金田氏が期待する鎌田と久保【写真:Getty Images & ©JFA】

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欧州遠征3試合で無失点も…流れのなかからゴール奪えず 「攻撃の起点が一つ下がった」

 日本代表は現地時間17日(日本時間18日5時キックオフ)に、オーストリアのグラーツでメキシコ代表と対戦する。

 10月のオランダ遠征から4試合目となるFIFAランキング11位の強豪との試合は、森保一監督が率いる日本代表にとって“世界”を見据えたうえでの試金石となる一戦だ。

 世界中で猛威を振るう新型コロナウイルスの影響により、2020年の代表スケジュールは大幅な変更を余儀なくされた。10月に今年初のA代表活動として実施されたオランダ遠征では、入国制限の問題などもあってJリーグで戦う国内組は招集せず、史上初の“オール欧州組”でチームを編成。カメルーン(0-0)、コートジボワール(1-0)とアフリカ強豪との2連戦を無失点で切り抜けた。

 そして再び欧州組のみの編成で臨んだ今回のオーストリア遠征では、13日のパナマ戦に1-0で勝利。これで2020年の国際Aマッチは3試合連続の無失点、2勝1分の無敗と“結果”は手にしている。

 だが、手応えを得ている守備面とは対照的に、攻撃面に目を向けると課題は山積。3試合でわずか2ゴール、それもコートジボワール戦はFKからDF植田直通(セルクル・ブルージュ)のヘディングシュート、パナマ戦はMF南野拓実(リバプール)のPK弾と流れのなかからゴールを奪えていない。

 かつて“名ドリブラー”としてその名を轟かせ、日本代表で19歳119日の最年少得点記録を持つ金田喜稔氏は、現在の“オール欧州組”で構成されたアタッカー陣には「魅力的なタレントが揃っている」としたうえで、「やはり使われる選手、受け手が多い」と指摘。森保監督の就任後、攻撃の中心となっていたMF中島翔哉(ポルト)の不在の影響が大きいという。

「森保監督が就任してからの日本は、いつも中島が攻守を切り替えるスイッチャーになっていた。彼はドリブルを仕掛けて突破でき、キープもできてゲームも作れる。奪われない、パスが出てくるという信頼があるからこそ、中島にボールが入った瞬間にチーム全体が動き出す。その役割を担っていた選手がいないなかで、どこから攻撃が始まるのかといったら、今のチームはポジションを一つ下げたボランチからしか始められない」

 実際に先日のパナマ戦では、停滞した前半の状況を受けて後半開始からMF遠藤航(シュツットガルト)を投入。球際での強さを発揮した守備面での貢献だけでなく、的確なポジショニングでボールを受け、何度も前線に鋭い縦パスを供給し攻撃にリズムを生んだ。金田氏も試合の流れを一変させた遠藤のプレーを、「圧倒的なパフォーマンスだった」と絶賛した一方、チーム全体で見た時は中島がいる時のような高い位置でのボールの収まりどころがなく、「攻撃の起点が一つ下がった」印象を受けたという。

「“さすが久保”というプレーは見せた」ものの、中島ほどの信頼は得られていない

 そうしたなか、メキシコ戦に向けて金田氏が期待する1人がMF鎌田大地(フランクフルト)だ。

 パナマ戦では後半27分から途中出場。2シャドーの一角に入ってボールの“出し手”になると、「ノーミスで、ボールを取られない。周囲の状況を瞬時に判断してスルーパスを出し、タイミングにズレがない。パスの精度、ボールキープ、左足、すべてのプレーが“スーパー”だった」と金田氏も唸るパフォーマンスを見せた。同32分に相手GKが退場となり、数的優位になった点を考慮する必要はあるものの、ドイツで飛躍を遂げる鎌田は中島とはひと味違う“トップ下タイプ”として、2列目のスイッチ役になる可能性は高い。

 そしてもう1人、金田氏が中島の役割を担える人材として期待するのがMF久保建英(ビジャレアル)だ。先発したパナマ戦でも局面で光るプレーを見せており、南野のPK奪取につながるラストパスも供給した。だが1試合を通して見た時、中島のように「チームから信頼を得てボールが集まり、久保に入りそうになった時に周囲の動き出しが始まるようには、まだなっていない」という。

「瞬間瞬間に“さすが久保”というプレーは見せてくれた。だが、ビジャレアルで思うように試合に出場できていない影響か、頭と体の微妙なズレを感じてしまう。個人的にはやはり、左ではなく右サイドに置きたい選手。左足でボールを持ち、カットインもできればパスも出せて、縦にも行ける。アタッキングサードで、もっと天才な部分を発揮してほしい」

 中島のように、サイドでのスイッチ役になり得ると指摘した金田氏。鎌田や久保が2列目で存在感を放ち、“攻撃の重心を上げる”ことができれば、ボランチやサイドバックとも連動してより厚みのある攻撃が展開できるはず。強豪メキシコを相手に、“オール欧州組”で構成された日本代表の真価が問われる。

[PROFILE]
金田喜稔(かねだ・のぶとし)

1958年生まれ、広島県出身。現役時代は天才ドリブラーとして知られ、中央大学在籍時の77年6月の韓国戦で日本代表にデビューし初ゴールも記録。「19歳119日」で決めたこのゴールは、今も国際Aマッチでの歴代最年少得点として破られていない。日産自動車(現・横浜FM)の黄金期を支え、91年に現役を引退。Jリーグ開幕以降は解説者として活躍。玄人好みの技術論に定評がある。(Football ZONE web編集部・谷沢直也 / Naoya Tanizawa)