2021年4月11日、「電車で2時間半以内の距離の国内線空路を全面廃止する」という法案がフランス下院を通過しました。

France to ban some domestic flights where train available | Air France/KLM | The Guardian

https://www.theguardian.com/business/2021/apr/12/france-ban-some-domestic-flights-train-available-macron-climate-convention-mps

France bans air travel that could be done by train in under 2.5 hours | Ars Technica

https://arstechnica.com/cars/2021/04/france-bans-air-travel-that-could-be-done-by-train-in-under-2-5-hours/

新たにフランス下院を通過した法案は、世界的に喫緊の課題とされる地球温暖化対策の一環とされています。この法案は元々は「電車で4時間以内」というフランス国内線空路のほとんどを廃するものでしたが、一部の地域やヨーロッパ最大の航空会社グループ・エールフランス‐KLMの強い反対を受け、現行の「電車で2時間半以内」という距離に定まりました。

具体的に廃される国内線空路は、「パリ-ボルドー間」「パリ-リヨン間」「パリ-ナント間」「パリ-レンヌ間」「リヨン-マルセイユ間」の5区間で、電車で3時間7分かかる「パリ-マルセイユ間」や4時間6分かかる「パリ-トゥールーズ間」、そして電車で2時間半以内の距離であるものの国際線である「パリ-ロンドン間」などは対象外。また、乗り継ぎ便は例外とされたため、国際線を利用する海外旅行者などには直接的な影響はありません。



法案が下院を通過したことで、上記の5区間を結ぶ国内線空路は一時停止されている状態で、法案が上院を通過した場合には正式に廃止が決定されます。フランス政府は予想される航空業界の打撃に対して、40億ユーロ(約5200億円)を新たに投じる計画をすでに発表しており、「パンデミック後」の航空業界復活を見据えて動き始めています。

今回の法案は、オーストリアが2020年6月に制定した「電車で3時間以内の距離の国内線空路を全面廃止」という新法に続くものですが、フランス下院では右派・左派政党から出た「不釣り合いな人件費がかかる」「新型コロナウイルスのパンデミックで大打撃を航空業界でさらなる失業者が出る」という否定的意見と「『電車で4時間以内』という原案ならば、二酸化炭素排出量に歴然とした違いが出る」という肯定的意見が対立。両派が週末を費やして激論を交わして定められた現行案は、フランス国内線空路のわずか5区間にしか影響しないため、イギリス大手紙のThe Guardianに「骨抜きバージョン」と報じられています。



なお、気候変動との戦いやエコロジーへの移行に取り組むフランスの非政府団体Réseau Action Climatが作成した(PDFファイル)資料によると、今回対象となった「5区間」というのは、全国内線空路が「108区間」であるため、割合的には「5%未満」とのことです。