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積水化学住宅カンパニーの調査研究機関である住環境研究所が、ニューノーマル時代の住まい方について調査を実施した。その結果、20代が他の年代と比べて違いがあることが分かった。20代の住まい方の意識に焦点を当てて見ていこう。【今週の住活トピック】
「ニューノーマルの時代の住まい方に対する意識調査」を公表/住環境研究所

コロナ禍で変わった暮らし、20代は新しい暮らし方に関心大

住環境研究所では、20〜59歳の既婚男女に調査している。20代といっても、単身者ではなく既婚者であることが前提だ。また、暮らし方については次のような定義をしたうえで調査をしている。

まず、新しい暮らし方いついて、「してみたい(続けたい)かどうか」聞いたところ、20代はいずれにも最も高い関心を示したという。特に他の年代と比べて関心が高かったのは、表中1の「技術的最先端の暮らし」と表中2の「職住一致」だった。

一方、従来からある暮らし方についても、最も高い関心を示したのは20代だという。特に他の年代と比べて関心が高かったのは、表中3の「エコな暮らし」と表中4の「二世帯居住」だった。

当該項目を“してみたい(続けたい)”と答えた回答者の率(%)(出典:住環境研究所「ニューノーマルの時代の住まい方に対する意識調査」)

全体的に見ると、若い年代ほどいろいろな暮らし方への関心が高くなる傾向があり、特に20代では多様な暮らし方を受け入れやすいといってよさそうだ。

20代は田舎、郊外、都会と多様な場所での暮らしに関心大

次に、暮らしたい場所について聞いたところ、ここでも20代の多様性が目立った。表中5の「郊外暮らし」はどの年代でも高い結果が出たが、特に20代が高く、「田舎暮らし」や「都会暮らし」でも20代が最も高い結果となった。

当該項目を“してみたい(続けたい)”と答えた回答者の率(%)(出典:住環境研究所「ニューノーマルの時代の住まい方に対する意識調査」)

同研究所では、20代が自然環境のよい「田舎」や利便性のよい「都会」にも高い関心を示しながらも、その中間に位置する「郊外」に最も関心が高くなっているのは、「様々な暮らし方に関心を抱く一方で、理想と現実のバランスを重視する側面も見ることができる」と分析している。

また、「総じて20 代が様々な暮らし方・暮らしたい場所に対し関心を持てるということは、住まい方の多様性を許容する『柔軟性』を有しているためだと考えられる」とも見ている。

ゆとり世代・Z世代の20代は、ワークバランスやプライベートを考える?

今の20代と言えば、1992年〜2001年生まれ。日本では、ゆとり教育を受けた「ゆとり世代」と呼ばれる。ゆとり世代は、年功序列や終身雇用といった仕組みが崩壊しているのを目の当たりにした世代なので、就職すれば安泰といった意識が薄く、仕事よりプライベートを重視すると言われている。

また、1990年代後半から2000年生まれはZ世代と呼ばれている。1960年代から1970年代後半生まれのX世代、1980年代前半から1990年代前半生まれのY世代(ミレニアル世代とも呼ばれる)に続く世代である。

Z世代の特徴は、デジタルネイティブで、ネットワークで常につながっている世代であること。一方で、定年退職年齢が引き上げられ、長期間働き続けることが想定されているので、ワークライフバランスを考える世代でもあるという。

こうした特徴を持つ20代は、テレワークへの対応がスムーズで、働く場所をオフィスに限らない生活がイメージしやすく、新しい暮らし方に順応しやすいと考えられる。プライベートの時間も重視するので、オフィスへの通勤に便利な都会だけでなく、田舎やほどよい距離感の郊外といった立地も魅力的に見えるのだろう。さらに、贅沢をしない20代は、経済合理性から二世帯居住への関心も高く、エコな暮らしやミニマムな暮らしへの志向性も高い。

また、ネットワークで直接の知り合いだけでなく、広い世界の人ともつながれるので、多様な価値観を受け入れやすいという特性もある。若いからいろいろなことを受け入れやすいという側面もあろうが、20代の年代的な特性も影響をしていると見てよいだろう。

こうした20代が子育てステージに移行するにつれて、マイホームを取得する中心層になっている。新しい価値観や多様性を持つ世代だけに、それぞれに自分らしさを重視した暮らし方の基準を持ち、これまでとは異なる住まい選びをすることが期待される。

今20代の人たちがこれからどんなマイホーム選びをするのか、興味深く見守りたい。


(山本 久美子)