていた点や、社内で幹部らが奔走した当時の様子がありありと窺えます。

 発端となったのが、NetflixがIAPシステムの利用に焦点を当てたA/Bテスト(2つの比較対象を用意して、どちらが効果が高いかを測定するマーケティング手法)を展開する計画をアップルが知ったことです。そこからアップル社内で交わされた(2018年2月〜4月)メールのやり取りが白日の下にさらされています。

まずApp Storeビジネスマネジメント担当ディレクターであるカーソン・オリバー氏が、Netflixのテストにより「年間のアプリ内課金登録者の1.9%に影響がある」と見積もり、これがアプリユーザーの体験を悪化させ、「店頭でのフィーチャリングを含む共同マーケティングの機会が制限されるのではないか」という懸念を表明したと記しています。

フィーチャリングとはApp Storeで特定のアプリを紹介する枠のことであり、要するにNetflixアプリの扱いを悪くすると示唆しているようにも解釈できます。

さらにオリバー氏は「自発的解約問題」にも言及。これはアップルのIAP経由で支払いをする人のうち、Netflixを解約する人の数が他のプラットフォームに比べて多かったということです。アップル社内では、この原因はNetflixのギフトカードを手に入れた人々がNetflixサイト経由に乗り換えたのではないかと推測されていた模様です。

またメールによれば、アップル幹部らもNetflixと交渉を重ねていたようです。たとえばサービス担当上級副社長エディー・キュー氏は、Netflixのリード・ヘイスティングスCEOと直接会いたいと言ったとも書かれています。こうした会合では、NetflixがアップルのTVアプリとの統合を拒んでいるとして、両社が「TVアプリの中間的な解決策」を実現する話もあったようですが、結局は実現しませんでした。

さらにNetflixがアプリ内から新規登録を削除するテストを展開し始めた後、アップルは事細かなスライドのプレゼンを作成し、削除しないよう説得した様子も伝えられています。

このプレゼン内ではApp Storeの手数料を支払う価値があることを裏付ける様々なデータが強調されており「他のどのパートナーよりもフィーチャーされている」「特集したことでダウンロード達成率が6〜7%向上」などの理由も列挙。そうした内容からは、アップルがNetflixの引き止めに懸命になっている姿が浮き彫りになっている感があります。

Netflixが新システムに移行した直後は、App Store売上げが落ち込むことを懸念する声もありました。実際はさほどの影響はなかったと思われますが、当時はアップル社内でも真剣に心配されたのかもしれません。

Source:9to5Mac