明神氏はパナマ戦で一番印象に残った点に、遠藤の活躍を挙げた。写真:龍フェルケル

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 パナマ戦で一番印象に残ったのは、個人になりますが、遠藤航選手の素晴らしさ、質の高さという部分でした。

 メンバーも新しい選手がそれなりに多く、3バックを採用したことでの各ポジションの立ち位置といいますか、連係が攻守において難しかったのかなと思います。

 前半は、スムーズにディフェンスラインからボールを繋いでいくというのが難しくて、長いボールが多かったり、ミスも多かったですし、上手くいかない部分が目立ちました。

 もちろん相手のプレッシャーが少し弱まったというのはあると思うのですが、ハーフタイムに遠藤選手が投入されると、ディフェンスラインから必ずボールをもらえる位置に顔を出すというポジション取りが光っていました。

 特にボールを受けない時も、動かなかったとしても、中央の部分にポジションをとることで、ディフェンスラインと前の選手のラインを繋ぐ、左右を繋ぐ、そんなちょうど中間のポジションに立つことが多くありました。さらに本当にシンプルなプレーですけど、受けてから次にパスを出すまでの無駄の無さが攻撃にもスムーズさを生んでいました。
 
 よく札幌のペトロヴィッチ監督とかもやっていましたけど、3バックでワイドが高い位置をとり、後ろ3枚、前5枚くらいの感じになると、それぞれのラインで分断されることがあります。その間を繋ぐところのポジション取りというのが遠藤選手は非常に良かったなと思います。

 その恩恵もあってか、前回のカメルーン戦と比べてワイドに張るというよりも中でプレーしていた2シャドーの久保建英選手、三好康児選手という若い2人が、特長も出しやすかったと思いますし、そこにできるだけ早くパスをつける、預けるということが上手くいっていた部分もありました。

 さらにパナマ戦終盤では、相手の背後にスペースが出来たときに、浅野拓磨選手のスピードであったり、鎌田大地選手のパスであったり途中から入る選手たちの活躍の場もありました。

 そのほかにもベンチに交代カードとして、特長のある選手たちがいるので、相手によって、その時のコンディションも含めて、いろいろと作戦が、アイディアが出せるようになってきていると思います。
 
 守備に関しては遠藤選手の特長である、セカンドボールの回収や、自分のポジションから相手に対して、どういうコースを切りながらボールを奪いに行くかという特長が発揮されて、プレー精度も凄く高かった。

 3バックでも吉田麻也選手を中心に、周りを上手く動かしながら、若い板倉滉選手、植田直通選手とよく守れていたのですが、パナマ戦に関して言えば、システムの部分もあるのですが、どうしても相手のSBが攻めてきたときには、日本のウイングバックが対応しなければいけない。そうするとどうしても後ろが5バック気味になる。

 すると前の人数が足りない状況になるので、ボールを持たれる時間が増えたり、相手のFWが下がっていったときに、3バックが余ってしまうという現象が前半は少し見られました。それによって、ミドルシュートを許してしまい、何本か危ないシーンを作られてしまいました。

 ただ、守備ブロックを崩されているわけではなく、得点を与えないというところに関しては、非常に良いものが出来ていたと思います。
 
 次の対戦相手・メキシコは組織力としても、個人技としても、一瞬のスピードが特長的なワールドカップ常連強国。そのチームに対して築き上げてきた守備、失点をしないというところがまずどれだけできるか。

 その分、攻撃的にくるチームでもあるので、日本のシュートチャンスもあると思います。流れの中から決定機をパナマ戦では作っていたので、レベルの上がる相手に対して、同じようにチャンスを作れるか、そしてそれを決め切れるかというのが今後の課題だと感じます。

 なかなか代表戦が組みにくいスケジュールや状況のなかで、メキシコという素晴らしい相手と戦える、これが日本代表だという試合を観てみたいなと思います。メキシコ戦の次はまた期間も空きますので、今後に向けてポジティブな印象を感じさせて欲しいですね。

【著者プロフィール】
明神智和(みょうじん・ともかず)/1978年1月24日、兵庫県出身。シドニー五輪や日韓W杯でも活躍したMF。黄金の中盤を形成したG大阪では2014年の国内3冠をはじめ数々のタイトル獲得に貢献。現在はガンバ大阪ジュニアユースコーチとして活躍中。