2022年卒の就活生2.5万人が選んだ就職人気ランキング。伊藤忠商事が2年連続で1位になった。

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2022年卒生の就活前半の投票で集計した就職人気ランキング。1位は2年連続で伊藤忠商事となった (撮影:梅谷秀司)

「危機感が半端ない」。ある就職情報会社の担当者は就活生のマインドをそう表現した。もちろん原因は、コロナウイルスの感染拡大だ。

今、大学4年生や大学院2年生になったばかりの2022年卒生の就職活動が本格化しているが、その1年先輩の2021年卒生が苦しい活動を経験したこともあり、不安が広がっている。

広がる就活生の危機感

文部科学省・厚生労働省が発表する大学生の就職内定状況によると、2021年2月1日時点の就職率は前年同期比2.8%減の89.5%。2011年卒生の77.4%と比べるとまだまだ高い水準にあるが、10年ぶりに内定率が減少している。就活生の間では、「さらに採用数が減少し、内定率が下がるのでは」と、不安が広がる。


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すでに、外食や旅行、鉄道・エアラインなどの企業を中心に採用を中止、もしくは採用数を大幅に減らすことが表明されている。今後、コロナ禍が長引き、景気への影響が鮮明になれば、さらに採用数を抑える企業が増えていくと思われる。

また、オンライン就活が常態化してきており、企業探しや面接対策など、これまでとは違う対応が求められていることも、就活生の不安を増幅させる要因になっている。

そんな中、就活生はどんな企業を注目しているのか? 文化放送キャリアパートナーズ就職情報研究所では毎年、就活生に興味を持っている企業を尋ねる「就職ブランドランキング調査」を実施し、定期的に発表している。その結果から、就活生の関心が高い企業をランキング形式でまとめた。

調査対象者は、就職サイト「ブンナビ!」に登録する現在就活中(2022年春卒業予定)の大学生や大学院生で、登録者のうち、大学名を問わず2万5000人以上が回答している。調査期間は2020年10月1日から2021年3月15日まで。「前半」とあるのは、同調査が年に2回実施されているからで、調査をあこがれやイメージが強い就活の「前半」と、実際の説明会や面接を経た「後半」とを分けることで傾向の違いを分析している。

1位は2年連続で伊藤忠商事。2021年卒では男子と文系で1位だったが、今年は女子でも1位に。理系も7位から3位にアップするなど、すべての属性の学生から支持を得ている。

理由は、「朝型勤務」や「脱スーツ・デー」といった一連の働き方改革。こうした取り組みが「働きやすい会社」「あこがれる会社」というイメージを就活生に抱かせている。

新入社員を大切にする姿勢も評価されている。前年に続き、2021年も会長と社長による入社初日の「お出迎え」が行われた。満開の桜の木を300本に増やし、さらに印象に残る入社初日を演出していた。

また、企業業績も五大総合商社の中では三菱商事と1、2位を争っている。将来性も含めて就活生が高く評価していることがランキングにも表れているようだ。

メガバンク以外の金融機関への人気高い

2位は日本生命保険。2020年卒の4位、2021年卒の3位から順調に順位をあげた。男子学生の順位が7位から2位とあがっており、男子学生の得票が順位アップにつながっていると思われる。メガバンクが将来性や採用減などから人気を下げているが、大手金融機関への就職人気は衰えていない。

3位の大和証券グループも同様の理由だろう。同社はさらに女性活躍支援などワーク・ライフ・バランスの取り組みも評価されている。テレワークに対する取り組みも早かった。

4位は明治グループ(明治・Meiji Seika ファルマ)が入った。理系学生では不動の1位を続けており、女子の人気も高い。メーカーとして食品から医薬品まで幅広い事業領域があることが人気の背景にもなっている。

5位は博報堂/博報堂DYメディアパートナーズ。2021年卒より1つ順位をあげた。

6位は損害保険ジャパン。日本生命保険、大和証券グループ、9位東京海上日動火災保険、10位SMBC日興証券などトップ10に大手金融機関が5社ランクインしている。


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7位は大日本印刷。2021年卒の8位から1ランクアップし、ベスト10の常連となっている。印刷業界の大手2強だが、印刷技術を応用した液晶や半導体部材といったエレクトロニクス分野が成長し、業績を牽引している。

8位は三菱商事。男子で3位になるなど2021年卒の31位から順位を大きくあげた。総合商社人気は、伊藤忠商事だけでなく他社にも広がっている。海外で活躍したい学生だけでなく、SDGsや社会貢献といったキーワードにも反応しているようだ。

11位以下の上位を見てみると、大手金融機関や食品メーカーが目立つ。3年前の1位企業で、2021年卒でも2位に入っていた全日本空輸(ANA)は152位までランクを下げた。もうひとつの航空大手、日本航空(JAL)も158位という順位に。コロナ禍で業績が厳しく、2021年卒に引き続いて採用を中止したことが影響した。

一方、採用数を減らす方針の鉄道各社は東日本旅客鉄道(JR東日本)が2021年卒と変わらず28位で、東海旅客鉄道(JR東海)は92位から44位に順位をあげた。採用数の削減にかかわらず、採用を維持するという方針が学生に評価されているようだ。







■調査について
調査主体:文化放送キャリアパートナーズ 就職情報研究所
調査対象:2022年春入社希望の「ブンナビ!」会員(現大学4年生、現大学院2年生)
調査方法:文化放送キャリアパートナーズ運営の就職サイト「ブンナビ」上でのWebアンケート、文化放送キャリアパートナーズ主催の就職イベント会場での紙・アプリアンケート、文化放送キャリアパートナーズ就職雑誌&デジタルブック内QRコードアンケート
*投票者1名が最大5票を有し、志望企業を1位から5位まで選択する形式

調査期間:2020年10月1日〜2021年3月15日
回答数:25125(うち男子10100・女子15025/文系20628・理系4497)
総得票数:70887票

「就職」を重視する学生は「企業イメージ(企業価値)」よりも「仕事イメージ(仕事価値)」に重点を置くとの仮説の下で、ランキングを算出。
就職者誘引度は、学生が企業イメージと仕事イメージのどちらを企業選択時に重視したかという回答によって算出。企業イメージのみで投票した場合は就職者誘引度5、仕事イメージのみで投票した場合は95とし、得票平均値を就職者誘引度としている。
総得票数×就職者誘引度=就職ブランド力とし、就職ブランド力を基にランキングを計算。
社名はアンケート上の名称で、1採用窓口=1社名を基準にしている。社名変更等で調査時の社名と異なる場合がある。グループで採用が一本化されている場合は「○○グループ」等で表記。