楽天・銀次、則本昂大、島内宏明(左から)【写真:荒川祐史】

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歓喜の日本一から7シーズン、ついに大エースが杜の都に帰ってくる

 2013年以来8年ぶりの日本球界復帰となった田中将大投手。2013年といえば、田中将が24勝0敗という圧倒的な成績を残しチームを史上初の日本一へと導いた、ファンや関係者にとって非常に思い出深い1年である。当時から現在まで楽天で現役としてプレーを続けている選手の数は11人となっている。今回は、今季から田中将と再びチームメートになる、かつての優勝メンバーたちの現在に至るまでの歩みを紹介していきたい。

○則本昂大投手
 プロ初年度の2013年にいきなり開幕投手を務めて15勝を記録し、文句なしの新人王にも輝いた則本昂。田中将の退団に伴って2年目からは早くもエースの座を受け継いだが、2014年から4シーズン連続で200奪三振を超え、2018年まで5年連続で最多奪三振を獲得と、エースの称号に相応しいパフォーマンスを発揮。過去2年は故障もあって5勝止まりだったが、師と仰ぐ田中将の加入が復活のきっかけとなるだろうか。

○福山博之投手
 福山は2011年に入団した横浜では真価を発揮できなかったが、自由契約を経て移籍した楽天で才能が開花。2014年からは4年連続で65試合以上に登板し、いずれも防御率は2点台以下。2017年にはレギュラーシーズンでの黒星が一つもなく、防御率もあとわずかで0点台だった。2019年オフには故障の影響で育成登録に移行したが、2020年途中に再び支配下へ。1軍復帰後は防御率0点台と安定感も取り戻しており、完全復活の日は近いか。

○辛島航投手
 辛島は高卒2年目の2012年に8勝を挙げて防御率も2点台と、若くして先発として存在感を発揮。続く2013年にもクライマックスシリーズと日本シリーズでもそれぞれ先発し、球団史上初の日本一にも貢献した。2014年には自身初の規定投球回に到達したが、それ以降は故障もあり、規定投球回をクリアしたのはその1度のみとなっている。2020年の開幕前にも共に自主トレを行っていた田中将の古巣復帰が、飛躍への触媒となるかに注目だ。

銀次、藤田、岡島らベテラン勢の活躍にも期待

○塩見貴洋投手
 2011年のドラフト1位で入団した塩見は、入団1年目から規定投球回に到達して9勝を挙げ、即戦力としての期待に応えた。翌2012年はやや成績を落とし、2013年も先発陣の一角としての活躍が期待されていたが、故障の影響でシーズンを通して1軍で登板できず。その後は故障や浮き沈みこそありながら、貴重な先発左腕として登板を続けた。2013年に無念の離脱を強いられただけに、今季こそチームのタイトルに貢献できるか。

○銀次内野手
 銀次は2005年に楽天に入団し、7年目の2012年に主力に定着。レギュラー2年目の2013年にはリーグ4位の打率.317を記録し、3番打者としてチームの日本一にも大きく貢献した。続く2014年には糸井嘉男選手と最終盤まで首位打者争いを繰り広げ、打率リーグ2位となる好成績を残した。2017年には一塁手としてベストナインとゴールデングラブ賞を同時受賞し、2019年にはリーグ4位の打率.304と、チーム屈指の巧打者として活躍している。

○藤田一也内野手
 2005年に近畿大学から横浜に入団した藤田は、高い守備力とシュアな打撃を生かして内野のバイプレーヤーとして活躍。楽天移籍後は二塁の定位置を獲得し、移籍2年目の2013年は「2番・二塁」として日本一に大きく貢献。その後もレギュラーとして長く活躍し、ゴールデングラブ賞を3度、ベストナインを2度受賞と、リーグを代表する二塁手の一人として躍動した。近年は徐々に出場機会を減らしているが、巻き返しはなるだろうか。

○島内宏明外野手
 島内は2011年のドラフト6位と下位指名での入団ながら、2年目の2013年に9番打者として上位へのつなぎ役を担って活躍。シーズン終盤に故障離脱を強いられたが、同年のリーグ優勝にも貢献した。その後の2年間は打撃不振に苦しんだが、2016年以降は主力の座に定着。直近3年間は出塁率.360を上回っている選球眼に加え、2019年には史上11人目となる全打順本塁打も達成。マルチな能力を武器に、楽天の中心選手として活躍を続けている。

○岡島豪郎外野手
 2011年に捕手として楽天に入団した岡島だったが、2013年に打撃を生かすため外野に転向したことが飛躍のきっかけに。同年途中から外野のレギュラーに定着し、1番打者としてチームの日本一に大きく貢献した。翌年は自身初の規定打席に到達し、打率.283、出塁率.353と、チャンスメーカーとして活躍を見せた。その後も主力として出場を続けたが、2018年以降は故障の影響もあり低迷。かつての盟友の復帰を機に、その打棒は蘇るか。

昨季出場機会を伸ばした下妻は、田中将とのバッテリー形成の可能性も

 ここからは、2013年当時は高卒2年目以内と若手だった3選手について紹介していきたい。

 釜田佳直投手は2012年に高卒新人ながら7勝を挙げ、2013年にはさらなる飛躍が期待されたが、8試合の登板で防御率12.51と打ち込まれた。翌年にはトミー・ジョン手術を受け、2018年に自身2度目の手術を経験。相次ぐ故障に苦しめられているが、プロ10年目の2021年こそは完全復活となるだろうか。

 2012年のドラフト1位で入団した森雄大投手も、相次ぐ故障によって持ち味を発揮しきれていない投手の一人だ。2019年には血行障害解消のための手術を受け、2020年3月にはトミー・ジョン手術も経験。現在は支配下を外れて育成契約へと移行しているが、相次ぐ逆境を乗り越え、大輪の花を咲かせてほしいところだ。

 森と同じく2012年にプロ入りした下妻貴寛捕手も、2019年までは満足な出番を得られなかった。だが、捕手陣の故障者が相次いだ2020年の後半戦に出場機会を得ると、守備面で奮闘して1軍定着への足がかりを作った。さらなる飛躍が期待される2021年は、入団時のエースであり、かつて仰ぎ見る存在だった田中将とのバッテリー形成にも期待がかかる。

かつての絶対的エースの帰還は、優勝メンバーとの“相乗効果”を生み出すか

 ほか、2013年に田中将とバッテリーを組んだ嶋基宏捕手はヤクルトに移籍して現役を続けており、同年の日本シリーズMVPに輝いた美馬学投手はロッテの主戦投手として活躍している。また、菊池保則投手と三好匠内野手はそれぞれ移籍先の広島で貴重な戦力となっており、現在はチームを離れた日本一メンバーたちも各地で持ち味を発揮している。

 かつての絶対的エースが帰還した2021年は、楽天にとって2013年以来8年ぶりとなるリーグ優勝・日本一への期待も高まるシーズンとなっている。田中将と共に味わった日本一の歓喜を知る面々が、再びチームを頂点へと押し上げることができるか。2021年は田中将自身の活躍のみならず、日本を代表する好投手の復帰による“相乗効果”にも期待したいところだ。(「パ・リーグ インサイト」望月遼太)

(記事提供:パ・リーグ インサイト)