松井俊英【写真:koumei】

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ATPカップ出場、“現役最年長ランカー”松井俊英の現地発コラム第2回

 男子テニスの国別対抗戦「ATPカップ2021」が2月1日にオーストラリアで開幕を迎える。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う、厳戒態勢で行われる団体戦に日本代表として参戦する42歳で“テニス界現役最年長ランカー”の松井俊英が大会中に「THE ANSWER」で現地発のコラムをスタート。

 第2回の今回は、新規感染者が1日19件という厳格な感染防止体制を敷いているオーストラリアの選手宿舎で体験した感染防止の徹底ぶりを語ってくれた。

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 メルボルン市内の3つのホテルに選手と関係者の宿泊先は振り分けられています。僕はメルボルンナショナルセンターへのアクセスのいい宿舎でずっと缶詰状態でした。

 オーストラリア入国2週間はホテルで隔離されます。選手は1日5時間だけ外出が許され、この時間がトレーニングと練習に充てられます。それ以外の時間の宿舎での隔離は徹底的です。

 ホテルの自室から出てはいけません。そして、部屋には自分以外は誰も入れません。掃除係の人も入らないので、掃除も自分でやります。部屋にはコーヒーメーカーや皿だけではなく、食器用の洗剤も設置されています。部屋のゴミも自分でまとめますが、ゴミ袋と洗濯物入れは「二重」で、と義務付けられています。そして、洗濯物とゴミ袋はホテルの廊下に出して、回収してもらうことになります。

 基本的にホテルでは誰かに会う機会はありません。ホテルのフロアには全室を見渡せる場所にガードマンがいます。廊下に出ようものなら、激しく怒られます。「ゲット・バック・イン・ユア・ルーム!(部屋に戻れ)」と昨日、同じフロアでガードマンに怒鳴られている人がいました。大会関係者の迎えが来なければ、一歩も部屋の外には出られません。本当に徹底してます。

窓を開けるのも許可が必要「これぞ隔離と言うべきでしょうか」

 部屋の窓を開けるのも許可が必要です。ホテルに聞いたら少しだけならいいと言われました。こんな経験は人生でしたことがありません。これぞ隔離と言うべきでしょうか。オーストラリアの1日の新規感染者は19人、これまでの感染者合計数は3万人以下という抑え込みの理由を実感しました。

 今日は午前中に部屋のベルが鳴りました。新型コロナウイルスの検査です。ドクターが2人体制で、ロリポップキャンディー状の検査キットで口と唾液の検査を済ませましたが、ドクターは決して部屋に足を踏み入れません。扉と廊下の境部分に椅子を置いて、そこで手早く検査を進めます。半日か1日後に携帯電話に検査結果が届く流れです。

 これからオーストラリアに来て、初練習予定です。午後4時スタートと大会側から通知されていますが、午前の練習組はキャンセルになってしまいました。先日の関係者の感染者発覚の影響で、大会側のバタバタも続いているようです。異例の状況が続きますが、開幕に向けて、しっかりと準備していきたいと思います。

■松井俊英(まつい・としひで)

 1978年4月19日、千葉県柏市生まれ。42歳。ATPダブルスランキング世界207位。シングルスランキング802位。私立八千代松蔭中学卒業後、カナダ・トロントのノースビュー・ハイツ・セカンダリースクールで単身語学留学を経て、ブリガム・ヤング大ハワイ校卒業。2000年にプロ転向後、06年、10年にデビス杯日本代表に選出。世界46か国以上を転戦し、19年には41歳で現役選手として世界最年長のATPランカーとなった。2年連続でATPカップ日本代表にも選出されるなど実力は健在。オンラインサロンも展開中。(THE ANSWER編集部)