ドアの開閉に高級感が!? 数値やスペックでは表せない新型ノートの完成度|木下隆之の初耳・地獄耳|

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「新型ノート、素晴らしい完成度でしたね」

編集担当のKが興奮を隠しきれない。2020年末に販売が開始された新型ノートの、事前試乗会でのことだ。

確かに新型ノートの完成度は驚くほど高い。基本的な性能はe-POWERに依存しており、あっと驚くような革新的技術が発表されたわけではないのに、丁寧に作り込みが細部まで浸透しており、僕を虜にした。軽量化だとかパワーアップだとか、ユーザーを幻惑させる数値も控えめだ。むしろ、ドアの開閉音だとか、確実に閉まる「あの感覚」を大切にしていた。新型ノートはハネると思う。

「プレゼンテーション資料が興味深かったですね」
「あれか? 『高品質感活動』ってやつね」

試乗会に先立って配られた資料はなかなかの厚みであり、新型ノートの開発テーマや技術的な説明が丁寧な文章と表で記されていた。その中で僕の目を引いたのが、『高品質感活動』と言う項目だった。つまり、クルマに触れたときの触感や音といった官能的評価と作り込みである。

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例えば新型ノートでこだわった高品質感活動のひとつにこんなのがあった。

「高品質に感じるドア閉じ音の開発」である。つまり、ドアを閉めたときの安っぽさや違和感を減らしましょうねってことなわけだ。これがいかにもエリート会社らしく、ちょっと硬めの文言で綴られていた。

「お客様が最初にコンタクトするドアを、品質感を体験する重要ポイントに設定し、『官能評価項目』と『代表物理特性』を定義することで、高品質なドア閉じ音を実現」とある。

これを僕レベルに意訳するとこうなる。

「運転するとき最初にドア開けるっしょ、そこでぉっ、いいねってならないとズッコケるわけっすよ。だから、どんなん感じ? じゃあどうする?ってことで、すげ~じゃん!なドアにしたいわけよ」である。

ということで日産が導いた官能評価項目では、「重厚な」「収まりの良い」「ガチャつかない」「適度な大きさ」という要素で高品質と感じることが判明、それをベースに代表物理特性として、「低周波成分の比率」「収束時間」「高周波成分量」「ラウドネスレベル」として開発を進めたというのだ。

さらに資料は難解なゾーンに足を踏み出す。

ドアが閉まる過程においての話だと思うけれど…。

アウタ中心が125Hz、ラッチかみ合い部が500Hz、サイドシル近辺が1000Hz、ラッチかみ合い部が2000Hzだと分析。ラッチとストライカの第一打撃音を低減した。言いたいことはよくわかるけれど、それを資料に落とし込まねばならぬのだから開発とはタイヘンである。

僕も一度は自動車メーカーへの就職を考えたことがある。見事に不採用だったが、それも道理ですな。よしんば入社していても、数カ月でクビになっていただろう。

要するに、新型ノートはこんな詳細な部分に目を注ぎ、妥協なき開発を積み重ねたことによって高い質感を得たのである。

当たり前と言っちゃへば当たり前なんだけれど、クルマの開発ってタイヘンですね。

〈文=木下隆之〉